三月ひなのつき
母がひな祭りに毎年出してきて読むと言っていた本。
三月ひなのつき
何十年ぶりに私も読みました。
はじめに、主人公よしこがカバンをガタガタならし、急いで帰ってくるシーンの挿絵とともに、一瞬にして昭和の光にすいこまれ、遠い記憶にある子供の頃の家や街の風景がよみがえります。
お母さんの持っていたお雛様
それを箱から出して飾るまでの細かい描写、そしてその背景に見える戦争や失った父親
夫を失い、裁縫の仕事をしてよしこを育てる母は、きっと経済的にも余裕はなかったと思うのに、娘にお雛様を買ってあげようとデパートに行きます。
私が子供の頃のデパートの思い出
母につきあって歩かされて、ご機嫌が悪くなった頃最上階の食堂に連れていってくれてお子様ランチを食べたこと
それを思い出す食堂のシーン ホットケーキとみつまめとアイスクリーム。
戦後、デパートができるくらいまで復興した日本でも、人々の心には戦争の傷跡もあったし、贅沢には抵抗もあったけれど、お雛様を買ってあげようとする母の気持ちが切なくあたたかい。
そしてよしこのところに届いたお雛様は、、
この本をはじめて読んだのは何歳の時だったのか?当時はきっと物語と同じ時間の中で読んでいたから、なんのギャップもなかったけれど、
それが、半世紀過ぎて読みなおし、あの時代だからこそ持っていた人の心の優しさが伝わってきました。
私もまた読もうと思います