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初夏を告げる文鳥羊羹
地下鉄の入り口に、ツバメがかえる季節がやってきた。
近くの田んぼは無事に田植えが終わったようだし、ヤマブキもあざやかに咲きほこっている。
ここは緑豊かだから、野生動物の子育てには安心安全の町なのだろう。
駅側の配慮で巣の下には台座が設置されているから、いろいろ落ちてこなくてヒトも安心。
数週間前はかすかな鳴き声しか聞こえなかったのに、気付けば巣からあふれんばかりのムクムクたちが、親鳥の帰りを待っている。
こんな感じで。
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以前、あまりのかわいさにパケ買いした金沢の文鳥羊羹に、夏限定の新種があらわれた。
なぜ金沢で文鳥?文鳥のメッカは愛知県の弥富らしいじゃない?とうっすら思い続けているものの、かわいさを前にして、事実など野暮。
前は単品しかなかったが、季節限定品だからか、詰め合わせで置いてあった。
楕円ではなく、たまご型のパッケージが愛らしい。おもわず大事に手に取りたくなってしまうフォルム。
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あざやかなヤマブキ色の帯をはずすと、天面にちいさな文鳥のシルエットがあらわれた。
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芸が細かい。
こういう、隠しコマンドや、気付くひとは気付くみたいな無言のこだわりが大好物である。
わたしみたいな人間のためにありがとう。
栞のイラストも愛らしい。
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文鳥があずきを背負ってぴょんぴょんしているし、QRコードはかじり散らかされている。
ちなみに、このQRコードはちゃんと読める。
隅の四角は3つで読める、というQRコードの特性を活かしたデザインが、にくい。
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シルバー文鳥がおなかに隠しているのは、夏の加賀紅茶味の羊羹。
《羊羹 × 加賀紅茶 × 夏果実のドライフルーツ》の組み合わせだ。
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この文鳥羊羹シリーズは、桜文鳥、シナモン文鳥、白文鳥の3種類を通年で販売している。
どれも、ドライフルーツやナッツを、加賀紅茶や加賀棒茶、コーヒーと組み合わせた、ひとくちサイズの変わり種羊羹。
手のひらにすっぽりおさまるほどのサイズだが、羊羹なのでほどよい重み。
1個50グラムだというから、リアル文鳥2羽分だ。
シルバー文鳥は、ドライフルーツの瀬戸内レモン・キウイ・パイナップル・桃を、加賀紅茶と組み合わせた、実にさわやかな仕立て。
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帯と同じヤマブキ色と、新緑を思わせる若緑色。まさしく夏の色。
細かく切れば切るほど、琥珀糖のようなドライフルーツがあふれ出してくる。
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あずき&和紅茶のじんわり広がる甘み→レモンのさわやかな酸味→ドライフルーツのシャキシャキ感と甘酸っぱさゴロゴロゴロォ!という感じだ。
キウイが入っているので、あのキュウゥゥーとしぼるような酸味もくるかと思いきや、あずきの濃厚な甘みと、和紅茶の甘みが最初に地盤をかためてくれるため、酸味の傾斜はゆるやか。
どれがパイナップルでどれが桃なのかは分からなかったが、手のひらサイズの夏が転がり込んできた。
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ツバメは吉兆の象徴だというが、文鳥には、とりたててそういうのはないらしい。
ただ、10月24日は文鳥の日と制定されている。
その心は、10(て)2(に)4(し)あわせ=手に幸せ、他、だとか。
なるほど、文鳥が身近にいる生活なので理解できる。
25グラムは、その存在がほんのり感じられる重み。体温が高いので、腕にどっかり座られると心地よいあたたかさ。
ささくれとほくろへの異常な執着心と凶暴性はさておき。
江戸時代から愛玩鳥としてひとびとに愛でられ、日本画にも今と変わらぬ姿で登場していることも、それを裏付けていると思う。
文鳥羊羹は、手だけでなく、口も幸せである。
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