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めぐりめぐって神戸牛
半年を経て、ふたたび姫路へ向かった冬の終わり。
夏の終わりに開催されるはずだった、スピッツ《JAMBOREE TOUR'23-'24 ”HIMITSU STUDIO”》姫路公演。
ボーカル草野さんが流行り病につかまり、その後の3公演も延期に。
姫路公演は、めぐりめぐって、なんとこのホール・アリーナツアー自体の大千秋楽となった。
自分の繁忙期中なら潔くあきらめようと思っていたが、かろうじてそれた。
しかも、会場入りしてから分かる座席はメンバーのまぶたの動きすら肉眼で見える距離。
ときめいてる、はじめて、怖いくらい。
もう姫路の思い出はこれでじゅうぶん、すてきなライブ体験をありがとう。
世界文化遺産登録30周年の姫路城は、夏に来たときは見るだけにとどめたけれど(暑いから)、今回も見るだけでいい(疲れてるから)と思っていた。
しかし、MCで
「きのう姫路城にはじめて登って、結構階段が急でね、高齢者になる前に登れてよかった」
「姫路城ってラスボスって感じがするよね」
「俺の中ではスコットランドのエディンバラ城に匹敵する」
という発言があり、これは登らなければいけない、と決心した。
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城内の階段は、草野さんが仰るとおり、かなりの急勾配。
城内は土足厳禁だが、靴下では底冷えするし、貸し出されたスリッパは階段を登り下りするたびに足からすべり落ちそうで怖い。
ああいう階段は、地下足袋が一番よさそう。
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天守閣から見えるひとびとは米粒のようで、昨夜ライブで見たスピッツの方がはるかに大きかった。
朝日が笑う、膝も笑う。
スカイツリーやランドマークタワーから見下ろした景色より、醍醐味と趣がある。
あちらは、高すぎるがゆえに街がジオラマのようで、息づかいが感じられないからかもしれない。
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まだ昼には早い時間だったので、新快速で三宮へ移動。
繁忙期は越えたが、平日午後をまるまる休んだために、ゆっくりはしていられない。
限られた時間と胃袋の中で何を食べるか考えながら、「かつて神戸に4年も住んでいたのに、神戸牛を食べなかった」ことを思い出す。
もう、昼ご飯に神戸牛を食べたっていい。
若いときは金額的な制限があったし、年齢を重ねたら今度は胃袋の容量制限が出てきそうなので、両方のバランスがとれている今のうちだ。
いつの間にか、こんな店もできていたし。
毎朝精米するというこだわりのお米と、赤ふじを模した和牛100%のハンバーグや牛タンステーキを、自分専用の鉄板で焼いて食べられるという。
11時過ぎ、2号店のミント神戸店の前にはすでに15組ほどの行列。
これなら昼にはちょうどいい時間と思いきや、店員さんから「13時~13時半のご案内になります」と告げられる。
2時間待ち、つまり昨日のライブ時間とほぼ同じ。
一瞬、違う店にしようかと思ったものの、店先のサーキュレーターを通じてフロアに流れてくる焼けた肉の香りが、引き留めて離さない。
こじんまりとした店内は、中央の調理スペースをはさむようにカウンター席が向かい合う。
数人の店員さんが客ひとりひとりに付いて調理をしており、見るからに回転率は低そう。
これは並んでも仕方がない。食べたいなら並ぶしかない。ちなみに予約はできない。
本当に13時過ぎに店内へ案内され、神戸牛100%のハンバーグセットを注文。
店内は、たまらなく食欲をそそる肉の香りで満たされている。
ひとりひとり仕切られた自習室のようなカウンター席に座ると、広瀬すずさんのような若い店員さんがわたしの前にあらわれた。
マスクで目元しか見えないが、美しい猫目のビーム。
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赤富士のような肉ダネの上にきらめく、白い雪のようなものは、牛脂。
広瀬すず(似)が、ひととおりの説明をし、手際よく野菜を鉄板に広げて味付けし、ハンバーグの表面をさっと焼き、食べやすいサイズに切り分けてくれる。
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手慣れた手つきと対照的に、伝えたいことは全部伝えるぞ!という気概を感じる、一生懸命で丁寧な説明。
写真撮影ポイントも教えてくれるし、撮影中は映りこまないように避けてくれる配慮も。
ここから先は、セルフサービスだ。
すず(似)が焼いてくれた野菜からいただく。
味が薄いと感じる場合はお塩で味の調整をしてください、と言われたものの、野菜自体が甘いのでバクバクいける。
そして、切り分けられたハンバーグをみずからの手で鉄板に乗せる。
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つなぎなしのハンバーグは、ギリギリ箸でつかめるくらいのやわらかさと、ねっとり感。
肉を焼く用の箸と、食べる用の箸がちゃんと分かれているのも安心だ。
ジュワワワーと音を立てながら、油がパチパチと跳ねて広がり、肉が褐色に色づいていく。
昨日のホールくらい、耳に心地よい音。
昨日のホールくらい、うるわしい光景。
すず(似)のおすすめに従い、少し赤味が残るくらいで引きあげ、はじめての神戸牛を口に運ぶ。
ネギ塩レモンやジャポネソースなどいろいろあったが、あえて何もつけずにいただいた。
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口がびっくりする。
ほろほろとほどけていく、肉の旨味、飛び出す肉汁。とにかく味が濃い。
焼き肉とステーキとハンバーグのいいとこ取り、という印象。
これが肉か、神戸牛か。いやもはや神戸牛でなくてもかまわないと思ってしまうほど。
肉ダネに練り込むのではなく、別添えで焼かれる牛脂のコクが、それを一層引き立てているのかもしれない。
たまに食べるレトルトのハンバーグは、ほぼソースの味だったんじゃないかと思ってしまうくらい、これぞ、肉。
ごはんが進む。
わたしはこれを食べずに、4年住んだ神戸を後にしたのか。
待ち時間と対照的に、あっという間に野菜もハンバーグも食べてしまった。
焼いて食べて味わって、たまに油ハネでベトベトする手とテーブルを拭いて、を繰り返すので少々せわしなかったが、2時間の待ち時間を忘れてしまうほどの味と体験だった。
すてきなライブ体験をありがとう、と広瀬すず(似)の優しいあの子にも伝えたい。
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