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映画『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』(1953)

令和七年乙巳最初の映画は、マキノ雅弘監督による東宝での次郎長三国志シリーズの第三部。モノクロ。
第二部の終わりに少しだけ顔を見せた森の石松(森繁久彌)が、第三部では次郎長(小堀明雄)とタイトルロールに並ぶという大出世です。

このタイトルですが、二人は冒頭で別れ、そのあとは別々の旅がらすとなり、第三部のなかでは再会しません。第二部の終わりから石松は次郎長一家と旅をしていたようですが、この時点では次郎長の子分になることはなかった。

ちなみにこの時の清水の次郎長の旅の共は、大政(河津清三郎)、桶屋の鬼吉(田崎潤)、関東綱五郎(森健二)、法印大五郎(田中春男)、増川の仙右衛門(石井一雄)。

次郎長と石松が別れたあと、カメラは石松の旅を追いかける。どっちが主役やねんと思うくらい石松のパートが続く。

次郎長三国志のほかに作品に恵まれなかった感のある小堀と、その後の日本映画で大きな存在感を見せつけた森繁との違いが、すでにこの作品では浮き彫りになっているのかなとも思われる。

次郎長と別れた石松は、ちょっといい加減な感じのイロオトコ・追分三五郎(小泉博)と出会う。傷を負った三五郎と泊まった宿屋の賭場で壺を振るお仲(久慈あさみ)に二人はちょいと惚れてしまうが、逆にスッカラカンにされてしまう。

お仲は賭場ではさいころを振り、いかさまもするけれど、おそらく本職は門付かどづけで、三味線抱えて歌う流しの歌い手。

本作では森繁久彌や久慈あさみ(宝塚出身)のようにちょいと覚えがあるヒトが歌っていたりします。
往年の娯楽映画ではよくあることで、次郎長三国志でも先の作品では、時代考証無視して、ちゃっきり節だのありました。

小泉博はサザエさんのマスオさんのようにわりとマジメな役が多いイメージですが、ここではちょいといい加減な印象。
この方、もとはNHKのアナウンサーだった人で、お兄さんが画家の小泉淳作。建仁寺の双龍図はよく知られている。

石松と三五郎を袖にして旅に出た先の賭場で、お仲は次郎長と出会い、イカサマを見抜かれる。ところが二人の馴れ初めも束の間、次郎長たちは役人に捕まって牢に入れられてしまう。

第三部『次郎長と石松』は1953年6月3日公開で、6月23日には第四部『勢揃い清水港』が公開される。
次郎長一家に降ってきた難題は第四部へと続くわけです。
そして、石松と三五郎、お仲がこのあとどうなってゆくかも楽しみで、ひとまず第三部は終わります。

『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』(1953)
監督:マキノ雅弘
原作:村上元三 脚本:松浦健郎 構成:小国英雄
撮影:山田一夫 美術:北猛夫、阿久根巌
音楽:鈴木静一 助監督:岡本喜八
出演:小堀明雄、森繁久彌、久慈あさみ、若山セツ子、小泉博、広沢虎造、河津清三郎、森健二、田中春男、石井一雄、田崎潤、沢村国太郎、小杉義男


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