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映画『ひまわり』(1970)
こんにちわ、旅をしない旅人の唐崎夜雨です。
日曜の夕べは映画のご案内です。今回は主人公あるいは主たる登場人物が旅をする映画をご案内しようという企画の第一弾です。
ちなみに第二弾があるかどうかは未定です。
旅にもいろいろあります。それは楽しいことばかりではありません。
本日ご案内する映画は 1970年の『ひまわり』〔原題:I Girasoli〕です。
映画『ひまわり』はイタリア・フランス・ソ連・アメリカの合作となっていますが、イタリア出身の監督や主要キャストで、物語の半分以上はイタリアが舞台であり、イタリア語が中心となるので感覚的にはイタリア映画です。
映画の国籍は見る者にとってあまり意味がないかもしれません。見る者の母国語の映画かそれ以外かということはあるかもしれませんが、それとて吹き替え版があれば問題にならない。
ちなみに唐崎夜雨は字幕派です。ソフィア・ローレンが日本語でまくしたてるなんてありえない。そこはやっぱりイタリア語でしょ、と思う。意味がわからなくても言葉の響きが作品世界へ誘ってくれる。
監督はビットリオ・デ・シーカ。この方、役者としても活躍されていてアカデミー賞にノミネートされたこともある。
主演はソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ。
そして音楽がヘンリー・マンシーニ。この曲がまた素敵です。
戦争によって引き裂かれてしまった夫婦の物語です。ハンカチのご用意を。
あらすじ
第二次世界大戦後、ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は戦地に行ったまま戻らない夫アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の行方を役所にたずねてみるが行方不明のままである。アントニオの母に息子は必ず生きていると励まし続けていた。
戦時中にジョバンナとアントニオは恋におちた。アフリカ戦線へ行く予定のアントニオはジョバンナと結婚して12日間の結婚休暇を得る。しかし休暇もあっという間に過ぎてゆく。
アントニオは精神をわずらったふりをして入院し兵役をのがれようとしたが、バレてしまいロシア戦線に送り込まれることになる。
そして戦争が終わってもアントニオは戻ってこない。
ロシア戦線から帰国した兵士のなかにアントニオと同じ部隊だった男がいた。男の話によれば、雪の平原を退却中にアントニオは行き倒れたということだった。
それでも彼女は夫は生きているはずだと疑わなかった。
スターリンの亡くなってから、ジョバンニはアントニオの行方をさがしに単身ソ連へと向かう。
見渡す限りのひまわり畑
タイトルになっているひまわり、見渡す限り一面のひまわりが印象的です。
イタリアから送り込まれてきた兵士たちは戦いによる戦没よりも、極寒による飢えと寒さで亡くなったものが多いと聞きます。
ひまわりの花は南の国から来た人々の望郷の思いが北の大地に咲かせているように思われます。
ひまわりの花の下には多くの遺体が埋められているようです。これほど哀しいひまわりの花はありますまい。
このひまわりの草原のロケ地は現在のウクライナになります。ソ連が崩壊して大部分はロシアになりましたから、疑いもなくこの感想文の草稿段階では現ロシアと書いてました。
ひまわりの大地がふたたび戦場と化しているかもしれないと思うと残念でなりません。
旅には駅が似合う
映画はその誕生のころのラシオタ駅の到着から鉄道と親しい。
アントニオがロシアへ送られるのはミラノ中央駅。ここでジョバンナと再会を誓い別れることになる。
ミラノ中央駅は終着駅でヨーロッパの駅らしい趣があります。
そして終盤でも再びミラノ中央駅が舞台となる。
それからソ連での重要な場面でも駅が登場します。ここはソ連の郊外の駅でなにもない殺風景なところですが、ドラマチックな場面として登場します。ここもハンカチ必須でしょう。
個人的なみどころ
この映画はところどころユーモラスなところがある。
ジョアンナとアントニオは少し能天気なカップルで、だいたい精神疾患で兵役のがれようとするあたり変わった男女である。
後半ジョバンナはマネキンを磨く仕事をしている。ソフィア・ローレンがマネキンを抱えてマネキンのお尻を磨いている図は、妙なおかしさがある。
ミラノ中央駅の娼婦がお人形を抱えているのも印象に深い。駅の案内所のおっさんはヌード写真集みたいなものを見ている。
こうゆうお色気が差し込まれるところはイタリア気質なのかしら。
ただユーモラスな側面があるから大筋のドラマでいっそうの哀しみを誘うのかもしれませんね。
たとえていうなら、お汁粉に塩昆布みたいなもので。
『ひまわり』(1970)
I Girasoli
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
脚本:アントニオ・グエラ、チェーザレ・サヴァッティーニ、ゲオルギー・ムディヴァニ 撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ 音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベーリエワ