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「ダイスマーケット」のデザイナーノート

まだ覚えているうちに、インタビュー風に書いていきます。自分で自分にするインタビューみたいな。奇妙ですね。きっと、それが読みたいって人も(ごくまれに)いるでしょう。

パッケージイラスト宣伝用
パッケージイラスト

舞台裏は薄暗いと相場が決まっている

ジューシーキッチン」の印刷をどうするか決定したのち、セットで印刷を注文する都合で、説明書と箱があってもなくても、代金が同じだと判明した。払う金額が同じなら説明書と箱もほしい。でもジューシーキッチンはコスト面や物理的な問題から、別でそれらを用意しなければならない。

とはいえ、これらの枠をどう活用したものか……。そういえば、ダイスマンカラやダイエットリテを作った時のコンポーネントが若干余ってたっけ。ピコン! 閃いたね。これらを使って新しいゲームを作ればいいじゃないか。

それに……忘れちゃいないよな? と自分が脳裏でささやきかけてくる。ダイスマンカラもダイエットリテも、現時点では在庫が売るほど残ってる(注:2022年のジューシーキッチン制作時。もしかしたら将来的にも、完売せず、ずっと残り続けるかもしれない……)。家にある、積みあがった段ボール箱の山が目に入るたびに、それを思い出させられるってわけだ。

まどろっこしいのはやめよう。赤字だ。そうとも。特にダイエットリテは製作費すら回収できていないし、ダイスマンカラも不足かトントンくらいだ。正直、あれは数を作りすぎたな。何事も勉強だね。少なくとも自分は面白いゲームを作ったと自負しているが……売れるかどうかは、また別の話だ。

商業の世界でもよくあることさ。面白い漫画でも、アイドルでも、映画でもなんでもいいが、自分は好きなのに全然売れないまま消えていった……そんな経験はないかい? 誰だって、きっと1つくらいあるよね? そういうことってさ。逆に、ヒットして話題になってたから見てみたら、あんまり楽しめなかった、なんてこともありがちだ。

軒並みいい感想で、いかに素晴らしいかが語られているが、どうにも自分にはピンとこない……心に刺さらない……ボードゲームの世界でも、同じ卓を囲んでいてさえ起こることがある。

うんうん……おっと。その作品についちゃあ、議論が必要だ。完璧ってわけじゃあないが……(その後、30分ほど話が逸れる)。

何だっけ? あー、ダイスマーケットね。確認してみると、新しくリリースするだけの数を用意できるのはダイスマンカラのカードとダイエットリテの得点マーカーだけで、ダイスは精々5~10セット分くらいしか残っていなかった。それじゃ少なすぎる。得点マーカーは……まあ、脇に置いといて、カードか。

これらを使って、新しいゲームができないものか? そこがスタート地点だった。

テストプレイ

使うものが限られている以上、ルールは比較的すんなり思いついた。2パターンのルールで遊べるゲームの草稿が出来上がった。どちらのモジュールで遊んでもいい。ダイスを振ってカードを獲得する、という部分はダイスマンカラそのままに、マンカラ要素を抜いて、もっと簡単にパッと遊べるものになった。

パターン1を早速テストプレイに出してみたところ、軽いゲームのはずが、どうにもテンポが悪い。これを受けてテストプレイヤーから提案された改善案は、(パターンが2つあるとは話していなかったものの、結果として)2つあるパターンを1つにまとめたようなものに近かった。いわば第3のパターンだね。

そして、その場でアレンジを加えて試してみたところ、当初イメージしていたものよりずっと良くなっていたことがわかったんだ。

モジュール式は早々にボツにして、ルールはこれ一本で行くことに決めた。

パッケージについては、ダイスマンカラが青だったから、今回は赤がいいと考えていた。イラストもダイスマンカラを踏まえて、そのアレンジみたいなものがいいだろう。結果、かなり格好いいものになったと思う。

それはインスト30秒のアクションゲーム

ダイスマンカラのコンポーネントだけで遊べる内容であるため、事前にルールは公開しようと決めていた(このツイートから読める)。既にダイスマンカラを持っている人が、新たに買わなくてもいいようにね。もう持っている人への、ささやかなボーナスみたいなものだ。

なんなら、ダイスマーケットの方が好きという人もいるかもしれない。多くの同人ボドゲに要求される、あるいは同人ボードゲームと聞いて真っ先に思いつくような内容に限りなく近いからだ。ルールはわずか1ページしかない。それでも文章にすると長いが、口頭ならインストも30秒~1分くらいだろう。

初心者ほど楽しめるんじゃないだろうか。

同時に、これまでフェレットゲームズファクトリーの作品を知らなかった人たちにも、気軽に手に取ってもらえるようなものにしたかった。ジューシーキッチンが中量級のゲームになったため、もっと軽いものが同時にフックとしてあったらいいな、と考えていた。

要因ってのはいろんなものが絡まり合って、複雑になっているものさ。世界で一番おいしい料理は?と訊かれても、答えづらいだろ? ひとつひとつ分解して話しているってだけで、これひとつが理由だ、なんてものは実際には存在しない。そんなもんさ。

ダイスマーケットなのにダイスがない……?

ダイスマーケット丁合 (1)
ダイスマーケットの丁合の様子

前述の事情もあってダイスマーケットは、ダイスを使うゲームだがコンポーネントには含まれていない。別途、もし買った人はさいころを用意して遊んでほしい。通常ルールでは、人数×3個のダイスが必要だ。

いわゆるボードゲーマーって生き物は、家に遊んでないボドゲが山と積まれているだろうから、そこから引っ張って来るなり、100円ショップなりで調達してきてくれると助かるよ。

その代わり、と言っては何だが値段の割にコンポーネントはいいはずだ。いいかい? 少部数しかないものってのは、単価が高くなるものなんだ。1点ものってのは高級だ。大量生産されて、みんなが買うものは、それだけ値段が安く抑えられる。これがプロダクトの原則なんだ。

だから同人誌なり、同人ボードゲームってのは値段がする。個人で作って捌ける範囲はたかが知れてる。良い悪いじゃなくて、世の中ってのはそういう仕組みなんだよ。

今のところ、ダイスマーケットはアウトレット品を含め、30~35個しか存在しない。

万が一、ダイスマーケットが売り切れたなら、投資のつもりで在庫になってしまっているダイスマンカラやダイエットリテを買ってもらえたらいいな、と願っている。前者はむしろ、2つのゲーム(注:ダイスマンカラとダイスマーケットのこと)が遊べてお得だし。

ま、ハッピーな側面を知りたければ、売れまくってあっという間に在庫切れしている、人気の同人ボドゲのnoteやインタビューでも読んでくれたまえ。誤解しないで欲しいが、別に不満があるわけじゃないんだ。僕は面白いと思ってゲームを作っているし、それが遊ばれていたら、とてもハッピーだよ。これについては文章にするとき、強調して書いておいてくれ。よろしく。

ささやかなおまけ

印刷所からダイスマーケットの箱と説明書が届き、丁合を行う準備をしている最中に、ダイスマンカラのプロモカードが余っていることに気づいた。これはダイエットリテのリリース時に、プロモとしてブースに来てくれた人に配布していたものだ。

ただ、ダイエットリテ自体がさっぱり売れなかったもんだから、これもダダ余りしてたってわけさ。テストプレイで遊んだ時は面白かったんだがね……。そんな経緯もあって、せっかくだからダイスマーケットに封入してしまおう、と考えた。

そもそもロット数が少ないし、今のところ、どのゲームもフェレットゲームズファクトリーの作品は再印刷をしない予定だからだ。あくまで現時点では、の話だが、単純に重版しても売れないだろうと見込んでいるのがその理由だ。泣けるだろ?

2022年の秋ゲムマ出展について

フェレットゲームズファクトリーは、たぬきつね工務店と合同出展をする運びとなった。今回は、初の試遊卓あり(最大2名まで)となっていた。
これを話している時点では正直、どんな風になるのか想像もつかないよ。

ブース番号は「カ09」だ。もしよかったら、ぜひ遊びに来て欲しい。

それじゃあ2022年10月29日(土)、ゲムマ会場で会おう。またね。

(編集部からのお詫び:
 このインタビュー記事は、ゲームマーケット2022秋の前に公開される予定でしたが、諸事情により、イベント後の公開となってしまいました。ここにお詫び申し上げます。

また、ダイスマーケットは以下のリンクから購入することができます。

在庫数に限りがありますので、欲しい方はお早めにお求めになられますよう、よろしくお願い申し上げます)

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