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市場調査を重視して、徐々に認知を広げる戦略を取るか、一気に全国的なマーケティングを行うか。

本日は、「市場調査を重視して徐々に認知を広げる戦略を取るか、一気に全国的なマーケティングを行うか」について考える。

今回のテーマである「全国的なマーケティングをどのタイミングで行うべきか」は、展開ステップをどう構築するかという話に置き換えられる。
そもそも、市場の認知を獲得するとはどういうことなのか。

消費者の行動変容


かつて高い視聴率を誇っていた媒体はテレビだったが、近年、テレビの視聴率はゴールデンタイムを含めて右肩下がりになっており、2000年頃に70%近かった視聴率はは2022年に50%程度、つまり2人に1人にまで減少している。
2020年から2022年はコロナで巣ごもり需要が増えた時期にも関わらず、消費者はテレビとは別の手段で余暇時間を過ごしている。


2022年11月20日 Yahoo!ニュース 
「急な失速…主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移(2022年11月公開版)」(不和雷蔵様)

テレビに代わって台頭しているのがインターネットだ。総務省のデータによれば、2020年以降、インターネットの利用者数がテレビの視聴者数を上回っている。


総務省 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書

さらに、TVerやAbemaなどスマートフォン経由の番組視聴が普及している。例えば、AbemaのWAUは2024年に2,300万人を超えておりおよそ全人口の5人に1人が週1回Abema経由で番組視聴している試算となる。
(これはスポーツコンテンツの独占配信権の獲得など企業努力も大きい)

サイバーエージェント社 2024年3月29日 新しい未来のテレビ「ABEMA」、
週間視聴者数が2,300万を突破 2024年3月の月間視聴数も5億回を記録


また、TVドラマ等を見逃してもアプリ経由で視聴できる「TVer」も利用者数
を伸ばしており、MUB(Monthly Unique Brawsers)は3,500万人だ。


TVer 2024年2月28日プレスリリース 
[TVer] 2024年1月 月間ユーザー数が3,500万MUB、月間再生数は4億回と過去最高記録を更新
累計アプリダウンロード数は、7,000万を突破



これらのサービスに共通するのは、プレミアム会員化による広告の排除だ。月額1,000円前後で動画視聴における広告をカットできるため、今日の消費者はお金を払って興味のない広告は見ない暮らしが当たり前になっている。

消費者の生活に入り込む認知獲得手段

このような状況で、企業はどのように認知を獲得していくべきか。
例えば、セメダイン社はTwitterを活用して顧客との接点を増やしている。同社のアカウントは8.5万人のフォロワーを抱えており、接着剤の日常的な使い方や「お困りごと」をテーマに有用性を訴求することで、関心を持つユーザーを囲い込んでいる。


セメダイン X公式アカウント

また、無印良品は「布団の選び方」や「鍋のおすすめ」といった、生活者が気になるテーマをSNSで検索されやすい形でコンテンツ化している。


無印良品 Instagram 公式アカウント



これらの企業は、SNS検索という生活者の行動を起点に自社の認知を獲得している。

こうした事例からも、全国的なマーケティング展開という大きな構想を立てる前に、生活者の行動変容を観察し、生活のどの部分で認知を得られれば購買に繋がるかを検証する姿勢が重要になる。

ケーススタディ 和菓子メーカーにおける新商品開発


仮説検証において重要なのは再現性だ。定量・定性的な評価をもとに、ある結果が再現性を持つかどうか、さらには大きな金額を投資した際に同等かそれ以上のROIが得られるかどうかを見極める必要がある。
ここでは具体的なケースを元に新規事業開発と仮説検証プロセスをイメージしてもらいたい。

ある和菓子メーカーAは新商品開発の検討を進めている。

与件・制約
今回は、「インバウンド向けのプレミアム商品」の開発を前提に考える。
予算は3000万円、期間は6ヶ月で、3000円の価格帯の商品開発を目指すものとする。

商品化の判断軸
具体的な取り組みとして、まず100人の海外旅行客にテスト販売を行い、40人以上から好評を得られた場合に成功と判断する。
また、その40人のうち5人が帰国後も継続的に購入した場合、さらに大きな投資を進めるという方針を設定する。

プロジェクトの進行イメージ
事前調査で方向性を3案程度まで絞りテスト販売を実施。その結果、もっとも反応が良かった案に対し、追加の大規模投資を行うかどうかを判断する。

想定費用

●製造原価
一般的に、和菓子メーカーの製造原価率は30%とされているが、新規事業開発における新商品ではやや高めの40%を仮置きして計算する。売上目標を30万円とする商品を3案作成し、原価率40%として1案あたり40万円の製造原価を見込む。

●人件費
人件費については、事業責任者、推進担当、EC管理・データ分析担当の3名を想定。1名あたりの月単価を100万円とし、半年間で1800万円を計上する。

●市場調査・デザイン費
さらに、事前のユーザー調査および最終的なパッケージデザイン費用として200万円を見込む。

●通信費
ECサイト利用料はAmazonの大口取引利用料として10万円を計上。

●配送費
配送費は1個あたり1000円とし、3000個の販売を想定して30万円を加算する。

ROI
これらを合計した新規事業開発にかかる費用は6ヶ月間で2080万円。
年間700万円の売上を目標とし、3年で回収する計画だ。
補助金をうまく活用できれば、回収期間をさらに短縮することも可能になる。


参考までに、老舗和菓子店の「スライスようかん」事例を掲示する。
https://blog.cd-j.net/hit/kameya-yoshinaga/

このケーススタディはあくまで一例だ。
社内にデザイナーがいればデザイン費を削減できるし、責任者が高い行動力を持っていればリサーチャー費用を省略できるかもしれない。ITに強い人材がいればデータ分析も問題なく進められる。

まずはプロジェクトにおける不足要素を補い定量・定性分析の精度を高めるための外部人材活用を検討することが重要だ。

まとめ

いかがだっただろうか。

合同会社Felitoでは、事業責任者の皆様が直面する課題に対してナレッジやノウハウを提供するだけでなく、COOロールやBizDev業務を丸ごと請け負う形での支援形式をとっている。

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ではまた次回のコンテンツで。

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