山崎元著(2024)『経済評論家の父から息子への手紙』株式会社Gakken
著者からの遺言に相当する本
本書の出版を確かめることなく旅立たれた…
それだけに息子さんにあてたとされる本題ではあるが、一般の人にも資産運用の基本などが手に取るようにわかる本でもある。
今やリスクをとらずに確実にポイントを稼ぐような旧来のやり方から、適度なリスクをとりながらある程度のリターンを確保するやり方への転換を迎えていることを諭すように語られている。
本書は巻末に本当に息子さんに向けた手紙の全文が掲載されているが、その中のp.180-181にある太字で書かれてあるところを、懇切丁寧に解説したものとして著者最後の本として世に出されたとのこと。
基本的には株式で稼ぐ生き方そのものであるが、デイトレードのようなものではなく、長期的にリスクヘッジの効いたものに預けるというものである。具体的には「全世界株式のインデックスファンド」ということになる。
最低限の生活資金は確保しておき、その他を長期的に運用することが経済評論家としての山崎さんの1つの答えということになるのだろう。運用の三原則として、長期、分散、低コストを掲げている。
また人間関係とお金の問題の切り離しや、保険関係の話も興味深い。個人的には、最初の仕事は興味が持てて倫理観に反しないものと考えておられたこと。そして自分の倫理観に反する仕事はいざという時に頑張りが効かないという理解、確かに自分もそして周りも倫理観がなくなると統制がとれないし、なにより仕事がだんだんと雑になっていく…
山崎氏は多数の転職をした経験をもつが、わたしも転職できる人材になっておくことは重要かと思う。それだけのスペシャリティをもち、かつ容易く交換可能な人間ではないという主張も必要かと思う。
最後に幸せについて語っているが、それは自己承認感…
確かにそうだと思う。
この本にはひとりの経済評論家の人生と教えが詰まっている。その意味では、読者は山崎さんの人となりとやさしさに本書を通じて触れることができるだろう…
良い本を残していただきました。改めてR.I.P.