林總著(2016)『ドラッカーと会計の話をしよう』KADOKAWA
ドラッカーのエッセンスを噛み砕いてストーリー化したお話
会社の人から「ドラッカーが飛行機に乗って会計の話をしている本があるから読んだ方が良い」と紹介されたが、わたし自身は既に翻訳されたドラッカーの本と英語版の本はほぼ読み尽くしており、ドラッカーが飛行機にのって会計の話をしたようなエピソードの記憶が無いので、変だなと思い、色々とドラッカー絡みの検索をかけてみた。
そこで検索に引っかかったのが本書である。昨今では高校野球の女子マネージャーがドラッカーの本を読んだらどうするかといった類の本もあるが、それに似た感じなのかも知れない。そして本書もkindle unlimitedを利用してすぐにダウンロードして読み進めた。
本書は、著者が以前ドラッカーの教えをもとにストーリーにした2本が1冊に収まっている。
最初はフレンチレストランの経営に関して営利企業という捉え方で物事が語られている。その飛行機のファーストクラスで、やたらとドラッカーの信奉者的な今は経営コンサルの老人と、フレンチレストランの経営が立ち行かず、そのレストランを売り渡す間際の経営者が機内で遭遇するというもので、その出会いからドラッカーの主張をエッセンスとして随所に取り入れながら、経営というものを紐解いていくストーリーとなっている。
そもそもドラッカーの本は読みやすく、特に日本人にとっては利益重視な考え方とは一線を隠して表現されていることもあって理解しやすいのですが、それをさらに噛み砕いたストーリー仕立てで、ドラッカーをそもそも知らない人が本書を読むと、一度ドラッカーを読んでみたくなるのかと思う。それだけに老人のメモを介してドラッカーの言葉が的確に放たれる。
個人的には、このストーリー仕立てだと、多分こうなるよね~と推論しながら読んでいきましたが、ほぼほぼその通りに展開され、むしろドラッカー好きには、漫才のオチが最初に分かってしまうような、そんな感じだった。
そして、次のストーリーは病院経営の話で、これは非営利な組織についてのストーリーではあるけれど、マネジメントというのは営利も非営利も、実はそうそう違いは無いものであることが語られている。ここでのストーリーはエコノミー席にいた医者が、ファーストクラスで煽れた老いた男性を助けることからファーストクラスでその介抱を含め、そこで最初のストーリーにも登場した経営コンサルの老人と出会うというものである。そしてこの医師も、病院の経営が傾き、自分は学会発表のためにロンドンに行き、そのままロンドンに逃避行で日本に帰らない決心をしていたが、このドラッカー信奉者の老人の考えに共感し、ついには日本に帰国し、病院を立て直すストーリーになっている。
私自身は経営関係の本は殆ど原書しか読ま無いが、このように誰かの教えを別立てのストーリーとして書籍化されているものも、その著者の捉え方を含めて面白いと感じた次第。でも個人的にはドラッカーはドラッカーの書いた文書で読むべきであるとわたしは思う次第で、ドラッカーが飛行機で会計の話をしたという本の紹介は、やっぱり変な感じがした次第…
個人的にはドラッカーのエッセンスを簡単に復習できた感じでした。