『 1 紫子と百合の栞 』/ 創作恋愛小説 #創作大賞2024 様
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー紫子(ゆかりこ)は「百合」を育てております。
紫子が通う湯河崎学園では植物学の時間に
各々好きな植物を育て観察日記として
皆の前で発表することになっております。
しかし紫子が育てている「百合」の蕾は付いたのですが中々開花せず
紫子は悩んでおりました。
「昨日も花は咲かせてくれませんでしたのよね……。」
(少しの笑みを浮かべながら悲しげな表情)
そしていつもの日課である朝の水やりの時間です。
ところがベランダに置いてあった筈の「百合」の鉢がキレイサッパリ無くなっているコトに気がつきました。
「まあ大変! 風で飛ばされてしまったのかしら…! もう時期、蕾が開くかもという時に……。」
(啜り泣き)
昨晩の湯河崎は鷹が飛べない程の強い風が吹き
鉢が飛ばされたとしてもおかしくない気候でした。
紫子は悲しみに暮れると同時に
冷静になって考えてみると
少し奇妙な気持ちになりました。
(いくら風が強くても鉢ごとキレイに飛ばされるかしら……。)
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「百合」紛失から約8時間後の夕刻。
いつも通りの学園への帰り道。
紫子の間借りしております温泉宿の玄関近くに
紫子と同じ年頃の女の子がうつ伏せで倒れておりました。
紫子は人が倒れている場面に出会したコトが無かったため
驚きのあまり一瞬CUPRESSUSの様に
直立してしまいましたが
直ぐに
「しっかりして下さい!わたくしの声が聞こえますか!」
そして紫子が声をかけると倒れていた女の子から返答がありました。
「…ん…だ だいじょうぶ なの…。昨夜は少し風が強くて…ありがとう。 "ゆかりこ" ちゃん。」
紫子はどうして自分の名前を知っているのか
とても驚きましたが
それ以上に彼女の素敵な声と整った顔立ちに憧れのような感情を抱き
なんだか胸がドキドキしてしまいました。
「あ あ お お怪我はありませんの!?」
倒れていた女の子を紫子が起こし
外傷は特に無いコトを確認すると紫子は安堵した。
(でもどうしてわたくしの名前を知っているのかしら…? どこかでお会いしたことがあるのかしら…? とりあえずお部屋で休ませないと。)
紫子はまだ胸の鼓動が抑えられませんでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー紫子の提案で紫子の部屋で休ませてもらうことになった女の子。
「私の名前はユリエというの。お願いがあるの。あのね喉がカラカラで……。」
倒れてた女の子はユリエという。
しかし元気が無く
更に酷く喉が渇いた様子でした。
紫子は
「とりあえず湯河崎のお水をお飲み下さいまし!ミネラルも豊富で元気が出ると思いますわよ!」
ユリエは紫子が持ってきたお水を一気に飲み干すと太陽のような笑顔で感謝を伝えた。
その笑顔に紫子は先程に感じたドキドキを再度確認し
胸が野球ボールを優しく握られたようなギュッとした苦しくなるような症状が現れた。
(わたくし胸がチクチクして…病気かしら……。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー笑顔になったユリエは紫子の部屋で雑談した後
紫子はユリエと夕食を共にしました。
夕食は湯河崎湾で採れた新鮮なお魚をメインとした麦ご飯。
しかしユリエは水しか飲まないというのです。
紫子はそんなユリエに対してお腹が減らないのかといった一般的な簡素な疑問を抱きました。
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そして夜は22時頃。
寝支度をすませ
ユリエは今晩安静のために紫子の所に泊まるコトとなり
一緒の部屋で寝ることになりました。
整った顔立ちのユリエを改めて見て
紫子は胸のドキドキが止まりませんでした。
ふとユリエが
「ゆかりこちゃん。今日は助けてくれて、そしていつも "大切に育ててくれて" 本当にありがとうなの。お礼にコレを……おやすみ……。」
そう言って差し出されたのは何かの "花の栞 " でした。紫子が何の花か聞こうとするとユリエはまるで動物が冬眠したかのようにグッスリと寝てしまいました。
紫子はユリエから貰った "花の栞" が
何の花か分からず
そして何故ユリエが
「育ててくれてありがとう。」
と言ったのか
その時は全く分からなかったのですが
翌朝を迎えると何となくその理由が理解出来た気がしました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー翌朝。
紫子は隣で寝ていたユリエが居なくなっているコトに気がつきました。
宿中どこを探しても見当たらないのです。
しかし今はユリエは居なくなりましたが
ベランダには開花した「百合」が戻ってきました。
紫子は昨晩のコトが現実であったのか
夢であったのか
一瞬分からなくなりましたが
ユリエから貰った "花の栞" が
紫子のポケットにあったことを確認すると
昨晩の出来事が現実と分かり
以前と同じ様なドキドキが感じられ
それに加えてなんだか嬉しい気持ちになりました。
「この栞の花はきっと "百合の花" なんだわ……。」
紫子はそう呟き
いつもと変わらない
学園へ行く準備を始めました。
ユリエはベランダに戻ってきました。
大きな花を咲かせて鉢と共に……。
紫子は花が咲いている「百合」を再確認し
"笑顔" になり部屋を後にしました。
……………。
この"笑顔" の意味は
この物語を見て下さった神様方の其々の考えた及び今の生活状態によって笑顔の意味は神様方其々変わるかと存じます。
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