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黒皮と素地の間にあるカラフルをデザインに取り入れるのが最新の鉄工

鉄の素地は銀色ですが熱を加えることで表面が酸化鉄の状態となり色が黒く変わることで黒皮や黒皮鉄などと呼ばれる状態になります。

アングルやパイプなどの鉄製品を買う時は素地、黒皮、酸洗などいくつかの仕上げから選んで購入します。

しかし、鉄が最も発色するのは素地が黒革になる中間地点で、塗装ではない自然な赤や青などのグラデーション現象が起こります。

このように熱によって金属が虹色に変色した色をテンパーカラーなどと言います。

こちらはチタンのテンパーカラー

色がグラデーション状に分かれる現象は熱が加わった際の温度の違いから生まれるもので、熱源から近い場所から遠い場所に向かって徐々に色が変化します。

この美しいグラデーションをなんとかして作品に使いたいと思い設計したのが、このジョウロです。

作るものはなんでも良かったのですが、鉄のカラフルなグラデーションが自然の花や植物が持つ鮮やかさと見た目の相性が良いと思いジョウロを作るに至りました。

藍鉄色の水差し
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植物と色の相性が良いです

持ち手のところにグラデーションを施し、本体と繋がっているところは本体と同じ黒皮で、下部になるにつれて素地の状態になります。

注ぎ口や全体のサイズ感、プロポーションも丁寧に設計し、デザイン性の高い作品になりました。

一方で、このような仕上げ方法が一般的に流通しない理由は実にシンプルで、熱の加え方一つで色の状態が変わってしまう難しい製作になるからです。

黒皮→朱色の部分

グラデーションが始まる位置、グラデーションの長さ、グラデーションが、終わる位置、これらを制御することは繊細でとても難しい作業になります。

まず、職人さんに図面を見ていただいて、熱の加え方や理想のイメージを伝えますが、自分としても難しいことをお願いしていることは承知していたため、かなり情報量の多い図面を作成しました。

設計図
※実際に完成したものとはやや内容が異なります

色が重要な作品のため、リアルな着色をして、製作方法や注意点などを細かく記載しています。

鉄の厚みによっても、変色の状態は変わってしまうので、厚みはもちろんほとんど全ての寸法が入っています。

溶接位置や溶接方法、研磨箇所、火炎を当てる向き、指定したいところは全て記載しています。

こちらの意志の強さも伝わってか、とても再現度の高い作品ができました。

製作途中に職人さんが送ってくれた写真
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ふつう設計者は自分で製作はしないので、図面が自力で作る最終的な成果物となります。

少し難しい製作や複雑のものづくりをする時こそ、丁寧に作図することで自分のイメージに近い作品を作ることができることを実感できました。

またチャレンジ要素の強い案件があれば紹介したいと思います。

おわり

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1995年生まれ
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