2024年にみた映画
映画館でみたもの、サブスクオリジナル作品をいくつか覚え書き。
ネタバレ満載です。
★が付いているのは女性監督・製作・プロデューサー作品
オッペンハイマー★
1月のLA旅行、チャイニーズシアターで鑑賞。歴史とオッペンハイマー周辺の登場人物をおさらいしていったものの、専門用語の嵐で英語だけ(字幕なし)では内容の半分も理解できず。3月の日本公開でリベンジすることでようやっと理解が追い付いた!こういうロバート・ダウニーJrがみたかったんだ…アイアンマンじゃなくてジャッジ系の、ダウナーで腹黒くて謀略を巡らし蛇のように執念深く相手を追い詰めるRDJ。ジョシュ・ハートネットとマット・デイモンの配役は嬉しいサプライズ。冒頭の引用に痺れたのと、FISSIONパート、FUSIONパートに分けながら進むセンスには拍手。オッピーの力が及ばない戦争や思想はフラットかつドライに描いてるのもよかった。
★エマ・トーマス製作/プロデュース クリストファー・ノーラン監督 2023年度アカデミー作品賞受賞
DUNE2 砂の惑星
2のために1を配信でおさらい。レディジェシカ以外は理解度ノミだったのに、いま見直すとクッソ面白いのはなぜかしら。IMAXでみることで ”I didn’t watch the movie. I experienced it”という感想がまさに。散々ヴィルヌーブ監督の描く女性観あわねぇと言ってきたけどDUNEは原作のおかげかどの女性キャラもめちゃくちゃ好き。DUNE PART1&2評判が頭抜けてるの、懐古主義なスターウォーズファン(主語でかい)に刺さってるのもあるかもねという話をした。原作はSWやナウシカに多大な影響を与え、sci-fi クラークやハインラインの系譜に繋がる。なにより古典派ロマンに溢れている。ティモシー・シャラメはNetflix 「キング」やったときに「政略と運命に振り回される影のある皇族」が似合うなぁと感動したので、よく考えたらポール王子もドストライクなわけでした。
オーメン・ザ・ファースト★
悪魔の子ダミアンがどうやって生まれたかについての前日譚。ローマで奉仕活動を始めるアメリカ人の少女と教会の陰謀を真面目に語りながら、冒頭の演出に引き込まれ最後の畳みかけに笑ってしまいそうになるけれど、女性とフェミニズムに焦点をあてた新しいオーメンだった。良作!
★アルカシャ・スティーブンソン監督
ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人★
国王ルイ15世の最後の公妾ジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯についての歴史作品、予想をこえて5000万点!ヴェルサイユ宮殿で実際に撮影し、シャネルがドレス制作に全面協力って時点でひれ伏しそう。第三者からみた国王やマリー・アントワネットの映画はいくつかあるけれど、このパターンは初めてかも。主演&監督のマイウェンの振る舞いひとつひとつが美しい。アラ還で知的に歳を重ねた感じのジョニー・デップ、フランス語の演技もとても良かった。国王の側近ラ・ボルドが個人的なVIPです。
★マイウェン監督
チャレンジャーズ★
トレント・レズナーが手がけたテクノOSTにもってかれた感はある。揺るぐことなく今年の1位。音楽センス、キャラクター造形、ストーリー、ファッション、カメラワーク&没入感、セリフ回し、すべてが好み。ルカ・グァダニーノ監督の趣味なのか、2人の男と1人の女の関係性を10年に渡ってネチネチと描き、テニスというスポーツを通して暴き出す。タシ、アート、パトリックという主要なキャラクターたちには三者三様のオムファムファタルがいるのでDom/Subバランス含めゴールデントライアングルなんだけど(伝われ)かれらのにらみ合いがたまらんと思いつつ、walking on eggshellsすぎる依存関係が痛々しくて素晴らしい。特にひとたらしと評判のパトリック、かれが使う you've made me a better person : you make me feel worthy みたいな言い回し、経験則ではmanipulative なタイプがここぞというときに使いがちな印象があって言うだけアレだな~と思いました。個人的にはパトリックが一番マゾな気がする。パトタシアートの中で自分がmanipulative だと意識しているのはタシで、passive-aggresiveなのがパト、一番ひとを狂わせるのに無意識野郎がアートだと感じられてよかった。全世界のベイビークィアが恋してもだえ苦しむノンケもアート、あれはギルティ。。
★ゼンデイヤ製作/プロデュース ルカ・グァダニーノ監督
落下の解剖学★
女性監督による史上3作目のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。サスペンスとして面白いし法廷劇として見応えもあるが、監督が実生活でもパートナーの相棒と脚本を共同で書いたと聞いていろいろとリアルさが増したし、心からゾッとした。妻の浮気疑惑にクィアネスが差し込まれているのがツボ。弁護士のヴァンさんが推しです。フランスの佐々木蔵之介っぽい。
★ジャスティーヌ・トリエ監督
関心領域
ナチスのアウシュビッツ収容所とその真横で暮らすドイツ将校一家を淡々と描く。途中、将校家で働くメイドたち(=捕虜に近い?)がポーランド系の名前だと気づいて細かい演出にうーんとなった。The Zone of Interest 原題は、対岸の戦火を見て見ぬふりをする我々に灰のように降りかかってくる。
エイリアン:ロムルス
主人公がシビルウォーの女子だと気づくまで1時間かかった。思ったより懐古主義(良い意味で)なエイリアンだったし、過去作をちょっとずつアンティパストで出してくる上手な作り方。姉弟というロボットとの関係性も新しくて、温かくていい。ドントブリーズの監督なので途中からそちらへ全振りしていて笑ってしまうが、バッドエンド気味な落ちもよし!マイナス点は最後のエイリアン造型かな…
セキュリティ・チェック
原題はCarry on いざ進め、空港での手荷物、などダブルミーニングなタイトル。主演がお気に入りのタロン・エジャトンなので楽しみにしていたNetflix作品。直球クリスマス映画で、タロン贔屓だという点を考慮してもこれは5,000万点です。ラン・オール・ナイトとトレインミッションのジャウム監督だもの、面白くないわけがない。 オチまで最高。みんな空港ではいい子でいようね!!ダイハードとミッションインポッシブルをまぜてタロンエジャトンにぶん投げた名作だった…主人公が”イーサン”てまんまじゃん!
アイアン・クロー
価値観の呪縛を解き放つ、なんていうコピーがついているほど、マスキュリンな男社会や旧体制な家族制度にがんじがらめにされた一家の悲劇。世界チャンプになるまでの苦労話かなーと思っていたら思わぬ悲劇の連続とザックエフロンの面影がなくてびっくり。プロレス全然わからないままみたが楽しめました。後半になるほど、重くてはかない兄弟愛がつらい。マインドハンターのビル・テンチ(本作では父親役、フリッツ・フォン・エリック)目当てだったためしっぺ返しがすごかった。
異人たち
ポール・メスカル強化月間。ペットショップボーイズの You're always on my mind はトラウマ曲なので予告に使われていた時点で迷うことなく鑑賞リストへ。日本版「異人たちの夏」原作をすっかり忘れてて、ホラー演出が来るたびビビりながら鑑賞。アダムとハリーの歳の差ー!アンドリュー・スコットとメスカル、実際20歳差よね…むちむち熊髭系が好きなヘイ監督への圧倒的な信頼感はここでも健在。銀河鉄道の夜meetsクィアネス、な味付けだった。アンドリュー・スコットのようにゲイ当事者があの役をやることで、若い頃から感じてきた差別、同情、世間とのずれをみせる演出はなかなかこたえました。つらい。
「ウィークエンド」も「異人たち」も若いほうが去っていく場面が同じだし、ああいうハッピーエンドじゃない、でも爪痕残る恋愛をおヘイもしたんだろうな~っていう感じがすごい(すごい)インタビューを読むと監督の恋愛観が垣間見えて嬉しい。メスカルはAmazon Prime 「もっと遠くへ行こう」もよいです。シアーシャ・ローナンと共演のいい感じにバッドエンドSFです。
グラディエーター2
ポール・メスカル強化月間再び。1&2でオールタイムベスト入り。
古代ローマ研究者の本村凌二氏が字幕監修に入ってくださったので見ごたえがあった。ありがとうございます。
セーヌ川の水面の下に
ついにNetflixがサメ映画に手をだしたか… 色々ごった煮なのに超面白かった。サメの生態や気候変動ネタも(それはないやろ…)と思ったらちゃんと歴史的背景や科学的根拠に基づく話だったり、あとセーヌ川がドブ川すぎるのでリアル。パリオリンピック直前に配信するあたり、皮肉が効いてるね。
マッドマックス フュリオサ
説明やセリフが最小限なところ聖典っぽくて好き。ジャックさんとはたらくくるまみんな好き。ディメンタスみたとき、田舎のヤンキー音漏れMixをふと思い出した。加藤ミリヤとか好きそう(偏見)
ジャバサママを見送ってくれた鉄馬の女と顔グッチャグチャなMr.ノートンが同じ役者で、クリヘムの妻のエルサちゃんだったの一番びっくりした!
モンキーマン
デヴ・パテル監督・主演・原案・脚本のアクション映画。すわジョン・ウィックか?という場面も多いけれど、マイノリティと政府権力との闘いでもあるので、クィアネスも内包している。ものすごく良かった。泣けるし。インドの歴史・政府・文化を軽くさらっておくと解像度がドッと上がる。グリーンナイトといい、どこまで化けるんだデヴ・パデル…!
Knox Goes Away(2023)
今年、映画館以外でみた過去作品だとトップにはいる、マイケル・キートン暗殺教室。キートン主演&監督。フライト機内上映で英語字幕でなんの情報も入れずふらっとみたら、これがめちゃくちゃ良かった…!暗殺者を引退したとたんに余命数ヶ月になるわ、音沙汰なしの息子からSOSはくるわ、一歩間違えればコメディになりそうなアクション映画なのに、必殺仕置人キートンのおかげで静謐なサスペンスに。話が二転三転してラストに泣いてしまった…まさかのアルパチーノでてるし。布教したいから日本語字幕いれたブルーレイをさっさと出してほしい。
ビートルジュースビートルジュース
1988年の旧作を見直したらジーナ・デイヴィスの旦那がアレック・ボールドウィンって言う事実に驚く。メガネで隠してるけどタレ目セクシーさは変わらん。そして新作は旧作が好きなファンへのご褒美コンテンツだった。マイケル・キートンもティム・バートンもウィノナも健在ゆえにできた奇跡のコンテンツ。地獄へのソウルトレイン乗りたいわね
シビルウォー アメリカ最後の日
カマラ・ハリスを破って二度目の大統領に選任されたドナルド・トランプ氏。2025年1月の就任以降、アメリカや周辺勢力がどうなるかの不安をたっぷり箱詰めにすればシビルウォーにつながると感じているひとは少なくないはず。カメラマン、ジャーナリズムからの視点で撮られた国家が崩壊する姿は残酷で美しい。森の火事のシーンの映像美がオンリー・ザ・ブレイブと重なってみえたし、戦争でくすぶる火と自然の中で燃え盛る炎が作品の中で一体化していくのが印象的だった。
バチカンファイル 人類終末計画
原題は Resurrected. 善良な市民が死から復活してよみがえる近未来で、カソリックが与える「復活者」の価値を問う作品。たまたまwowowでやっていてB級かな~とみていたら、かなりつくりこまれた映画でした。90分もないディストピアスリラーだけど、宗教感がそこそこあってもなくても楽しめると思う。Search サーチとかZ世代が出てくるパソコン画面オンリーの映画が楽しめれば全然行けます。あなたは死んでも復活したいですか?それともワン・ライフ派閥ですか?善人しか復活すべきではないと思いますか?何を持って罪と断罪しますか?
ちなみに私は半分クリスチャンだけど、ひとつ言えるのは、この作品のバチカンはクソですね。お役所的な思考停止と建前守り続ける宗教感は崇められない。ひとに危害を及ぼさない範囲で、宗教は自分に合うようにカスタマイズすべし。
囚われた国家
ーマッチを擦り、戦争を起こせ。抵抗する限りチャンスはあるー
ルパートワイアット監督「囚われた国家」Amazon Primeレンタルでみたら、とんでもなく好きな作品だった。ザ・クリエイターやローグワン、孫文の義士団が好きな私には、どストライクすぎるディストピアと反乱軍の物語 5,000万点あげる!ヴェラファーミガ出てるなーと思ってつらつら見てたらジョングッドマンが主役級だし、名もなきメンバー達が良い。ポストエイリアン統治の世界をどう生き抜くのかを描いたSFは少ないかも。エレベーターのシーンも最高潮なのにサントラ抑え目なのもわかってる。私、この世界で何の役目ができるだろうか。結構ショッキングな終わり方でもう一回見直すと符号が見つけられてなるほどと感心している。
シビルウォーに繋がる点も多々あってエイリアンを一方的な征服者、今のアメリカとしてみても、違和感が少ないのがなんとも絶望的。だけど、マッチは灯るし、火は消えない。
ブラックベリー
年末に駆け込みでみた映画だけれど、今年のベスト10に這い上がってきた。構成や物語は異なるけれど、全体的に漂う香りはダニー・ボイル版(ファスベンダー主役)スティーブ・ジョブズの映画によく似ている。市場を席巻するためには手段を択ばない鬼のCEO、プロダクトを信じる天才エンジニア、儲けの匂いに敏感な経営者たち。ブラックベリーは2000年代にしばらく利用していたけれど、ホワイトハウスをはじめオバマ大統領が使っていたり、名だたる外資系のファーストチョイスだった(実は従業員からは大不評だったらしい)iPhoneが台頭するまでどうやってカナダ発のRIM社がブラックベリーで市場を握っていたか、なぜ破滅に向かったか、スタートアップの良い点悪い点、事例をたんまりと紹介している。これ、グロービスの企業事例にならないかな…
RIM社について幾つか英語版のサマリーをみつけた。あとで読んでみよう!
Reasons behind the collaplse of research in motion
The Importance of Evolving Product Design: A Case Study of BlackBerry’s Rise and Fall
2024/12/30時点の記録です。なにかあれば追記します。
おまけ:2023年のベスト映画等