阪急電車に恋をした日
2012年、春。
私は小学校を卒業して、長い春休み中だった。
家族で、私の生まれ故郷”総持寺”周辺の街へ、お花見しようという話になり、大阪モノレールを乗り継ぎして行くことになった。
南茨木駅から総持寺駅に行くには、各駅停車の電車に乗らねばならなくて、各駅停車の電車が来るまで、待機していた。
途中で、特急の電車が来ようとしていた。
父が、「よく見ておきや」と指差ししたその先に、君は桜吹雪を吹かせながら、勢いよく通り過ぎていった。
その時の光景を、いまだにはっきり覚えている。
12歳という幼きながら、君のあまりの美しさに・・・とろけるような恋をした。
そう、君に、一目惚れをしたのだ。
あれから年月が流れ、21歳になった。
遠距離恋愛ながら、他の鉄道会社に、浮気もせず、不倫もせず、ただ君だけのことを一途に愛している。
気持ちの良い座り心地の椅子に、モダンでシックな車体・車内に、濃い茶色の、ファンの中で”マルーンカラー”と呼ばれる車体色がなんともたまらない。
君は、おしゃれで華やかな世界に連れていってくれる。
どれだけ私が落ち込んでいようとも、君に乗ったり見たりすると、私をあの日の春のような、華やかな気分にさせてくれる。
君はモテモテで、いろんな人を笑顔にさせる。
だって、大阪で一番の花形の電車って呼ばれているものね。
残念ながら、あまり君に会いに行くことができない。
けれど、君のことが大好きだよ。
いつまでも、私をいろんな場所に、これからも連れて行ってくれ。