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勿忘草〜丘野 鈴 編①〜

行かないで。お願い。
ねぇ、お願いだから、もう、どこにも…。

私は、一体何の夢を見ていたのだろう。
モヤモヤしながら朝の支度を始める。
今日は小学校からの親友、小鳥遊  緋代(たかなし ひよ)と会うのだ。
紹介が遅れました。
私は今年で30歳になる、丘野 鈴(おかの すず)です。
ごくごく普通の会社員。

と、このままでは遅れてしまう。
私は準備をして、軽く朝ご飯を食べて、家を出た。
「行ってきます。」
一人暮らしなので誰も居ないけれど、私の習慣だから。行ってきます。と言うんだ。

「緋代、お待たせ。」
「あ、鈴。全然待っていないよ、まだ5分前だよ?」
「そう言う緋代だって早いじゃない?」
「まあまあ。楽しみだったもので、つい。ね?」
「ふふ、私も楽しみだったよ。じゃあ、行こっか。」
「うん!」

そんな話をしながら、緋代と私は目的地のカフェへと向かった。
そう、このカフェで食べたかった。
私たち二人のお目当てがある。
それは、特大パフェ…ではなく、いつもとは違う少し贅沢なアフターヌーンティー。
まだお昼前だけどね。

「緋代、最近どう?」
「んー、そうだなぁ。
実はこの前、あ、あのね、か、彼氏出来たんだ。
初めての…。」
照れながら、緋代は言った。
「んえ!?ひ、緋代!お、おめでとう。
え、と。いつから…?」
「じ、実はね先月にね、会社の先輩に告白されたの。」
「わぁ。凄いね!素敵だね!
け、結婚とかって考えていたり、するの?」
「今のところ、考えているよ。
つい先週から同棲を始めたの。」
「え!今日、私なんかと会っていて大丈夫なの?」
「あははっ、大丈夫。
今日のことは実はずっと楽しみにしてるの、言ってたから。」
「えへへ、何か、私まで嬉しいな…。
ねえ、もし、結婚式とかする時、私、お祝いしたい!」
「ふふ、ありがとう。絶対呼ぶよ。
そういえば、鈴は最近どうなの?」
「私は、うーん、あまり変わりなく、かなぁ。」
「お仕事、忙しいの?」
「うん。段々上の立場になってきたからなのか、する事が多くなってきたり、まあ、当たり前…なのかもしれないんだけれど、ね。
でも、彼氏とか憧れるなぁ。」
と、つい、言ってしまった。
「大丈夫、鈴、可愛いから絶対出来るよ!
何かあったら私のところまでおいで。
いつでもお話聞くよ。」
「緋代…。ありがとう。」

私は、緋代の言葉に何度も救われてきた。
緋代とは長い付き合いだから、心配をかけたくないのも事実だよ。

「アフターヌーンティー、美味しかったね。」
「美味しかったね!また行こうね。」
「鈴、また遊ぼうね!
私ね、鈴以外に何でもお話出来ちゃう親友っていないんだ。
だから、お仕事が大変でも、鈴と会うことが、会えることが凄く嬉しいの。
だから、また会おうね。
後、寝れていないの、かな?
何かあったら遠慮なく私に言ってね。
力になれるから分からないけれど、何があっても鈴の味方だから。」
「もう、緋代。
よくそんな恥ずかしいことをサラッと言えちゃうね。
ありがとう、嬉しい。
私も楽しみだから、また近いうちに会おうね。
また連絡するよ。」
「ふふ、じゃあ、またね。」
「うん。今日はありがとう。気を付けて。」
「うん!じゃーまた!気を付けてー。」

私と緋代はお互い帰路についた。


続く。


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