キラー・ナマケモノ感想 残飯にジャンクフードをかけたら奇跡的に意外とうまい残飯になった。そんな感じの映画

本作『キラー・ナマケモノ』は、正直に言ってシナリオ、演出、登場人物、すべてがしょうもなさすぎる映画です。

ただ、チャッキーばりの知能と悪だくみ、そして野生の暴力で、次々と人を殺すナマケモノ、という味の濃すぎるジャンクフードのような存在が1人(あるいは一匹)登場することにより、本作にしかない独特の魅力がうまれ、なんとか楽しめるクオリティになっています。

『キラー・ナマケモノ』は、ナマケモノの生息域の一つとされる熱帯雨林地帯らしき場所から始まります。(全くの余談ですが、ナマケモノは中央アメリカにも生息しているそうですね。初めて知りました!)

小動物らしき影を追う、二人の密猟者。彼らに追われる哀れな生き物の正体とは……?

そう、カワイイカワイイ、ナマケモノです!
密猟者から、なんとか逃げようとしています。
しかし、あのゆっくりな歩みでは、邪悪な二人の密猟者からは逃げらない。
ああ……。
かわいそうに、ナマケモノは密猟者たちに捕まってしまいました。

かわいそう? なわけねぇだろ!

と言わんばかりの仰々しい音と共に登場する、バカでかいワニの死骸。
その腹部にはなんと、ナマケモノの爪でつけられた巨大(明らかにデカすぎ)な傷が……。

そう、愚かな密猟者共は、危険極まりない殺人ナマケモノを捕まえてしまったのだ!

ということで物語が本格的に始まります。

熱帯雨林から場面は変わり、繰り広げられるのは、
アメリカにあると思しきしょうもない大学で行われる、
しょうもない女子学生たちによる、
しょうもない権力争いです。

物語は、大学女子寮の寮長(映画内では微妙に表現が違いますが、寮のトップの学生みたいなイメージ)の座をめぐる二人の学生の争いが主軸となり進んでいきます。

一人の女学生の名はエミリーです。彼女が本作の主人公。とりあえずは。
決して目立つ存在ではないし、SNSのフォロワーは800人くらいとしょぼい。でも、いつかは寮長になりたい!そんな思いを胸に秘め、迎えた4年生、ついに行動に移します。

対するは現寮長のブリアナ、高圧的で、自分にとって利用価値のある女にはすり寄り、しゃぶりつくそうとする。絵にかいたような嫌な女ですが、SNSのフォロワーは3万人超となぜか高い人気を誇り、寮長として権勢をふるっている。

とここまで書いたら、たぶん多くの人が「ここにどうナマケモノがつながるんじゃい」という疑問を抱くでしょう。私も抱きました。

鍵を握るのが、性悪寮長ブリアナに立ち向かう、エミリーです。一瞬だけひたむきに頑張る乙女っぽく描かれるのですが、実はエミリー、最低かつバカな奴でした。

SNSのフォローは30倍以上差があり、寮内にはエミリーを応援してくれるような地盤はない。どうやってブリアナに勝とう……。エミリーはバカなので、ひたむきに選挙活動に打ち込もう、とはしません。

「そうだ!カワイイマスコットを私が作ればいいのよ! マスコットと一緒に私の人気も爆上がり! かわいいマスコットと言えば、ふわふわの動物よね!」

そう、エミリーは猫を飼って、しょうもない動画を作りYouTubeに投稿して飯を食おうとするも、その姑息さを見透かされ、動画の視聴数は伸びず、最後は猫を捨てる奴みたいな、最低な考え方をする人間だったんですね。

しかも、エミリーはバカなので、およそ普通の人間が備えているはずの想像力や良心の呵責とかもありません。だから、行動に移すのも早い早い。

ひょんなことから知り合ったエキゾチックアニマル(犬とか猫以外の動物)を扱う、無駄にいい声のブリーダーの店に車を飛ばし向かいます。※ちなみにここまでの間に申し訳なさげ程度に、キラーナマケモノによるブリーダー殺害シーンが挟まれるのですが、これもしょうもない。

そして、その店でエミリーが出逢ったのが、密猟者に連れられ、熱帯雨林の奥からやってきたキラーナマケモノちゃん、ってわけです。

もちろん、一人と一匹の「運命的な出会い」とかがあるわけではなく、ここでもエミリーは最低な人間っぷりを発揮するんですね。ブリーダーの不在をいいことに、キラーナマケモノちゃんをかっさらっていってしまいます。

そして、寮に戻ると、キュートなキラーナマケモノちゃんは寮の名前である、「シグマ・ラムダ・シータ」にちなみ「アルファ」と名付けられ大人気に。

大多数の寮の学生もエミリーと同じようにバカなので、「どこから連れてきたわけ?」とか「人と一緒に暮らしていいはずがないでしょ?」とか、当たり前の想像力があれば思い至ることに一切触れることはなく、キラーナマケモノ、もといアルファちゃんをマスコットとして祭り上げていく始末。

アルファちゃん人気でエミリーの評価も爆上がり。そして近づく、寮長を選ぶ決戦の日。エミリーとブリアナの戦いやいかに…!

そして、ここまでかわい子ぶりっ子していた、アルファちゃんもついに本性を現し、「あたし以外の女が目立つなんて許さない。みんなぶっ殺しちゃうんだから!」とばかりに、バカな女学生たちをぶち殺し始めます。そう、アルファちゃん、女の子だったんです。

舞台は、選挙当日、閉鎖された寮内に移り、ついに、エミリー、ブリトニー、アルファちゃん、2人と1匹の女たちによる熾烈なバトルがスタート。

『キラー・ナマケモノ』、本当にしょうもない映画なのですが、中盤以降の、キラーナマケモノ・アルファちゃんによる殺戮劇は最高です。

薬を飲ませ昏倒させた上で爪で刺し殺す、眠ったところをす巻きにして屋上から落として殺す、枕を使って窒息させて殺す、あらゆるバリエーションで女子学生たちをアルファちゃんがぶっ殺していく。

『チャイルドプレイ』のチャッキーがやっていることをナマケモノにやらせているだけで、演出もチープなのですが、それがむちゃくちゃカワイイし楽しい。

そして、シナリオの流れとか、「いや普通死んでるだろ」といったお約束を無視したハチャメチャな展開が続き、物語は最高潮に。

というわけで、最初はけなして、次にすごい面白い作品であるかのように書いたのですが、正直に言うと『キラー・ナマケモノ』は、やっぱりしょうもない映画だと思います。

ナマケモノが殺人を犯す、という発想が奇跡的に女学生の寮というシチュエーションとかみ合っているために日本のギャグマンガのようなジャンクな面白さが生まれているだけ。なんというか、本筋はカネのために映画を作っている人が『ボボボーボ・ボーボボ』全巻を一晩読んで考えたような内容です。

また、本編の節々で「キラーナマケモノちゃんをSNSでバズらせてやろうぜ、ひひひ」みたいな姑息さが感じられるのも、見ていて嫌でした。

時間が余ってしょうがない、10年付き合った恋人にフラれて何も考えたくない、どうしても眠れない。そういうときに見るのが良いのではないでしょうか。

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