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自己流『経済随筆』(6):食費を節約して開運までできる法

食費を節約しながら開運?

うーむとい唸った本があった。ご存じの人も多いと思うが、水野南北という人が唱えた節食開運法である。いざ節約となった時に、まず食費を削るというのは常套手段であろう。とはいえ、あれも節約これも節約となってくると、たまにはうまいものでも食べて元気を出したい、というのも人情ではないだろうか。筆者も食費の節約を心がけているが、どうしても仕事のアクセントに甘いものやコーヒーが欲しくなり、つい売店に足が向いてしまう。これはいい気分転換にもなる。しかし、水野南北という人はそれはダメだという。

水野南北と「修身録」

この水野南北という人だが、江戸時代の人で、どうやらもとは無頼の徒だったらしい。それがある僧侶に出会って改心し、その僧から人相術を習って、その道の大家として成功したという。彼曰く、「人間には天から与えられた食の量が決まっており、それを超えると病気をしたり、運が衰えたりする。したがって食を節約し、天から授かる分限をわきまえた食生活をすることが大切で、その結果として運も開けてくる」という。その考え方の根っこにあるのは、食は天からの授かりものであり、その恵みに感謝しながら食をとることが大切であるという考え方だ。そしてその心がけで節食を続けると、小さな望みなら一年、もう少し大きい望みなら三年、かなり大き望でも十年でかなうとまで言い切っている。しかも出世につながるというのだ。


エコやSDGsにもつながる考え

南北は食=運あるいは徳ととらえ、これを大切にすることを説いている。いずれ取り上げたいが幸田露伴も『努力論』で「惜福」ということを説いている。平たく言えば、運を使い切らないという発想である。しかし、筆者のような凡人にはちと厳しい話でもある。あるいは近年の引き寄せの法則のような、ウキウキしながら開運みたいな方向性とは真逆である。ただ、これで行くと確かに食費の節約になり、また暴飲暴食からくる内臓疲労的なものはなくなるだろうから、健康増進にも役立つ。ただカップラーメンで済ますみたいなやり方では、かえって体を壊すだろう。バランスよく食事をとりながら、いかに節約するか、そこにひと工夫が必要だ。しかし、南北の考え方はエコの観点や、SDGsにつながる面がある。食材の大量廃棄や無理な開発などへの抑制になる。そういう点では意外に現代的でもある。少なくとも食費を節約しながら開運しかも蓄財でなく出世できるとは興味深い理屈だ。そこらあたりがちょっと気になっているので、また原典に当たって、気が付いたことをコラムでお伝えしたい。(了)



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語部史(かたりべ・ふひと)
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