(慢性の)痛みと戦う方々への有益な情報
このブログ(note.com/fascia)では徒手療法家(鍼灸師・マッサージ師・整体師などの”プロ”の治療家)向けに専門的な内容のブログを書いてきました。その中で必要な情報の一つ「脳の中の薬箱 (The drug cabinet in the brain)」という動画に字幕をつけて紹介したところ、治療家たちよりも痛みと”戦う”方々からのほうが反響がよく、「これは治療家のためだけにブログを書くよりも痛みと戦う方々のためのブログも紹介すべき」と思い、ここに紹介することにしました。内容はyoutubeで公開されているDavid Butlerの痛みの治療についてのレクチャーを詳細に紹介しているのと、痛みの科学の最先端をいくDavid ButlerとLorimer Moseleyの共著「Explain pain supercharged」から私なりの解釈を交えた痛みの治療に役立つであろう71個の情報(71ナゲット)の中から、特に私が患者さん側の方々に知ってほしい事柄を「私流」にを紹介します。David Butlerのレクチャーのビデオの解説は、はじめは読んでいてわかりにくい部分もかなりあるかもしれませんが、一度は読み切ってください。そして次の「痛みに役立つ71個の情報(71ナゲット)」を見てもらうとさらにその内容がわかると思うので、また最初に戻って読んでもらうと理解が深まると思います。
患者さん側の方々でもう少し痛みについて勉強したい方がいたら「Eplain pain」(リンク)という本をE-bookで購入して、DeepL翻訳を利用しながら読むといいかと思います。(E-bookだとコピペで一気にまとめて翻訳できるはずなので紙の本で辞書を引きながらよりかは楽だと思います。)
(注意!)このブログは患者さん側の立場の方々に捧げる情報です。プロの治療家の方々がこのブログを読んで患者さんの前で偉そうに痛みの科学について語らないでください。なぜならここで紹介する痛みに関する内容は、プロの治療家にとっては不十分すぎる知識です。どうしても勉強したかったらwww.noigroup.comで情報を探すか、SNS等や本でいろいろと情報を探ってご自身で勉強して下さい。よろしくお願いします。
ーーー目次ーーー
1,基礎的知識として痛みについてDavid Butlerのyoutubeでの動画紹介
2,「Explain pain supercharged」より痛みの治療に役立つ71個の情報(71ナゲット)からいくつかエッセンスを私流に紹介
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1.「脳を使って痛みを治療する (Treating pain using the brain)」
1, When in pain, many areas of the brain are in action at exactly the same time(痛みがある時、同時に脳の多くの場所が活動している)。そしてこれが意味することは?
例えば慢性の膝の痛みを例にとると、その痛みはの度合いは人それぞれだし、その人がどの場所にいるかでも違うし、ある特定の人といるともっと痛いかもしれないし、誰か(大抵セラピストや医者)に「あなたの膝関節はメッチャクチャ硬いね!」と言われたらもっと痛みを感じるかもしれない。つまり何かの情報により痛みは増すかもしれないが、それと同時に正しい痛みに対する知識があれば、痛みが減るかもしれないということがわかる。例えば、患者の痛みの捉え方(考え方)を変えて、痛みを和らげうる方法として、左に首を回すと痛いという患者に、「首を左回して」と言うのではなく、「顎を左の肩に近づけてみて」と言ってみると、痛みが軽減することがある。
脳の中では、脳のどこかの部分が「リーダーシップ」をとって統率しているのではなく、あらゆる場所が痛みと複雑に関係している。また脳の中のミラーニューロンにより例えば、動きを考えたり、動きを見たりしても、脳のあらゆる場所が活動する。これを利用してDavid Butlerらは、鏡を使って痛みを治療している。ちなみに興味深いことに、このミラーニューロンの影響の為か、左肩に痛みがあるゴルファーが左利きのゴルファーをテレビでみれない、といったことがあった。
2, Many "things" use the same brain parts - ie overlap
(痛みを感じているときには、脳のあらゆる場所が同時に活動しているが、時には2つ以上の感覚を同じ場所が感じている(overlap)こともある。)
例えば、pleasure(喜び、快楽)とpain(痛み)は同じ脳の部位で感じている(同じ脳の細胞が働いている)。また”言葉”と”動き”も同じ部位が活性化している。例えば「腰が痛いー!」という言葉を発した時と、何か腰を痛めるような動きをした時、どうも脳の中では同じことを「感じている(同じ部位が活動)」ようだ。
つまりこの脳の”ある部位”ではいくつかの事が同時に起こる(overlap)ということを利用し、「喜び」を感じることで脳で痛みを感じている部分を「いい意味で」活動させていると言える(痛みを抑える)。痛みを表す言葉を変えることで、痛みを変えることができるかもしれない。
3, There is no such thing as joint pain, muscle pain or nerve pain. There is no such thing as a pain ending (no pain pathways), only danger endings. pain pathways.(関節痛、筋肉痛、神経痛というのはない!神経は危険信号を脳脊髄系に送るだけ!)
★重要なこと!→Brain is boss. (脳が全てのボス)
→Do not send pain!(神経は痛みを伝えない!)
(そのいくつかの例)
・足首を捻挫してバンバンに腫れていたらメッチャ痛いけど、その時強盗に囲まれたら、痛みを忘れて逃げられる。
・バイオリニストの指先にトゲが刺さったらメッチャ痛いが、ダンサーの指先にトゲが刺さってもそんなに痛くない。(逆にダンサーの足の親指にトゲが刺さったらメッチャ痛いのに、バイオリニストならそんなに痛くない)。
・ボディーピアスをしてても痛くないし、その後慢性痛になることもない
などなど
つまり
Pain is made in our total body that the brain rules and we want body structures to be as healthy as possible. (痛みとは脳が支配している体全体の中で作られ、我々は常に体全体を出来る限り健康に保っていきたい)
4, The nervous system is really immune organ (not neuron).
(脳には約一兆もの神経があるが、その内10%が神経(neuron)で、残りの90%は免疫機能で働く(immune function))
The immune system; "A system that knows who you are, and which will react when you are not you". infection, trauma, distressed bereaved, will react, even more sick. (つまりdanger cells)
免疫機能とは、「その人がその人で有るためのシステム」で、もし”その人で無くなったら”、免疫機能が働く。例えば、感染、怪我、ストレス、苦痛、などがあり、”その人でなくなったら”、免疫機能が働く。
★なにがその免疫機能を和らげるか?(Some immune buffering behaviours)
ability to develop coping skills (物事により良く対処する方法を学ぶ)
perception of stressor (ストレスの感じ方を変える)
Social interactions (他の人との交流)
Belief systems (信念)
Exercise (エクササイズ)
Humour (笑うこと)
Intimacy (好きな人との交流)
Diet (食事)
HR (homunculus freshman) (ある特定の動きのこと)
5, Bioplastic→Changeable! (その脳神経は変化する!治る!)
もし痛みがあると体全体に影響を及ぼし、組織が変わってしまう→慢性化。
たとえば目の見えない人のホモンキュラス(ホモンキュラスについては後ほど解説)を考えるとどこかの部位が脳の中では”大きく”なっているかもしれない。悪い意味では幻肢痛がおこる。でも痛みは治療できる。
6, pain is the only thing that our brain makes to protect us
(痛みとは脳が作り出す唯一の防御反応)
他にも我々の体を保護するために脳が作り出すものがたくさんある。
怪我をしたら、運動系、交感神経系、副交感神経系、内分泌系、免疫系も働き、我々の体を守る。その結果、呼吸や睡眠、気分、セックスの欲求などに影響する。つまり過去すべての事柄が、痛みと関係があるかもしれないということがわかった。
7, modern pain formula (DIMs and SIMs) (最新の痛みの治療)とプロテクトメーター
We will have pain when our brains "weigh the world" and "decide" that there is more danger to the body than safety. (周りの環境の中で、もし体に”安全”よりも”危険”が多くある場合に、我々は痛みを感じる)→DIMs
We will not have pain when our brains "weigh the world" and "decide" that there is more safety related to the body than danger. (周りの環境の中で、もし体に”危険”よりも”安全”が多くある場合は、我々は痛みを感じない)→SIMs
DIMs (Danger In Me 私の中の危険)
SIMs (Safety in Me 私の中の安全)
つまり痛みはDIMsとSIMsのバランスで現れる
(注)この「DIMs, SIMs(ディム・シム)は中国料理の飲茶を英語で「ディムサム」と発音するので、それを意識して、一般の人の印象に残りやすいネーミングをDavid Butlerはつけたようです。
★DIMsかSIMsかのテスト(もちろん答えは人それぞれ!)
1、医者が「あなたは大丈夫。治るよ!」と言う
2,借金の利子があがった
3,足首捻挫したあと腫れ上がった
4、旦那(嫁)がヨガのクラスに来ることになった
5,上司があなたの仕事の問題解決を手伝ってくれることになった
6.ペットが死んだ
痛みの治療はDIMsを減らし、SIMsを見つけることがキーポイント。なぜなら知識は最も強い薬よりもずっとずっといいと研究で証明されているから。(knowledge is far far far better outcomes than the most powerful drugs)
8, The things you say and the things you hear(多くの痛みの表現が比喩を使っている。◯◯のような☓☓のようなとか。)
ということは痛みの治療にもそう言えるのではないか?どんな比喩表現があるかを知り、そして言葉を選ぶことで、痛みの治療に役立つのではないか?
(以下はこういう痛みについてこういう表現、喩えは逆に痛みを増強するのではないか、という例。だからなるべく使わないでおこう!)
・simple, structural "equalising" metaphors(体の構造を何かの物に喩える比喩)
膝が錆びついたドアのつがいのようだ・・・
筋肉がカチコチに固まってしまったみたいだ・・・
腕にフジツボがくっついてているみたいだ・・・
・ontological metaphors (存在論的比喩)
もう体がバラバラになりそう・・・
なんか椎間板がボコってでてしまいそう・・・
痛みでだめになりそう・・・
・invasive metaphors (侵害的な比喩)
ナイフがそこにあるような痛み・・・
頭の中でハンマーがガンガン叩かれているような痛み・・・
・prognostic metaphors (前兆的な比喩)
もう年だから・・・
もうずっと痛みがそこにありそう・・・
首が痛いー!絶対レントゲンで何か見つかった!・・・
・Disembodiment metaphors (肉体と切り離されたかのような比喩)
もうこの痛い足を切り取ってしまいたい・・・
新しい腕に取り替えたい・・・
9, Example of metaphors offered back in therapy (痛みの治療に役立つ3つの例え)
★Motion is Lotion! (動くことで体に”油が”さされる)
★Be like カメレオン!(カメレオンのように我々の体は変わる!)
★When the music hits me, I feel no pain" by Bob Marley (音楽を感じている時、痛みを感じない)
10, Twin Peaks (2つの頂上モデル)
怪我の後、痛みの閾値が低くなるという話。DIMsとSIMsを使って上手く治療すること。(詳しくは71ナゲットに出てくるのでそれを参照して下さい。)
11, X-ray
腰部の”変形”は至って普通。老化の一つ。痛みの原因とは考えにくい。
12, Drag Cabinet in the brain (脳は薬がいっぱいつまった薬箱!)
脳は薬(セラトニン、モルフィン、エンケフェミンなどなど)がいっぱい詰まった薬箱のようなもので、その薬は副作用はないし、365日24時間いつでも使える!
★ではどうやってこの薬箱を開けるのか?→知識!
★SIMsが薬箱を開け、 DIMsが閉める!
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★痛みの治療に役立つ71個の情報集からいくつかを紹介(番号の飛び飛びはそういうことです)。
2,痛みは防御であり、攻撃ではない!
7,死ぬ直前まで脳細胞は作り出される!
10,思う事も信じる事でも神経を興奮させうる!
15、自分で治せる力があるんやで!
16,傷が完全に治る前に痛みはおさまることもある!
19,痛みを察知する神経終末はない!
21,酸化した組織
25,神経線維は電気コードとは違うで!
26,なかなか神経って圧迫されないもんだぜ!
27,腰がピキッとなっても損傷とは関係ない!
29,夜間時痛
33,快感と痛みの境目
35,ストレスと炎症浮腫
36,ライオンにストーカーされ続けていると?!
37,友人関係は風邪をひきにくくする
42,ホリデー中は爪がよく伸びるのはなぜ?
43,プラスティ-サイズ!
44,「何かに夢中になること」が鎮静剤になる!
47,ハグ・ドラッグ!
48,ゴッドハンドなんてない!辛抱強くやっていけばいずれは治る!
50,小さなことよりも、もっと大きなことを気付こう!
54,知識が鎮痛剤になる!
56,自分の抗炎症剤を作り出そう!
61,痛いかもしれないけど大丈夫!
62,痛みを避けられるのなら避けよう・・・でも痛くなっても怖がるな!
64,カメレオンのようになろう!
65,ずれてないって!てか、ずれへんぞ!
67,木のようにしなやかに生きていく
68,脊椎すべり症
69,踵骨棘
70、線維性筋痛症候群