ささやかな夕方②
第二話
(ヒロ)
薄く広がる雲に橙色のグラデーションが彩る空。
窓越しに見る風景に新鮮さを失ってきた頃。
ユリが俺の人生にスッと現れた。
おとなしそうな眼鏡の女の子で、カンナさんが連れてきたウクレレ教室の新しい生徒らしい。制服を着ているから同学年かもな。そんなことを思いつつ、いつも通り注文を受け取り、足早にそのテーブルを去る。
なんて特別なことはなかった。
二人が会話している時は決まってカンナさんが話して、彼女はただ穏やかな笑顔で聞いていた。その笑顔はとても明るく、性格が良さそうだなと好印象ではあったものの、それだけだ。
そのはずだったのに。
これから俺は彼女と恋に落ちる。
できるだけ人と関わらない。
それが俺のポリシーであり、
絶対守らなくてはならない生き方。
だから、彼女と関わってはいけない。
わかっていても、
結局俺は彼女を避けることができなかった。