#23 今更、MOROHA武道館レポート・ヒグチアイ
ヒグチアイ
何を続けるか。それは人それぞれ違う。
見えない未来を 言い訳にすんなよ
あてのない旅を始めたあの日に
誰の足跡もない場所へ行こうと決めた
未来の不安を無視できるほど自分に無頓着になれない。
ふとした瞬間、抱えたものを思い出す。
スーパーの帰り道、皿洗い中、祖父の病院で手を消毒する時。
急に足が重くなって、膝には力が入らなくなってくる。
口はあいて、上を見上げる。
私は何をしていて何に向かっているんだろう。
そんなとき思い出すのはMOROHA、amazarashi、竹原ピストル
「俺は俺のこと好きになりたかった」
初めてのアーティストライブはMOROHAだった。
マスク外して歩こうもんなら袋叩き時代、2022年2月11日。
東京駅に着いた頃はまだMOROHAも武道館に到着していないんじゃないかと思うほど早く着いてしまった。前日は雪が降っていた証拠が歩道に散らばっている。初めて見る東京駅。駅をバックに写真を撮る外国人さん。もう外国人さんを見ることにはなれてしまった。地下鉄を使うほど急いでいないから歩く。
初めて見る皇居周辺ではランナーばかり。
わからん鳥居、げき狭コンビニ、いわゆるキャリアウーマン?
どうやって開演時間まで時間を潰したか覚えていない。
グッズは買わなかった。
関西に出てくるきっかけ、要因、原因、言い訳となったNMB48のグッズもあまり買わないと中学2年生の時に決めていた。だから握手会にも行ったことはない。
武道館に入って思ったことは一つ。
火事くらい煙たい。
スモークを炊いていただけだが意味がわからずすごく驚いた。
開演まで残り5分のところでイヤホンから流れる曲がちょうど終わった。
実は家を出てここまで、ずっとMOROHAの全曲を聞いてきた。
3周目に入っていたのは覚えている。
イヤホンを取り冷静に辺りを見渡すと多くの人間。
小学生から50代女性。年齢様々。
とにかく嬉しかった。
私だけじゃないと確信できた。
そしてMOROHAが好きということは、
これは偏見だがあまり人生が上手くいっていない、辛い、頑張りどきの人達ということだ。偏見だと思っていたがこれは事実だと、のちにドキュメンタリーを見ると確認できた。転職中、仕事が辛い、そんな人のインタビュー。
ライブ後半のMCでアフロが放った言葉。
このとき、アフロも涙を流す。
無論、私も私の隣の男性も後ろの女性も。
あぁ、私は幸せだった。
みんなで泣けた。
そうか、私は私のファンになりたかったんだよな。
続けてアフロは
私たちを震え立たせてくれる人は自分を奮い立たせていた。
最後の曲は新曲「六文銭」
弦をかきむしるUKの演奏が続く中、
アフロが最後の力を振り絞るように叫んだ。
「ありがとうございました」
アフロが頭を下げると同時にSEが流れて客席、私への照明がついた。
少ししんみりしていた私は晴れたというより、クリアになった。
順に武道館を後にしていく客。
何かじっとしていられなかった私も足早に進む。
最寄りの地下鉄駅に向かう人が多い中、私は東京駅に向かう。
歩きながらカタカタ音がするのに気づいた。
周囲を見渡すが何もない。
まさかそれが私の口が震えて歯が音をたたていたことに気がつくのに3秒。
嘘みたいやなと自分のことながらに思った。
その時に携帯のメモに残したことがあった。
乙女丸出し。
2年経って私は私のファンに少しなれたかもしれない。
期待を込めてSNSはフォローしておこう程度かも。
みんな自分を愛せ。きゃっ♡
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