光の芸術家モネ 『連作の情景』巨匠はやっぱりすごかった件。
先日、1/31まで上野の森美術館で開催されていた印象派の展覧会『モネ 連作の情景』に行ってきた。
展示されている作品すべてがモネ、という贅沢かつ大胆な展覧会だったのだが、これが私の期待値を超えて、とてもとても良かったので今回noteにレビューすることにする。
以前の美術館レビューはこちら
発光する絵画。巨匠モネの『ヴェトゥイユの教会』
今回の美術館展では、モネの作品のみが飾られる展示形式になっていた。
正直、展覧会では多様な画家の絵を比べるからこそ、お気に入りの画家や好きな絵を見つけられるのではないかと思っていた。
2つの絵を比べて、「この画家は色遣いが素敵だな…」「こっちの画家はさっきの人と比べるとうんぬんかんぬん……」と、比較対象を作ることで、自分の”好き”をより深ぼれるようになる。
絵の教養や前提知識のない素人からすると、そちらの方が取っかかりやすい。
絵が描けない一般ピープルの私は美術館巡りを始めたとき、そうやってお気に入りの画家を探してきた。
だから正直、展覧会に行く前の私は「モネの絵だけで大丈夫かな……」と不安だったのだ。
モネの絵は今までに見たことがあるし、素晴らしい作品もあった。
けれど、作品すべて彼のものなら、作品の魅力に気が付かないんじゃないか?
何より、巨匠と呼ばれる彼の絵を「うーんあんまりと楽しめない」などと傲慢な考えになったらどうしよう……。
しかし、私の不安はどうやら杞憂だったようで、彼の絵は、とても鮮やかに私の心を射貫いてきた。
光の魔術師と言われるだけあり、とにかく絵が明るい。
明るいって、朗らかとかそういう意味ではなくて、絵が光を集めているのだ。
まるで、太陽光のように、絵そのものが発光しているように輝いていた。
特にお気に入りだったのが、『ヴェトゥイユの教会』
湖に浮かぶ教会の影、そして空の色。
空の色はそれほど明るくはないはずなのに、よく晴れた夕景色を簡単に想像してしまうのは何故だろう?
印象派で輪郭はぼやけているはずなのに、途端に絵に引き込まれて、景色が鮮明になる。
まるで映画の中にいるように、私の脳裏には色鮮やかなパリにいる錯覚。
心が震えるほど美しい。
連作に浮かぶ、モネの視点
モネは、同じ景色を時間や季節を変えて描いていた。
この"連作"と呼ばれる表現技法を使用することで、同じ景色でも違う顔を捉えようとしたのだ。
今回の『連作の情景』では、その連作作品をいくつか展示してくれている。
下記の作品はロンドンのウォータールー橋。
上から順に、曇りの日、夕暮れ、日没。
同じ景色であるはずなのに、時間が違うだけで受ける印象が全く違う。
工場の煙、橋の影、そして太陽の光。
なるほど、夕暮れの海は緑っぽくて、曇りの日の海は黒っぽい……と色に注目してみるのも面白い。
他にも、時間の経過や天候、季節といった条件によって同じ景色でも違う顔を持つ、という場所の多様性を楽しむのも良い。
今回の展覧会では、他にも『積みわらの連作』や『クルーズ渓谷』など、さまざまな連作を楽しむことができた。
もう、なんて贅沢なの!!開催してくれた、にしたんクリニック、第一生命グループの方々もう本当にありがとう!
心を奪われた作品たち
他にも、いくつか感情が動いた作品があるので、2つほど独断で抜粋したい。
ラ・マンヌポルト(エトルタ)
映画『燃ゆる女の肖像』を思い出す、荒れ狂う波際の岩石。
完全に映画を投影してしまい、もはや絵に移る2人の人は悲恋のマリアンヌとエロイーズにしか見えない。
ちなみに、このラマンヌポルトの崖を描くための画家の名スポットだったらしい。
しかし、ここまで崖に近づいて臨場感を描いた画家はモネだけだったそう。
芍薬
鮮やかな赤が美しい、芍薬の絵。
芍薬の花って、少し毒々しい赤が、怖い印象を覚えるのだけれど、鮮やかで優しいタッチで描かれているため、個人的には美しさと一緒に優しさも感じた。
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モネ 『連作の情景』は関東では1/31で展示は終了してしまったのだけれど、大阪では2/10~5/6まで開催されている。
ちなみに私は普段、絵を書かないただのアラサー看護師ピープルのため、色彩論理や構図については評価をするのが気が引ける。(絵が描けないからネ)
けれど、“絵が描けないから“という理由で美術館に行かないのは勿体ない。
今回の記事を通して、絵がわからない奴でもこんなに楽しめるものなんだな……ということを、美術館巡りにハードルの高さを感じている人たちへ届けられたらいいなと思う。