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妻の手料理
私は妻の手料理が大好きだ。
妻の味付けは私の舌にドンピシャに合わせてくれる。サッカーで例えるならば、ベッカムの正確で優しいクロスボールのようだ。
今日の夕飯のメインは和風ハンバーグ。
なめこの味噌汁に生ハムとアボカドのサラダも付いている。
美味そうだ。
思わずつまみ食いをしそうになる。
おっと危ない。
危うくオフサイドになるところだった。
みんながテーブルについたところで
試合開始のホイッスル。
「食材に感謝を込めていただきます」
妻からは
「野菜から食べた方が体にいいよ」
とアドバイスを受けている。私も日頃はそれを気をつけている。
しかし空腹な私に、
食欲をそそる香ばしい香りを解き放つハンバーグを見せてしまったのならば、そうはいかない。オフサイドに引っかからなかっただけでも良しとしよう。
ふっくらとしたハンバーグを箸で一口大に切る。
分厚いお肉の中に閉じ込められていた肉汁がドッっと流れ出してきた。深いコクと旨味成分の海に包まれたハンバーグを見て、私は口の中に現れた、溢れんばかりのヨダレを垂らさないよう細心の注意を払わなければならない。
さぁ頂くとしよう。
(カリッ…モグモグモグ…)
(ジュワ~。ゴクリ)
絶妙な焼き加減だ。
焼き目の付いたカリっとした外側に、中はふわりと柔らかい。ひとたび噛めばとろけていくお肉。その中から玉ねぎが現れ、旨味が口の中に広がっていく。
美味い…。
美味すぎる。
思わず茶碗を手に取り、ホカホカのご飯を
かきこんでしまう。抜群の相性。
これは1杯では足りない事は明白だ。
しかし、案ずる事はない。
それを知っている妻はお米をたくさん炊いてくれている。
次は横に添えられた大根おろしと一緒に頂く。
(カリッ…モグモグモグ。シャリシャリ。ゴクン)
思った通りだ。
これもまた最高に美味い。
さっぱりとした大根おろしは、ハンバーグの濃厚な味わいを引き立ててくれる。最高の組み合わせだ。
困った事に箸が止まらない。
子供たちの食事の手伝いを忘れ、
妻の手料理を堪能してしまっている。
すまない。
でも言い訳させてほしい。
美味すぎるのが悪いんだ。
いつも美味しい食事を
ありがとうございます。
ご馳走さまでした。