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【おうちで漬物・保存食】#33 「花梅」と呼ばれる真っ赤でかわいい、ビタミンCとクエン酸たっぷりのローゼルの花(萼と苞)を塩漬けとジャムにする

先週、伊勢原の直売所で初めて見る赤い作物が目に留まった。
「ローゼル」と書かれたその袋には、赤い蕾のようなドライフラワーのような可愛らしい小さなものがいっぱいに詰められている。

どんな味がするのだろう?何に使えば良いのかな、お茶とかジャムとかかしら、と思うと上に説明書きがあった。

好きでよく飲むローズヒップティーに似た感じの色だし、ビタミンCやクエン酸が豊富とあるのできっと酸っぱいだろう。美味しいかな…と想像していると、夫が「塩漬けって書いてあるよ」と指差す。確かにその文言も気になっていた。しかも「おにぎりの具材に」とある。それは気になる!試しにひと袋買ってみることにした。

実は「ローゼル」という名称にはうっすら覚えがあった。少し前にたまたまネットで見掛けたのだった。ハイビスカスティーの材料になるそうなのできっと南国の植物で、こちらでは手に入らないだろうと思っていた。なんと、いつも行く直売所に普通に並ぶものであったとは…!驚きである。この日伊勢原に来てよかった。

月に一度ほど行くこの直売所「あふり〜な」は、決して大きな店舗ではないけれど、神奈川県下の直売所の中では最も品揃えが個性的だ。他所では並ばない作物や加工品をいろいろ見掛ける。直売所の品揃えは二週間もすれば季節の変化と共に入れ替わる。それ故時々行きたくなるのだ。

帰りの車中でローゼルの用途について改めて調べ、少量ずつではあるがジャムと塩漬けにしてみることに。ひと袋にだいたい300gのローゼルが入っていた。果たして可食部はどれぐらいあるだろう。

ローゼルの中はこのように、外側の赤い花びらのような苞とその根元の萼、中の丸い子房部分に分けられ、緑色の子房は食べられないため予め除く必要がある。

綺麗ですねえ

直売所のポップの通り、洗ったローゼルの根元の固い部分を切り落とし、木製の小さなスプーンの柄で押し出してみると、中の子房がすぽっと取れる。

いちごみたい
こうして見ると可食部がほとんどないような…

子房から取り出した種にもたんぱく質や食物繊維等が含まれるため用途があるそうだが(炒ってコーヒーにするとか、挽いて粉状にしてお菓子に練り込むとか)、まずは塩漬けとジャムづくりを優先。
どんどん子房を除き、可食部の正味重量を量ると140gほどだった。つまり半分以上が種(子房)。もうひと袋買えば良かったかしらと思うが、ともかく先へ進む。

≪ローゼルの塩漬け≫

塩漬けはとても簡単。
可食部のうち100g相当を塩漬け用として保存袋に入れ、15%相当の塩を加えて袋を振ってなじませる。
塩の量は10~15%で漬けている方が多いようで、今回は梅干し作りでも安心な15%にしてみた。

塩は「天日海塩」を使いました

なじませたら空気を抜き、袋を閉じる。
15%ならおそらく常温でも大丈夫だとは思うが、初めてなので念のため冷蔵庫へ。

1~2日で塩がなじんで食べられるそうだが、3日めでまだ少しなじみが浅い感じがした。
こちらがその状態。食べてみると、浅漬け的にサクサクしたフレッシュな食感でこれはこれで美味しい。この状態も悪くないけれど、このまま更に4日ほど置いてみた。

1週間経った状態。塩がしっとりとなじみ、色も均一に落ち着いた。美味しそう!

粗めに刻んでごはんに混ぜ込み、おにぎりにしてみる。出て来た汁もちょっと入れるとより色が鮮やかになって美味しそうかも。なお、苞の部分はサクサクだが、萼のところは少しオクラに似た感じの粘り気がある。

できた!かわいい!

食べた感じは、梅干しというよりカリカリ梅や梅漬けの感じに近い。品種や形状が異なるのでもちろん梅とは異なる味だが、爽やかな酸味や歯ごたえが梅を思わせて確かに美味しいものだ。ごはんともよく合う。

元々は二十世紀初頭にブラジルに移民した人々がこの酸っぱくて赤い花を「花梅」と呼び、愛用したそうだ。わかるなと思う。熱帯のブラジルでは梅も育たない。様々な愛着を捨て、覚悟を持って移住した遠国で見つけた懐かしくて優しい色と酸味。人々は祖国に思いを馳せつつ、そばに置いて大事に育てたのではないだろうか。

うん、これは良い。
色も食感も良いのでちらし寿司にも使えるし、てまり寿司みたいにしてもきっとかわいい。ポテトサラダに混ぜても良さそうだし、工夫次第で用途は広がりそう。なんと言っても色が良い。食卓が華やかになり、気分も上がる。

続いてはジャム。こちらもいたって簡単だが、今回あることを試してみた。

≪ローゼルのジャム≫

砂糖の量は可食部とほぼ同量が目安だそうで、今回はごく少量で長期保存を目的としないため、ローゼルの苞と萼30gに対して粗糖を20gほど加えた。甘酸っぱさを活かすならこれぐらいでも十分美味しい。

「あること」というのは、子房を一緒に煮てみること。
ジャムを煮る際、種(子房)の部分を一緒に煮るとよりペクチンが出てとろみがつくとあるブログ記事で見た。
念のため子房部分に毒はないか確認すると、ローゼルに毒性は基本的にはないそうだ。
上述通り、挽いたり粉にしたりして使われる種にはいくらかシュウ酸が含まれるため多食はよくないが、毒性はない。安心。

という訳で、緑色の丸い子房を2つほど、お茶パックに入れて一緒に煮てみる。子房の見た目は丸くてかわいいが、オクラみたいな青っぽい匂いがし、手にまとわりつく結構な粘り気がある。確かにこれはとろみがつきそう。

火をつけてすぐに驚く。あっという間に苞が崩れて形がなくなっていくのだ。萼の部分は形状を保っているが、2分もするとほぼとろとろの液状に。

加熱してすぐでもうこの状態

あとは好みのとろみ加減まで煮詰めるだけ。少量なので今回はだいぶ早め、5分ぐらいで完成。とても簡単。

最後、火を止める直前に、色止めのために手持ちのシークワーサーを1個絞って入れてみた。色がちょっと鮮やかになる。
風味の上でも、柑橘はちょっと加えた方が爽やかで良いかも。

さてさてローゼルジャムのお味や風味、とろみについて。
甘酸っぱいラズベリーみたいな味は悪くないが、個人的には煮る際に子房は入れず、できれば萼も入れずに苞(花びらのような部分)だけでつくるのが最も美味しかったのではないかと思う。
やはりあのオクラを想像させるとろみと青っぽさがなんとなく気になった。次に作る機会があれば、苞だけで試してみたい。

甘酸っぱさがチョコレートやヨーグルトによく合います

初めてのローゼル、性質も大分わかったし、初めての風味がいろいろ楽しめてよかった。
また直売所で出会ったらぜひ買って、追加の塩漬けと花びらジャムをつくりたいと思う。

ひと袋でこれだけできました

そして種。なんとなくもったいなくて冷蔵庫にまだあるのだが、どうしようかな・・・。

やっぱりオクラみたい

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