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【おうちで漬物・保存食】#39 ボルシチにスープに煮物に炒め物、いろいろ使えて味が深まるロシア風のザワークラウト(発酵キャベツ、キャベツの漬物)
冬には煮込み料理に使うキャベツの漬物、ザワークラウトが欲しくなる。
と言っても驚くほど大きくて重たい市販の瓶詰のあれではない。元々そちらも好きで学生の頃からよく買っていたけれど、その後各国料理をつくるようになり、様々な国のレシピを調べるうちに、その一環として自分で仕込むようになった。
ザワークラウト、言い換えると発酵キャベツには世界各国で様々な漬け方がある。世界中で食べられるポピュラーな野菜だけに、使われ方も様々だ。キャベツを刻まず、芯だけくり抜いてその穴に発酵促進用の豆を詰め込み、どかんと丸ごと大きな容器に入れて漬けるギリシャのようなやり方もあれば(豪快な漬け方が韓国のキムチの仕込みを思わせる)、刻みキャベツを瓶にぐいぐい押し込み、少量の塩水を注いで重石をして漬けるおなじみのドイツ~アメリカ式もあり、今回はその中間のようなロシア式。刻んだキャベツを瓶に入れ、塩水に酢と砂糖を加えたマリネ液を注いで漬ける。塩だけで漬けるより味も良く、発酵も安定するので近年酢や砂糖を使うようになったらしい。日本の漬物と同じような経緯をたどっている。
初めての漬け方なので、今回は手持ちのキャベツを1/2個分だけ試しに仕込んでみた。刻んで漬ける方法は少量から漬けられるので気軽に試せる。
こちらは漬けて3~4日経った頃の画像。一般的な発酵漬けと共通で、仕込んで1~2日は軽く蓋をした状態で室内に置いて発酵を促し、その後密閉して冷蔵庫で緩やかに発酵させつつ保存する。発酵度合いの好みにもよるが、冷蔵庫で1~2ヶ月保存可。酸っぱくなったら日本の漬物と同様、加熱して食べた方が美味しいと思う。
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今回は重石を使わず、具材の上にラップをのせて空気が入るのを防ぎつつ、その上に漬け汁を少しかけて軽い重石代わりとした。もちろんラップの上から小さな皿等の重石をかけても良い。いずれにせよ、空気に触れると腐敗しやすくなるので常時マリネ液に浸っている状態に。
≪ロシア風キャベツの漬物≫つくりやすい分量
・キャベツ:やや小さめ1/2個(ざく切り~太めの千切り)
・にんじん:お好みで1/4~1/3本(千切り)
◆マリネ液
・熱湯:3カップ
・塩:大さじ2弱
・酢、砂糖:各小さじ2
1)マリネ液の材料を煮立て、冷ましておく。
2)キャベツとにんじんを刻み、熱湯消毒済みの瓶にぎっしり詰めて、上から冷ましたマリネ液を注ぐ。
3)全体がマリネ液に浸るよう、必要に応じて重石をする。具材が空気に直接触れないよう、ラップの上から重石をするとよい。
4)密閉せずに軽く蓋をして、夏なら1~2日、冬は2~3日常温に置いて発酵させてから食べる。その後は密閉して冷蔵庫保存。
主な用途は、もちろんソーセージに合わせたりホットドッグに使ったりしても良いし、私は主に煮込み料理に使っている。ボルシチにはザワークラウトが必須。これを入れないと味に深みが出ず、物足りない仕上がりになるのだ。
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この手の発酵漬けをつくる国にはそれを使った煮込み料理やスープ料理が必ずあり、具材兼味出しの役目をしている。ボルシチも典型的なそのひとつだと思う。キムチ鍋やスープを作る時と同様、発酵キャベツを汁ごと入れるとスープの味にぐっと深みが出、酸味と塩気も加わるので他に余分な味付けをする必要がない。この点で市販品よりも自宅で好みの頃合いに発酵させた自家製ザワークラウトの方が、煮込んだ際確実に美味しくなる。慣れると市販品では物足りなく感じるほど違う。
同じくこの発酵キャベツを使ったイタリア北部~スロヴェニア、クロアチア辺りで食べられる豆と野菜のスープ「ヨータ」(下記「ズリヴァンカ」と共に追って週末ごはんで記事化します)。
ヨータはフリウリ語でスープを指すそうで、それがそのままスロヴェニアに伝わったとされる。今回は京都「ピカポロンツァ」で食べたスープの味に寄せてスロヴェニア風にしてみた。とても美味しくできて大満足!これも自家製ザワークラウトがスープの味を決めてくれる。
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また、スロヴェニアのそば粉タルト「ズリヴァンカ」の付け合わせにもこの自家製ザワークラウトを軽く煮て添えた。ズリヴァンカは乳製品たっぷりでこってりしているが塩気は淡いので、この組み合わせは非常に良い。
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こんな感じで、あるとあっという間にひと瓶使い切ってしまう。
私はこんがり焼いたトーストにのせるのも好きだし(スライスチーズをのせて焼いてもよい)、軽く炒めて茹で豚に添えたりしても美味しい。キムチと同じように、旨味と塩気を補ってくれる野菜漬と考えれば用途はいくらでも広がる。特に加熱して使うと身体が中から温まり、整腸作用にも非常に優れている。
今回の漬け方は漬け汁も含めて調理用に便利なので、以後ザワークラウトは専らこの漬け方になるかも。にんじんは手持ちがなければ入れなくても良いようだが、今回つくった料理にはいずれもにんじんが入るので、入れて漬けておくと便利かなと思う。
この冬はキャベツが高騰と言われたけれど、キャベツの産地である神奈川のスーパーではそれほどの値上げ感はなかった。逆に遠方の四国や九州から運ばれる茄子やトマト等の値上げは著しく、そう易々と手を出せない価格に…。正しく流通その他のコストが乗った結果と考えれば当然ではあるのだが、人々の買い物スタイルにも影響が出ていることだろう。
神奈川ではそろそろ春キャベツが出始める時期。甘く柔らかい春キャベツも楽しみだが、全国的な価格も落ち着いてくれると良いなと思う。