山盛りの「舟形マッシュルーム」天ぷらにカリカリのだだちゃ春巻き、山形の郷土料理と郷土野菜が揃う使い勝手良い居酒屋「山形田」
先週末は山形を訪れた。
主目的はWリーグ観戦だが、数年ぶりに山形をゆっくり味わいたくて旅程を組んだため、発見の多い楽しい旅だった。
晩秋の東北をドライブするのも随分久々で、そうそうこの時期こんな風に紅葉するのよね、と学生時代に友達の車でよくドライブしたことを懐かしく思い出した。同じ日本海側で接する山形はやはり気候や植生が似ているからか、昔秋田で見ていた景色とよく似た印象を受ける。冷たく澄んだ空気の匂いや質感、肌に触れる感じも似ている。
試合観戦以外の目的は主に山形の野菜や乾物の販売状況確認。特にこの11月は山形の代表的漬物野菜「青菜(せいさい)」が出始める時期。スーパーや道の駅等、身近な店舗で青菜がどれだけ売られ、簡単に手に入るかを知りたかったし、それ以外にもこの時期の作物や食べ物が知りたくて、2日目は県内各地を回る旅程にした。それについてはまた別途書くとして、今回は1日目の夕食のお話。
山形へ行く際はいつも郷土料理が食べられる居酒屋を事前に予約しておくが、これまで気に入って何度か通った店が数年前に閉店し、今回は新規開拓。山形駅西口徒歩3分程の官民複合商業施設「霞城セントラル」1階の「山形田」さんを訪れた。土曜日の18時で店内はほぼ満席。予約しないと入れないと言ってよさそうだ。
メニューは豊富で、ネットで確認できる通年のグランドメニューの他、月ごとのおすすめやフェアメニューも設けられ多彩。地のものが食べられるのは旅行者にはいちばんのご馳走。特に野菜料理が多いのが嬉しく、頬が緩む。
お通しは小松菜の煮物。シャキシャキした食感を残した小松菜が美味で、一緒に煮られたさつま揚げも懐かしい。こういうの実家でも食べてたな、と思い出す。
最初に注文を決めたのは「山形名物五品盛り(税込み890円)」。左上からしそ巻き、だし豆腐、玉こんにゃく煮、菊(おそらく「もってのほか」)の酢の物、茹でだだちゃ豆。
代表的な郷土料理や食材、山形県人が好きなものがひと通り揃う嬉しいひと皿である。
やはり食べたい「あけび肉詰め(680円)」。私が取り寄せたあけびと比べてかなり小ぶりでくせも薄く、味付けも上品。苦いあけびが苦手な方でも食べられそうだが、個人的にはもっと皮が厚くて苦い方があけびらしくて好き。
揚げ物が食べたくて「だだちゃ豆の春巻き(580円)」、「舟形マッシュルームの天ぷら(750円)」。春巻きはかなりしっかりこんがり揚がっているのが、ぎっしり詰まった中のだだちゃ豆の甘さやこくとぴったりで大変美味しい。酢をやや多めにかけると味がより引き立つ。これは是非家でも真似したい。
意外なほどの山盛りに驚くと同時に嬉しくなったマッシュルーム天。マッシュルームの天ぷらは油に長居させると水分が出てべしゃっとするし、油もはねるので慣れないと衣のつけ方や揚げ加減が難しい。故に私は天ぷらよりもフライにすることが多いのだが、さすがプロ。表面はあくまでサクッ、齧るとジュワッと美味しい汁が出て来るベストな揚げ加減。食べでもあって非常に満足感の高いひと皿、美味しかった。胡椒がよく合う。
なお、「舟形マッシュルーム」はこの時が初見だったが、翌朝ホテルの朝食でもオムレツの具で登場。近年推される山形の新名物のようだ。特徴は舟形町の清らかな雪解け水で育てたえぐみのなさ、甘みと旨味だそうで、確かにえぐみは全く感じず、濁りのない優しい味わい。サラダで生食しても美味しそうだし、シチュー等に丸ごと入れて煮込んでもきっと抜群に美味しいだろう。
さらに「六田麩と野菜の揚げ出し(750円)」、「山形牛串ステーキ(1,600円)」まで食べて大満足。六田麩はさくらんぼでおなじみの東根市の名産だそう。しっかりした食感で食べでがあり、ヴェジタリアンやヴィーガンの方向けのメイン食材としても良さそう。
山形牛は・・・もう言うことなしである。部位によりとろける脂も、しっかりした食感も両方味わえ、食べやすいサイズも良い感じ。
ひと通り堪能して感じたことは、山形は県産食材のブランディングに熱心かつ積極的であるということ。県内各地の名産に地名や由来のある名をつけ、県をあげて売り出すことで、旅行者や他県の方からの新たな関心が働く。これまであまり聞いたことのない名というのもまた訴求力がありそうだ。
今年は日本各地の郷土料理について調べる機会が多く、その中で思ったのは郷土料理もまた一つのブランディングであるということ。
どこの県にもありそうな日常的な一品や、料理とも言えないような簡単な調理法でも、地元食材ならではの特徴や他との違いを見出し、郷土の味として伝え残そうとする価値発見或いは創造、すなわちブランディング。
そうした取り組みに積極的な県とそうでもない県があり、我が郷土秋田県はどうもその手のことが得手ではない。郷土の味は確実にあるのに、それを商売、観光資源にはして来なかった。外に対して見栄を張りたがる県民気質も影響していると思うし、米と酒、比内地鶏の三品が強力だったためもあるだろう。秋田で郷土料理店を探すと大概はきりたんぽ、稲庭うどん、比内地鶏と「ハレ」要素、よそ行きスタイルに偏りがちで、家庭で当たり前に食べられる美味しいものが味わえる店はなかなかない。もっと日常的で食べ飽きない、家庭的な郷土料理を出す店が増えれば良いのにと随分前から思っている。
そんな訳で、そうした取り組みが大得意な山形での発見についてはまた別記事で。