八食センターの赤いおにぎり、「杏の梅漬け」の漬け汁(杏酢)の使途の謎
帰省から戻った先週は秋田・青森の「(杏の)梅漬け」のことばかり考えて発想まですっかりそちらへ傾いてしまい、その中でふと思い出したことがあった。青森で見つけた「赤いおにぎり」。
確か西日本でも似たものに一度出会った気がするのだが、どこでだったか思い出せない。岡山或いは広島、もしかしたら福岡だった気がするが、どうにも資料が見つからず残念。
おにぎりに梅干しを入れる場合、私は白米でにぎって海苔を巻くことが最も多い。カリカリ梅なら刻んで白ごまやじゃこ、青じそ等と一緒にごはんに混ぜ込むし、海苔の代わりにとろろ昆布をまぶすのも好きだが、いずれの場合もごはんは白米で、米自体に色や味は加えない。
しかし八戸の八食センターで出会ったおにぎりはそうではなかった。
いかにも素朴な手握りで、ラップに巻かれた大きめおにぎり、具材のシールもラフな感じ。
店舗の環境や雰囲気にもよるが、私は三角プラケース入りの型詰めタイプよりも、人の手でむすんだと見てわかるタイプの方が断然好きだ。同センター内にはお洒落なおにぎり専門店もあるのだが、購入したのはそうではない方。食べてみたくて二つほど買った。
それがこちら。
そう、ごはんが赤いのである。
「梅干」と書かれた方のごはんが赤く染まっている(私が筋子好きなのでつい筋子を手前に置いてしまっているが)。
このルックスが斬新で、この色は赤梅酢かしらと思いつつ、どうしても看過できずに買った。後から考えれば並べて売られていた白いごはんの梅おにぎりも一緒に買えばよかったのだが、その時はとにかくこの赤さに目を奪われ、考えが及ばなかった。
しかも時間がなくて焦っていたのか、写真もこれ一枚しか撮っていない。確か「梅干」の中身は梅干しではなく、赤いカリカリ小梅だったように記憶している。その意味でもやはり白い梅おにぎりも併せて買って違いを確かめるべきだった。反省。
ちなみにこの時のお店は「うえたいら肉店」さんだったようだ。精肉各種以外にも唐揚げやコロッケ、お弁当やおにぎり等幅広く売られていて、つい何か買いたくなって引き寄せられてしまう美味しいお店。また八戸へ行く際には立ち寄りたい。
さて、この赤いおにぎりを今なぜ思い出したかと言うと、杏の梅漬けについて考え続ける中、「この梅漬け(杏漬け)の梅酢って…」とはたと疑問に思ったからである。
酸味の強い梅を使って梅干しや梅漬けを漬ける場合、赤紫蘇は入れても入れなくても美味しく仕上がる。梅の品種にもよるが私は梅干しは赤紫蘇なしの白干しの方が好きで、今年も白干しの方を多くつくった。特に好きな品種の場合は白干しの方が梅本来の風味がとてもよくわかる。
とは言え、杏寄りの品種(豊後梅や節田梅、おうみ梅等、主に東北で散見される巨大梅品種)や完全な杏(八助梅またはなにわ梅等)を使って漬ける場合、純粋な梅よりも酸味や香りにやや劣るため、それらを補う意味でも赤紫蘇を加えた方が美味しく漬かる。
それ故,青森〜秋田における杏を使った「梅漬け」は皆赤紫蘇が使われ、実も漬け汁も赤い。つまり大量に杏の赤梅酢が発生する訳で、この使途は?とふと疑問に思ったのだ。
梅干しの場合、天日干しをする際に梅酢から梅を引き上げるため、梅干しと梅酢はこの時点で分離され、販売時も梅干しと梅酢のそれぞれが単体で販売されるのが一般的だ。
だが、干し工程のない梅漬けの場合(塩漬けして2~3日で干す地方もあるようだが秋田ではあまり聞かない)、梅と梅酢は共に漬けた状態で保存される場合が多いと思う。市販の梅漬けも、例外はあるものの、基本的には漬け汁に浸った状態で売られている。
この場合、梅漬けの漬け汁=梅酢はいつから使われるのだろう?梅漬けを食べ終えた後で残り汁を使う(若しくは捨てられる)のか、或いは、梅漬けの量が減って来たあたりで余剰の液を瓶等に移し、梅干しの梅酢と同じように漬物用の漬け汁や調味料として使うのだろうか。
そして純粋な梅の梅酢よりも甘味を含んだ杏の梅酢(正確には杏酢)は、主にどのように使われているのだろうか。
今では梅干しの副産物のような扱いの梅酢だが、奈良時代に日本に梅が伝わった時点では梅酢が主目的で、梅干しが副産物だったと言われている。
調味料の少なかった昔ならそうかも…とつい食いしん坊の私は思ったが、当時の梅酢は調味料ではなく消毒薬や、なんと青銅器や鉄器のさび止め、メッキ処理にも広く使われていたそうだ。東大寺の大仏さんも金メッキの前に梅酢がたっぷり塗られていた(梅酢洗いをされていた)訳で、いったいそのためにどれだけの梅が必要だったのか、考えると気が遠くなりそうな一方で、あの巨大な大仏さんに恰も日焼けオイルが如く何人もの職人から梅酢が塗られているさまを想像するとなんとなく可愛らしい。だから今でも奈良は梅の名所なのかしら、なんて考えてしまう。ちなみに梅干しの方は黒焼きにして解熱剤や胃腸薬等の漢方薬として使われていた。
でもそれも「梅」の話である。
杏の「梅漬け」をつくる家庭や企業では、その漬け汁をどう使っているのだろう?やっぱりごはんに混ぜ込むのが一番手軽で美味しいのかな、なんて考えていて思って冒頭の赤い梅おにぎりを思い出したという訳で、もしも青森〜秋田にお住まい、若しくはご縁があってその使途をご存知の方がおられましたら、是非コメント等で情報をお寄せいただけるとたいへん嬉しいです。
現時点でヒントが皆無なのでこの後もほんのり探り続けるつもりでいるが、やっぱり秋田だと寒天或いは漬け物の漬け汁とかなのかなあ…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?