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閑話休題「介護施設の食事風景」

お年寄り向けの介護施設にも色々なタイプがありますし、施設の構造も様々です。

厨房と食堂が離れた場所にあり、それぞれ完全に独立した作りになっている施設もあれば、カウンター越しにお年寄りと話しをしながら料理を作れる構造になっている施設もあります。

私はどちらのパターンでも働いたことがありますが、個人的には厨房からお年寄りの様子が窺える構造になっている方が好きです。

以前お世話になった小規模な施設での話しです。

そこは2階建ての小さな施設で、入居者は全員あわせて30名に届かない規模でした。

施設内に食堂が二つありましたが、そのうちの一つは厨房のすぐ目の前にあって、カウンター越しの食堂でお年寄りの食事風景を見ることが出来ました。

食事の準備が整うと、担当の介護士さんが皆を呼びに行ったり連れてきたりするのですが、その中の1人に認知症の方がいらっしゃいました。

この方、80過ぎくらいの大柄な女性だったのですが、とにかくよく食べる人でした。

食事に関しては介助も不要で、自分でパクパク食べることが出来、しかも早食いでした。

ある日のこと、この認知症の女性(Aさん)の隣の席におとなしくて食べるのが遅いBさんが座ってゆっくりと食事を食べ始めました。

ちなみにBさんは認知症ではありません。

私は仕事をしながら見るともなしにそちらの様子が視界に入っていたのですが、何となくAさんの体の向きが気になって顔を上げてAさんの方を見ました。

そしたら何と、Aさんが隣のBさんの食事に手を伸ばして食べています。

おとなしいBさんはあっけに取られて何も言えず、黙って固まってしまっていました。

当然すぐに介護士さんに知らせたのですが、可哀想にBさんの食事は見るも無惨に荒らされた後でした。

こんな事もありました。

Nさんという上品な女性の方で、いつもニコニコ笑顔を絶やさない素敵なお婆さんでした。ただ、認知症が徐々に進んでいて我々もそれは承知していました。

あるとき私が配膳のお手伝いをしていた所、Nさんに呼び止められて「ジュースを頂戴」と言われてしまいました。

その施設ではソフトドリンクに関しては飲み放題になっていて、自分でマシーンまで汲みに行くかスタッフに頼むしくみになっていました。

それで私が頼まれたのですが、Nさんの目の前にはすでにジュースを飲んだ後のコップが3つものっていました。

私は「おや?」と思ってNさんに「これで4杯目ですけど大丈夫ですか?」とお聞きしたところ、にっこり笑って「何言ってるの。1杯目よ。」とご機嫌な感じで言われてしまいました。勿論認知症のせいでそうなっているのですが、仕方ないので4杯目のジュースを持って行ったという話しです。ただ、これだけジュースを飲んでいても食事は完食していたので、別腹がちゃんとあったのかもしれませんね。

このNさんにまつわるエピソードは他にも色々あるのですが、それはまた別の機会に。

*JEUGIAカルチャーセンター堺タカシマヤ教室
「介護の為の簡単な料理術」はこちら
https://culture.jeugia.co.jp/lesson_detail_65-57188.html

*アゼリアカルチャーカレッジ
健康長寿食を作ろう」講座はこちら


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中嶋洋二郎
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