【詩】電車のなかで
何も知らなかった頃
誰もが全てを知りたがった
電車に乗れば
それはもう冒険で
これから待ち受ける未知が
楽しみでしかたなかった
高速で通り過ぎる窓の外
動いてないのに動いている不思議
周りに座っている知らない人の奇妙
不定期に止まったり動いたりする意味
喋っている人がいないのに聞こえてくる声
いつ来るのか分からない終わり
全てが疑問で、
全てを知りたがった
なんで?どうして?これはなに?
声をあげると優しくパパは注意する
「静かに」
目に映る全ての疑問に
僕は沈黙しなければならなかった
そうするうちに僕は
全てを知りたがらなくなった
体も脳も大きくなったけど
僕の視界は小さくなった
少し物知りになった代わりに
分からないことに興味がなくなった
できることが増えたせいで
無邪気に人を愛せなくなった
そういうものだと
諦めるには
惜しいくらいに
あの頃は魅力的で
君たちは天使のようだ
毎年、死神との距離は
狭くなっているというのに
まだ諦めがつかないようだ
全てを諦めたつもりでいたのに
まだ僕は全てを知りたがっている
電車で静かにできるようにはなったが
まだこうしてペンを動かしている