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【詩】約束

「そういえば、大人になると約束ってしなくなるよね。」

まだ小さかったころ、僕たちは魔法が使えた
それは弱くて強い魔法だった

もっとも弱い力の指どうしを結ぶだけの弱さ
一緒に守らなければ破れてしまうような弱さ
純粋さがもつ「うん!」と言いたくなる強さ
心の中で手を繋いでくれるような優しい強さ

「あしたもあそぼうな」
「ぜったいに内緒だよ」
「一生、一緒にいよう」

魔法はだんだんと効力を失っていく

大きくなると、代わりに呪文を使うようになる
強くて弱い呪文である

心の中で鎖に繋がれているような寂しい強さ
不純さがもつ「はい。」としか言えない強さ
一方が破ればただ消えてなくなるだけの弱さ
もっとも強い力で手どうしを握るだけの弱さ

「結果に応じての報酬」
「違反した場合の罰則」
「常識の範囲での自由」

呪文はだんだんと呪縛になっていく

なぜ僕たちは魔法を使えなくなるのだろうか
魔法を守ることができなくなるからか
魔法を信じることができなくなるからか
果たして本当にそうなのだろうか

僕たちは本当に魔法を使えなくなったのだろうか
小さく純粋な魔法使いに魔法をかけられたとき
僕らは必死に魔法を守ろうとするのではないか
僕らは簡単にその魔法を信じるのではないか

もしもまだ魔法が使えるとしたら
誰にどんな魔法をかけるだろうか
自分にはどんな魔法をかけるだろうか

「もう一度、魔法を信じて守ってみようか。」




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