知っておきたい!認知症の種類と特徴、そして対処法
僕は介護歴10年の介護士なおたろうです。
10年間介護職として勤めてきて色々なタイプの認知症の方と出会ってきました。同じタイプの認知症患者さんでも特徴は様々、そして対応も一人一人違います。
認知症にはいくつかの種類があり、それぞれに異なる原因や症状があります。今回は、代表的な認知症の種類と特徴、それぞれの対処法について詳しく解説します。
認知症の種類と特徴
1. アルツハイマー型認知症
特徴
日本で最も多い認知症で、全体の約70%を占めています。脳の神経細胞が徐々に死滅し、脳が萎縮していくことで記憶や認知機能が低下します。初期には物忘れが目立ちますが、進行すると判断力の低下、日常生活での混乱などが現れます。
原因
アミロイドβというタンパク質が脳内に異常に蓄積し、神経細胞にダメージを与えることが原因とされています。
対処法
完全な治療法はまだありませんが、早期診断と薬物治療により症状の進行を遅らせることが可能です。リハビリテーションや認知機能訓練も有効です。
2. 脳血管性認知症
特徴
脳の血管が詰まることや出血による脳のダメージが原因で発症します。アルツハイマー型認知症と異なり、発症は突然で、階段状に症状が進行します。物忘れだけでなく、感情のコントロールが難しくなったり、運動障害が現れることがあります。
原因
脳卒中や脳梗塞、高血圧などが主な原因です。
対処法
血圧や血糖値の管理、動脈硬化の予防が重要です。また、早期にリハビリを始めることで、認知機能の低下を遅らせることができます。
3. レビー小体型認知症
特徴
アルツハイマー型に次いで多い認知症で、脳内にレビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することで発症します。記憶障害に加え、幻視(実際には存在しないものを見る)やパーキンソン症状(筋肉の硬直や震え)が特徴的です。症状が日によって変動することも多くあります。
原因
レビー小体というタンパク質の異常な蓄積が神経細胞に影響を与えることが原因とされています。
対処法
幻視やパーキンソン症状に対する薬物治療が効果的です。生活環境の調整やリハビリテーションも有効です。
4. 前頭側頭型認知症
特徴
言語能力や感情のコントロールが主に影響を受ける認知症です。性格の変化や衝動的な行動が見られることが多く、他人への配慮がなくなる場合があります。初期には物忘れが目立たないため、見逃されやすいです。
原因
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することによって発症します。
対処法
薬物療法は効果が限られているため、環境調整や家族のサポートが重要です。感情のコントロールを促すプログラムも役立ちます。
日本で最も多い認知症
日本で最も多い認知症はアルツハイマー型認知症です。全体の約70%を占め、高齢化が進む日本ではその割合がさらに増加すると予想されています。発症リスクは加齢とともに高くなり、特に85歳以上の高齢者に多く見られます。
認知症の対処法
認知症の治療法は進行を完全に止めるものではありませんが、適切な対処法により症状の進行を遅らせ、QOL(生活の質)を向上させることができます。
1. 薬物療法
アルツハイマー型認知症に対しては、進行を遅らせるための薬物治療が用いられます。例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)は、神経伝達物質の働きを促進し、認知機能を維持します。
2. 非薬物療法
認知機能訓練やリハビリテーションは、認知症の進行を緩和し、患者の自立をサポートするために重要です。日常生活でのルーティンを保つことも、混乱を減らすのに役立ちます。
音楽療法やアロマセラピーなど、リラクゼーションを促すケアも有効です。
3. 家族のサポート
認知症は患者本人だけでなく、家族の負担も大きいため、介護者に対するサポートも重要です。介護者向けの情報提供や相談機関の活用が推奨されています。
4. 環境調整
認知症の症状に応じて、住環境を安全でシンプルなものにすることが効果的です。視覚的な刺激を減らし、必要なものをわかりやすく配置することで、混乱や不安を軽減できます。
まとめ
認知症にはアルツハイマー型や血管性認知症など様々な種類があり、それぞれに異なる特徴と対処法があります。早期発見と適切な対処によって、症状の進行を遅らせ、より質の高い生活を維持することが可能です。
認知症には「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」と呼ばれる2つのタイプの症状があります。中核症状は認知症の直接的な脳の機能低下によって起こる基本的な症状です。一方、周辺症状はその人の環境や生活状況、性格などに影響されて現れる症状で、行動や精神面に現れます。
ここでは、各認知症に共通して見られる中核症状と、特徴的な問題行動(周辺症状)を紹介します。
アルツハイマー型認知症の中核症状
記憶障害
新しいことを覚えられなくなり、最近の出来事を忘れやすくなります。過去の記憶も次第に失われていきます。しかし、比較的長期記憶は忘れません。自分の子供の頃の記憶や、自分の子供の名前、子供が何人いるか、旦那さんとの馴れ初めなどは大体の利用者さんが覚えています。
見当識障害
時間や場所、人の名前がわからなくなります。自分がどこにいるのか、今日が何日なのかが分からなくなることが多いです。
僕たちは4月と聞いたら今は春だな、8月と聞いたから今は夏だなと分かりますが、認知症になると季節もわからなくなります。また、利用者さんに僕の名前を覚えてもらうことは難しく顔で覚えてもらうことが多いです。短期記憶がない方は毎日初めましてと挨拶されます。
判断力の低下
物事を計画したり、複雑な問題を解決する能力が低下します。日常生活でも段取りをうまく取れなくなります。また、危険認識も低くなり明日が痛いからこのまま杖を使わず歩いたら転倒するかもと考えることができず、ベットから落ちたり、転倒したりします。職員が予測できない行動を取られるので驚かされることがあります。
実行機能障害
順序だてて行動する能力が低下し、日常の作業を遂行することが難しくなります。
周辺症状(問題行動)
徘徊
自分がどこにいるのかわからなくなり、外に出て歩き回ることがあります。夜間に廊下を歩き回ったり、自分が何をしたいのかわからなくなってしまいます。
妄想・幻覚
他人が自分の物を盗んだといった誤解や、存在しない人や物が見えることがあります。どういうことがきっかけかは分かりませんが、1人の職員に対し、「あなた私の財布を盗んだでしょう、靴も持っていってしまって、返して!」といつも興奮されているお婆さんがいました。他の職員に対してそのような発言は見られませんでしたが、1人の職員に対してはずっと言い続けていました。もちろんその職員も盗んでいませんし、そもそも財布は家から持ってきていないので取りようがありません。しかし、彼女の中では財布は持ってきており、盗まれたというのが事実なのです。それを、否定してはいけません。
抑うつ・不安
気分が落ち込んだり、不安が強くなったりします。認知症患者さんは認知症だからなにもわからないんでしょ?と思われる方もいらっしゃると思いますが、自分がわからなくなっていることは感じています。だからこそ、わからないことが不安になります。家への帰り方がわからない。自分がなぜここにいるのかわからない。
だから不安になって周辺症状がでます。周辺症状が起きたら必ずどうしてそのような行動をとるのか原因を考えると良いでしょう。
昼夜逆転
夜に寝られず、日中に眠くなることがあります。これは、あるあるで、昼間に寝てしまいご飯が食べれなかったりするのでなるべく日中に起こして夜に寝る習慣をつけたいのですが、難しいです。その場合、眠前薬で眠りにつきやすい薬を処方してもらったりして対処します。夜間に活発になって大声を出したり他の利用者さんの部屋に入ってしまったりする利用者さんもいましたので他の利用者さんから苦情がくることしばしばあります。
血管性認知症の中核症状
記憶障害
アルツハイマー型ほど重くない場合もありますが、物忘れが見られます。
感情失禁
急に笑ったり泣いたりするなど、感情のコントロールが難しくなります。会話をしていても悲しくなるようなことを言っていないのに涙を流したり、かと思えばすぐ大声で笑ったりします。
運動障害
歩行が不安定になったり、麻痺やろれつが回らなくなることがあります。脳梗塞が起きると血管が詰まるのでどこかに麻痺が残ることが多いです。
集中力・注意力の低下
一つのことに集中するのが難しくなり、注意散漫になります。
周辺症状(問題行動)
情緒不安定
感情の浮き沈みが激しくなり、突然怒り出したりすることがあります。この時の感情は自分でコントロールできるものではないので大丈夫だよなど安心できる声かけをすると良いでしょう。
無気力・無関心
何事にも興味を持たず、無気力になりがちです。できるだけぼーっとしている時間を無くしたいので僕は、塗り絵や計算問題をやってもらおうと声をかけていますが、やりたくないと言われる方も多いです。
興奮・攻撃性
突然怒り出したり、他人に対して攻撃的な言動を見せることがあります。他の利用者さんや職員に対して物を投げたり、暴言を吐いたりされることもあります。そういう時は興奮がおさまるまで時間を置きます。
レビー小体型認知症の中核症状
幻視
実際には存在しない人物や動物が見えることがあります。具体的で鮮明な幻視が特徴です。
パーキンソン症状
筋肉の硬直や震え、動作の遅れ、歩行困難といった運動障害が見られます。
パーキンソン症状の原因は脳の神経が原因でドーパミンが正常に分泌されないことが原因です。歩く時に前にツンのめるように歩くので躓きやすくなります。アドバイスとして腕を大きく振って足を上げて歩行することを意識してもらうといいです。
認知機能の変動
ある日は比較的正常に見えても、別の日には認知機能が著しく低下するなど、日によって認知機能が大きく変動します。1日の中でも波はあり、朝は認知症の症状がなかったけど夜になると症状が出てきたということもあります。
REM睡眠行動障害
睡眠中に激しい夢を見て体を動かしたり、暴れたりすることがあります。
周辺症状(問題行動)
幻聴・幻臭
幻視に加えて、聞こえない声が聞こえたり、匂わないものが匂うと感じることがあります。
妄想
他人が自分を傷つけようとしているなど、あり得ないことを信じ込むことがあります。
抑うつ・無気力
抑うつや不安が見られ、意欲が低下します。
前頭側頭型認知症の中核症状
人格変化
性格が大きく変わり、社会的なルールやマナーに対する意識が低下します。例えば、急に他人に対して無礼な態度を取ったり、衝動的な行動を取ることがあります。
行動障害
突然、特定の物に執着したり、同じ行動を繰り返すなど、行動パターンが極端に変わります。
言語障害
言葉が出にくくなったり、会話の理解が難しくなるなど、言語機能に障害が出ることがあります。
周辺症状(問題行動)
無頓着
身だしなみに無頓着になったり、食事や排泄に対しても配慮が欠けることがあります。
社会的行動の問題
他人に対する共感が薄れ、不適切な行動を取ることが多くなります。例えば、公共の場で突然怒鳴ったり、物を壊したりすることがあります。
過食や異食
極端に食欲が増し、同じものばかり食べたり、食べ物ではないものを口にすることもあります。
認知症患者と接するときは、相手の気持ちを尊重しながら、症状に配慮した接し方が重要です。以下の注意点を踏まえると、認知症患者とのコミュニケーションがスムーズになります。
1. ゆっくりと落ち着いた口調で話す
認知症の方は情報を処理するのに時間がかかる場合があります。早口や急な話の展開は混乱を招きやすいため、ゆっくり、簡潔に話しましょう。また、相手が返答に時間をかけても急かさず、待つ姿勢が大切です。
2. 目線を合わせ、笑顔で接する
認知症の方とのコミュニケーションでは、視覚的な安心感が大きな役割を果たします。目線を合わせ、優しい表情や笑顔で接することで、相手は安心感を覚えます。特に不安や混乱している時には、穏やかな態度が大切です。
3. 繰り返しを恐れない
同じ質問を何度もされることがよくありますが、いら立たずに何度でも丁寧に答えましょう。認知症の方は過去のことをすぐに忘れることがあるため、繰り返しが必要です。
4. 指示はシンプルに
複雑な指示や多くの情報を一度に伝えると混乱させてしまいます。例えば、「服を着替えてから、靴を履いてください」というよりも、「まず、服を着替えましょう」のように、一つ一つのステップをシンプルに伝えることが大切です。また、質問するときも「はい」か「いいえ」で答えられる質問、または選択肢を2つ出して一つ選んでもらえるような質問をしましょう。食べ物で何が好きですか?と聞くのではなく、肉と魚はどちらがすきですか?やお肉は好きですか?というような質問の仕方をしましょう。
5. 否定しない
認知症の方が間違ったことや現実と異なることを言っても、すぐに否定するのは避けましょう。例えば、過去の出来事を話している場合、「そんなことはなかった」と否定するより、「そうだったんですね」と受け入れる姿勢を見せることで、相手の安心感を高めることができます。本人の中ではそれが事実なので、僕からしたら事実が間違っていても本人は嘘をついているつもりもありません。他人から自分を否定されると僕達でも嫌な気持ちになるのは同じなので否定はしてはいけません。まずは、肯定して話を聞いてあげましょう。
6. 安心できる環境を作る
認知症の方にとって、環境の変化や新しい場所は不安を引き起こすことがあります。できる限り慣れ親しんだ環境を保ち、日常生活においてルーティンを守ることが大切です。また、周囲の騒音や過度な刺激を避け、静かで落ち着いた場所を提供することも効果的です。家ではずっと畳に布団を敷いて寝ていたという利用者さんで夜なかなか寝れない方に対して部屋に畳と布団をひいて対応することもあります。慣れた環境の方が安心されます。
7. 身体的接触で安心感を与える
軽く手を握る、肩に手を置くなど、優しい身体的接触は、言葉以上に安心感を与えることがあります。ただし、相手が触れられることを嫌がらないかどうかに配慮し、無理に接触しないように注意しましょう。特に女性の利用者さんは男性が苦手な方もいるので、触られることで大声を出されたり、興奮されることもあるので信頼関係ができてないうちは軽々しく触ることは避けましょう。
8. 時間に余裕を持つ
認知症の方は、何かをするのに時間がかかることがよくあります。急がせたり焦らせたりせず、時間に余裕を持って行動することが重要です。自立支援をしたいので、できる限り自分で出来ることはやって頂きたいと考えています。
出来ることを奪ってしまうと自分に対する自信も無くなってしまうので、指示だけしてあげてできる限り自分でやってもらった方がいいです。しかし、本人がやりたくない、やってほしいと思っている場合は無理にやってもらう必要はありません。正直、現場は毎日人手不足で時間に余裕がないのでこちらがやってしまうことも多くリアルはなかなか難しいです。
9. 尊厳を大切にする
認知症の方は、自分自身に対する尊厳を感じられなくなることがあります。介護者は、常に相手の尊厳を守り、プライバシーや自主性を尊重する姿勢が求められます。たとえ判断力が低下していても、できる限り本人に選択肢を提示し、自分で決める機会を与えることが大切です。
10. 家族や周囲のサポートを大切にする
認知症の方のケアは家族や周囲のサポートも重要です。家族と連携し、コミュニケーションを取りながら、相手が安心して過ごせるように支援することが求められます。また、介護者自身もストレスを抱え込まず、サポートを得ることが大切です。
まとめ
認知症患者と接する際は、相手のペースに合わせ、否定せず、穏やかに接することが重要です。認知症の進行により、対応も変化していきますが、常に相手の尊厳を大切にし、安心感を与える環境を提供することが求められます。
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