ニセモノ警察24時

自動車メーカーで世界中のニセモノ自動車部品を摘発してました。ニセモノの危険性や探し方、…

ニセモノ警察24時

自動車メーカーで世界中のニセモノ自動車部品を摘発してました。ニセモノの危険性や探し方、自動車メーカーのシゴトのやり方などをお伝えしたいと思います。

最近の記事

【連続ニセモノ警察 第13話~ニセモノ対策業界~】

ニセモノ対策は、前回お話しした対策関係部署だけで実施している訳ではなく、大きく3つの外部サービスを利用しています。法律事務所、調査会社、Eコマースページ削除会社です。 1. 法律事務所 ニセモノは知的財産権を侵害品ですので法律問題です。ニセモノ業者に対して権利を侵害している、すなわち法律を犯している可能性がある事を、ブランド企業の代理人となって警告したり、警告を無視する場合には刑事告訴や損害賠償請求したりします。 2. 調査会社 Eコマースでニセモノを販売している業者は、

    • 【連続ニセモノ警察 第12話~ブランド企業におけるニセモノ対策関係部署~】

      ニセモノ対策には、被害の定義によって大きく3つの部署が関わっています。お互いが連携し対策効果を最大化しています。 1. 知的財産部門 コストをかけて登録・維持している知的財産権の侵害を被害と定義しています。ブランド力があればあるほどコピーされる可能性が高まるので、知財権の取得はブランド保護に大きく貢献しています。 2. ビジネス部門 売上やマーケットシェアの減少を被害と定義しています。 特に新興国や、市場に進出しようとする国では、ホンモノよりニセモノの方が安く人気がある場

      • 続ニセモノ警察 第11話~ニセモノでないけどニセモノ?~

        これまではブランド企業でない第3者がニセモノを作った場合の対策に関してお話ししましたが、ホンモノの正規サプライチェーンから外れて流通するモノが存在します。並行輸入品と横流れ品です。 並行輸入品は多くの国で合法とされているので説明を省きます。 ややこしいのは横流れ品です。なぜ流通するかと言うと、サプライチェーン上のサプライヤーや代理店が正規ルート以外で利益を得る目的で、正規注文数以上のモノを製造or購入し、サプライチェーンの外に流すからです。 本件は知的財産権侵害と言うよりは取

        • 連続ニセモノ警察 第10話~ロビイング~

          前回は、間接的なニセモノ対策として啓発活動を紹介しました。今回はロビイングについて話します。 ロビイングとは、ブランドを保有している企業や業界団体から、政府機関や国際機関に、ニセモノ取り締まりの強化や、法律の制定や改定、運用の改善を働きかける活動です。特に新興国には、ニセモノを取り締まる法律がないケースもあるので、ロビングによって法整備を促します。 非常に時間とエネルギーのかかる活動ですが、ニセモノ対策の根幹である知的財産権保護を整備する活動として重要です。

        【連続ニセモノ警察 第13話~ニセモノ対策業界~】

          連続ニセモノ警察 第9話~啓発活動~

          前回まではニセモノへの直接的な対策を紹介してきました。今回は間接的な対策である啓発活動を紹介します。 啓発活動とは、業界団体やブランドを保有する会社が、消費者や販売店にニセモノの存在を広く知ってもらい、ニセモノを買わない、仕入れないよう訴える活動です。消費者が賢くなればニセモノを買わなくなり、ニセモノ市場も縮小できるというロジックです。啓発のキーメッセージは、ニセモノは素人では見分けがつかないくらい巧妙に作られているが、品質や性能は著しく劣っている事ですが、加えて、ニセモノの

          連続ニセモノ警察 第9話~啓発活動~

          連続ニセモノ警察 第8話~ニセモノページ削除~

          前回は、Eコマースでのニセモノの見つけ方を紹介しました。今回は、ニセモノ商品ページの削除方法について話します。 各Eコマースの販売者ガイドラインには販売禁止事項が定められており、ニセモノも知的財産権侵害品として販売禁止になっています。従って、ブランドを侵害されている会社は、各商品ページにある「違反商品の申告」ボタンをクリックすることでニセモノの疑いのある商品ページを削除することができます。 これとは別に、知財保護プログラムを持っているEコマースもあります。その場合は、このプロ

          連続ニセモノ警察 第8話~ニセモノページ削除~

          連続ニセモノ警察 第7話~Eコマースからニセモノを見つける~

          前回は、ニセモノ製造拠点のガサ入れを紹介しました。今回は、どうやってEコマースからニセモノを見つけるかについて話します。 まずニセモノが売ってそうな国の有名なEコマースを選んで、対象商品を検索します。検索結果の写真で怪しそうな物や販売価格が異常に安い商品の詳細ページを確認し、詳細画像をすみずみまで見て本物かニセモノか判断します。写真だけでは判断できない場合、試し買いして実物を鑑定する場合もあります。 また、ニセモノ業者は他のブランドの類似品も販売していることが多いので、マルチ

          連続ニセモノ警察 第7話~Eコマースからニセモノを見つける~

          連続ニセモノ警察 第6話~ニセモノ製造拠点のガサ入れ~

          前回は、本物とニセモノの見分け方、真贋鑑定を紹介しました。今回は、ニセモノ製造拠点のガサ入れについて話します。 違法薬物の取締り同様、末端の売人を逮捕しても薬物はなくなりません。製造拠点を摘発するのが真の取締りになる事は、みなさんご理解いただけると思います。 ニセモノも、売人であるEコマースから逆探知して、製造拠点を突き止め、警察に依頼してガサ入れしてもらいます。逆探知には調査会社と呼ばれるニセモノ対策専門会社に依頼するケースが一般的です。理由は2つあって、そもそも本物を作っ

          連続ニセモノ警察 第6話~ニセモノ製造拠点のガサ入れ~

          連続ニセモノ警察 第5話~真贋鑑定~

          前回は、模倣品対策の方法として税関差止を紹介しました。今回は、本物とニセモノの見分け方、真贋鑑定について説明します。 真贋鑑定の方法は様々ありますが、最も一般的なのは外観の違いを見つける方法です。ニセモノも大まかなデザインは同じように作られていますが、細部が異なるケースが多いです。重量を比較するのも良い方法です。しかし、Eコマースなど画面上では鑑定できないのが弱点です。 最近では、本物を作ってる会社が積極的に本物を証明するシステムを導入する方法がとられています。QRコードやブ

          連続ニセモノ警察 第5話~真贋鑑定~

          【連続ニセモノ警察 第4話~税関差止~】

          前回は、模倣品対策の方法としてEコマース対策とリアル店舗への警告・摘発を紹介しました。今回は、税関差止を説明します。 税関差止は、海外旅行で帰国時に行われる手荷物検査と似ています。税関のメインの業務は関税の徴収ですが、並行して輸入禁止品の取り締まりをしています。空港、港、郵便局などにある税関が、輸入品を検査し、ニセモノの疑いのある貨物は差止め、ニセモノと判明したら押収します。その際、本物を作っているメーカーや輸入代理店にニセモノ鑑定を依頼します。真贋鑑定と呼ばれていますが、本

          【連続ニセモノ警察 第4話~税関差止~】

          【連続ニセモノ警察 第3話〜模倣品対策概要〜】

          前回は、ニセモノがどこから来て、どこで販売されているのかを説明しました。 今回は、どうやって販売できなくするか説明します。俗に模倣品対策と読んでいます。方法は大まかに2つあって、オンライン対策とオフライン対策です。 オンラインはEコマースを巡回してニセモノを見つけて、Eコマースに通報して出品禁止にしてもらう方法です。オフラインはニセモノの実際の流通全てを対策範囲にしています。最もオーソドックスなのは、リアルな店舗に対して販売しないよう警告する方法です。悪質な場合は警察に依頼し

          【連続ニセモノ警察 第3話〜模倣品対策概要〜】

          【連続ニセモノ警察 第2話〜模倣品の流通経路〜】

          前回は、なぜニセモノ対策するのかを説明しました。 今回はニセモノがどこから来て、どこで販売されているのか説明します。 ニセモノはモノなので、どこかで作っています。多くの場合は、そのモノの生産が得意な国で作られています。服や靴であればベトナムやバングラデッシュ、工業製品であれば中国で作られている可能性が高いです。医薬品もインドなどでニセモノが生産されています。 生産されたニセモノは、本物と混ざって、皆さんがいつも使っているEコマースで売られています。正規ディーラー以外で買う事は

          【連続ニセモノ警察 第2話〜模倣品の流通経路〜】

          【連続ニセモノ警察 第1話〜模倣品対策の意義〜】

          僕は自社のニセモノ商品を見つけて、それを販売できない様にする仕事をしています。俗にいう模倣品対策です。模倣品の何がいけないかというと、 1. 安全や品質面でお客様にご迷惑をおかけし、損失を与えている 2. それによって自社のブランドが傷つく 3. 膨大な投資をした商品にタダ乗りしている からです。 なので、ブランド力のある企業ほど対策しています。ルイビトンなどはブロックチェーンを使って防衛しているくらいです。

          【連続ニセモノ警察 第1話〜模倣品対策の意義〜】