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西尾維新作品の感想

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西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 4』雑感

西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 4』雑感


第二十六号『先んずれば暗号を制す』

 暗号学園に眠る暗号資産500億モルグを発掘するための眼鏡兵器……の所有権を巡って繰り広げられるクラス対抗暗号バトル、その名も学年大将念々対戦。
 兵長試験を勝ち抜き、学級兵長に就任したいろは坂いろはが所属するA組(無差別解読クラス)の対戦相手は、東洲斎一派との因縁を窺わせる縊梨慕率いるE組(潜入捜査クラス)。
 5vs5の勝ち抜き戦となる最初のクラスマッチ

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西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 3』雑感

西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 3』雑感



第十七号『下手な戦争休むに似たり』

 第三回学級兵長選抜試験・兵棋演習『暗号学園殺人事件』は匿名希望の驚愕の反則プレイにより幕を閉じた。
 そして本日は、一学期に一度のun暗号デー。
 1年A組の生徒達でレクリエーションを提案し合う中、予選を勝ち上がった学級兵長候補のひとり・要塞村鹵獲(ようさいむら ろかく)の鶴の一声で、皆でバウムクーヘンを作ることが決まり……?

 
 濃度の高い暗号バト

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西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 2』雑感

西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 2』雑感



第八号『踊る戦争に見る戦争』

 物語の舞台は、来る世界大戦に備え新設された、暗号解読に長けた少女達を養成する高等学校──その名も暗号学園。
 謎に満ちたM組の少女・洞ヶ峠凍の意に沿う形で、クラス(A組)の学級兵長の座を目指すいろは坂いろはは、東洲斎享楽、絣縁沙とのチームいろは坂を結成し──更に朧そぼろ、海燕寸暇との共闘により兵長選抜第一試験『頭脳破壊の四重奏(カステット・カルテット)』を突破

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西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 1』雑感

西尾維新&岩崎優次『暗号学園のいろは 1』雑感

前置き

 昨年(2022年)11月に週刊少年ジャンプで連載が開始された、西尾維新さん(原作)と岩崎優次さん(作画)による漫画作品──その単行本第1巻。
 デビューから20年で100冊をゆうに超える小説を世に出し続けている西尾維新さんではあるけれど、その陰で漫画原作者としても精力的に活動しており、読切、連載を合わせて結構な数のタイトルを発表している(大暮維人さんの『化物語』のような、原作小説のコミ

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西尾維新『モルグ街の美少年』雑感

西尾維新『モルグ街の美少年』雑感

 目的ではなく、夢とも言える。
 還暦を超えてまでまだ夢があることはお追従でなく素晴らしいと思うけれど、しかし十四歳の誕生日にわたしがそうしたように、大紬氏にも諦めてもらおう。
 夢を見ることは美しい。
 しかし夢を諦めることもまた同様に美しい──


 アンコール! もう一度きみと 謎解きだ!


 
 美少年シリーズ第12弾。
 と言っても、美少年シリーズは前作『美少年蜥蜴【影編】』で

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西尾維新『掟上今日子の鑑札票』雑感

西尾維新『掟上今日子の鑑札票』雑感

 だって、本どころか、誰かの書いた読書感想文を読んで、自分が読破したつもりになることだって、人間にはできるのだ──本を持っていなくてもグッズを持っていれば、それで愛読者のつもりにだってなれる。僕達はいったい、読んでない本の名言を、どれだけ引用している? 未読であろうと知った風に語れる本こそが名作である、なんて見方もある。

 前作『掟上今日子の設計図』以来、およそ1年ぶりのシリーズ第13弾。
 『

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西尾維新『新本格魔法少女りすか2』『3』『4』全話雑感

西尾維新『新本格魔法少女りすか2』『3』『4』全話雑感

もしも全13話ではなく全50話の小説だったら、大人りすかのヴァリエーションをもっと増やしたでしょうね。未来は可変であり、少年少女はどんな大人にでもなれるというのが、少なくとも彼女が使う魔法の神髄であり、2003年の僕が書きたかった小説なのでしょうから。
(『ダ・ヴィンチ 2021年1月号』西尾維新ロングインタビュー)

 
 雑誌『ファウスト』で連載が開始した2003年から、17年振りに(雑誌『メ

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西尾維新『人類最強のヴェネチア』雑感

西尾維新『人類最強のヴェネチア』雑感

「なんだよ。俺の臑ならもうないぞ」
 呆れたように旧警部がぼやいたが(帯も下駄も奪われれば、ぼやきたくもなるだろう)、しかし、臑はなくとも、そして救難ロープもウインチもなくとも、この土地には、いくらでもあって使い放題な自然の恵みがひとつある。島全体を取り囲んでいて、汲めども尽きぬ生命のスープ。
「もしかして⋯⋯、う──海?」
 アクア・アルタを起こすぞ。それも、とびっきり酷い高潮を。

 戯言シリ

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西尾維新『デリバリールーム』感想

西尾維新『デリバリールーム』感想

「⋯⋯親を脅すとは、母は強いね」言ってぼくは、懐から封筒を取り出す。そう言われれば、もう言うことはない。「だが、ここまでする以上、プランがあるんだろうな? 幸せで安全な出産のための、バース・プランが」
 能面は答える。ぶ厚くも薄っぺらい封筒を手にして、自信たっぷりに。
「ある」

感想
 今年9月に発売された、西尾維新さんによるノンシリーズものの新作。ノンシリーズは、『ヴェールドマン仮説』以来、約

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【1周年】『たびたびデーモンストレーション』感想

【1周年】『たびたびデーモンストレーション』感想

「さあ? いつの時代のどんな土地にもいんじゃないの?
うちらみたいな不謹慎が♪」

 
 ジャンプSQ.2019年12月号に掲載された、西尾維新さん原作、暁月あきらさん作画の読み切り漫画。

 いきなり自分語りから入ると、昨年、私はこの作品を読むために漫画雑誌を購読した。思えば『めだかボックス』の単行本から西尾維新作品の愛読者になった者として、“西尾維新原作”を求めて漫画雑誌を購読したのは、『パー

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西尾維新『人類最強の初恋』感想と最強シリーズについて

西尾維新『人類最強の初恋』感想と最強シリーズについて

「──だが、それならばお前も既に目的は果たしたのではないか? これ以上、お互い時間を無駄にすることもあるまい」
 あー、あたしはあんたと違って、時間にそんな多くの価値を見出してないから。
「時は金なりと言うぞ」
 つまり時間にはたかが金くらいの価値しかねーんだろ。時は人なりっつーなら、もっと大切にしてやってもいいけどな。


最強シリーズについて
 表紙を飾る女性・哀川潤を主役としたシリーズ。

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西尾維新『新本格魔法少女りすか』紹介兼感想

西尾維新『新本格魔法少女りすか』紹介兼感想

一気に、水中から『彼女』は姿を現す。それに伴い、床を満たしていた血液がずずずずずぅっと、潮が引いていくかのように、その嵩を低くしていく。当然だ──『彼女』の肉体を構成しているのはこの『血』。血液こそが、その血液に刻み込まれた魔法式こそが──水倉りすか、自身なのだから。


 2003年、雑誌『ファウスト』にて、第一話『やさしい魔法はつかえない』が掲載されたところから、本作は始まった。
 2004

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西尾維新『人類最強のsweetheart』既読前提感想

西尾維新『人類最強のsweetheart』既読前提感想

 まあ、死にたい奴は勝手に死ねってのがあたしの基本理念じゃあるんだが。
「『あるんだが』、でも?」
 あるんだが、でも──あたしに守られることが『究極の安全』だなんてふざけた評価は、是が非でも覆しとかねえとな。哀川潤に命を守られることは、この世の誰から命を狙われるよりも危険なんだって、予知能力者に思い知らせてやるよ。

 人類最強の請負人・哀川潤を主役に据えた、最強シリーズ第4弾⋯⋯にして完

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西尾維新『掟上今日子の設計図』既読前提感想

西尾維新『掟上今日子の設計図』既読前提感想

「20XX年6月20日! その日は僕が、今日子さんに依頼をしてるんですよ! 不法侵入及び業務上横領及び銃刀法違反の濡れ衣を晴らしてもらっているんです! 忘却探偵のその日のファッションから必要経費込みの依頼料まで水も漏らさず覚えていますとも!」

 前作『掟上今日子の乗車券』以来、およそ1年半ぶりのシリーズ第12弾。あらすじを簡潔に述べると、

 『學藝員9010』を名乗る謎の人物が、動画内で立体駐

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