動詞エッセイ;拾う
拾う、拾う。
あの頃、よく落ちているものを拾っていた。
あれは、地面との距離が近かったからだろうか。
どんぐり、落ち葉、朽ち果てた枝。
そこらに転がっているペットボトルにどんぐりを詰め込んでたこともあるし、
「よし、拾うぜ!」と意気込んで自宅からビニール袋を用意していったこともある。
地べたに落ちているたくさんのどんぐりは子どもの頃、宝石のように輝いて見えた。
たくさんとって帰ったどんぐりを数日間放置してたら、
虫がわいて母は悲鳴をあげていたっけ。
中学生のときは、クリーングリーン(だったっけ?)でゴミ拾いをした。
「面倒くさい」
友達と愚痴をこぼしながらも道路脇や公園に捨てられている、
ボコボコになった空き缶やペットボトル、雨水が入り込んだビニール袋をトングで拾い集めた。
背が伸び月日が経った。
公園のベンチでココナツドーナツとコーヒーを手にぼんやり過ごしてみる。
一口齧るごとにハラリ、ハラリと落ちていくココナツパウダー。
私の足元にはアリがせっせと動き回っていた。
私のココナツパウダーと誰かのこぼした2つの米粒には見向きもしないアリたちだった。
1匹のアリを目で追うと、黄色や赤に色づいた落ち葉や枯れ枝へと辿り着いた。
「除菌シートがないから触れない。」とか、「この手で携帯持ちたくない。」とか。
大人になって、次のことをするために『〇〇しない。』が増えてきた。
先のことを見据えて行動できるようになった私は成長したと言えるのかもしれない。
だけど、自分が「これ、ステキだな」と思ったものを素通りするのは、もったいないことだと思った。
秋はもう少しつづく。
立ち止まってじっくり観察してみよう。
匂いを嗅いでみたり、感触を楽しんだりしてみよう。
そして、忘れてしまいそうになる幼い頃の記憶も拾い集めていこう。