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「廃墟の本」3選 FIKAのブックトーク#29
こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。
今回のテーマは「廃墟」。
「廃墟」が舞台の小説や写真集、イラスト集を3冊紹介します。
「廃遊園地の殺人」 斜線堂有紀
「クローズド・サークル」物の本格ミステリです。
プレオープン中に起きた銃乱射事件で開園することなく閉鎖されたテーマパーク「イリュジオンランド」。廃墟コレクターの資産家に買い取られ、20年ぶりに招待客限定で開園することになりました。
9人の招待客を待っていたのは「このイリュジオンランドは「宝」を見つけた者に譲る」という招待主のメッセージ。
そして閉ざされた廃遊園地内で起こる連続殺人事件。そこには過去の因縁があって…
外界との往来が絶たれた状況下で事件が起こるミステリのことを「クローズド・サークル物」と呼ぶのですが、その王道を行くような本格的な謎解きが楽しめる作品です。
それと同時に従来の作品にはない新しさも感じました。探偵役をつとめる主人公は、一介のコンビニ店員です。やや洞察力に優れているだけの、名探偵でもない彼がなぜ連続殺人の謎を解こうとする探偵役なのか。その必然性を読者が納得できるようにきちんと書いているところに新しい時代のミステリらしさを感じました。
令和の本格ミステリの旗手と呼ばれる斜線堂有紀らしい本格推理小説です。
「SILENT WORLD 消えゆく世界の美しい廃墟」 山田悠人
歴史的背景やストーリーを持つ様々な廃墟を撮影した写真集です。
病院、工場、空港…かつて大勢の人が行き交っていた場所が荒れ果てた廃墟になっているのは何とも物悲しいのですが、中でも遊園地「奈良ドリームランド」が圧巻でした!
そもそも遊園地は、稼働していても華やかさと表裏一体の儚さや物悲しさが感じられる場所です。それゆえ廃墟になった時の負のパワーは途轍もない…!
ジェットコースターもメリーゴーランドも売店も、全てが時が止まったまま静かに佇んでいるのが禍々しくも美しい。
解説によると、やはり「奈良ドリームランド」は伝説的な廃墟として有名な場所だそうです。
先に紹介した斜線堂有紀の「廃遊園地の殺人」はここをモデルにしたのかも、という妄想が止まりません。
廃墟の持つ怖いような、それでいて目を逸らせないような魅力がたっぷり味わえる写真集です。
「東京幻想作品集」 東京幻想
廃墟と化した東京。
新宿も渋谷も東京駅もスカイツリーも六本木も浅草も全てが廃墟に…?!
ありえない未来の風景を圧倒的な想像力で描き出すイラスト集です。
建物は壊れ、傾き、草木が生い茂り、あちこちが水浸しになり、魚や動物たちの棲家になっている。見知った街が廃墟になっているのはかなりショッキングなのですが、不思議と絶望は感じません。
なぜなら、この廃墟は美しいから。
光がさし、水が溢れ、建物を覆いつくす草木の緑は生命力に満ちている。
人間がひとりもいない代わりに動物たちが棲み着くこの世界は美しい。
人間が滅んでもこんな世界が訪れるのなら悪くないかも…
滅びの果ての再生と希望を感じさせる幻想的で美しいイラスト集です。
以上、3冊の本を紹介しました。
「廃墟」だなんて変なテーマでしたが、いろんな本があって興味深かったです。
読んでくださってありがとうございました。
(おまけ)普段は週1の投稿ですが、10月27日から11月9日の「読書週間」は2週間連続投稿にチャレンジ中です。よかったらお付き合いください。(読書週間第9日目)