第9話 偉大なるフォンダンショコラ
金曜の夜。
今日はカカさんもいつもより早く帰ってきたから、早めの全員集合で楽しい晩だ。
本日の夕食のメニューは肉じゃが、お味噌汁、ご飯。ココちゃんが大好物の糸蒟蒻を麺類のように食べてるのが可愛くて、3人で笑いながらたくさん食べた。
2歳児のココちゃんが1回の食事で摂れる栄養は限られているので、毎回の食事には気をつけてるよ。赤ちゃんの頃にあった卵アレルギーも今ではなくなったみたいで、ココちゃんは何でも美味しそうに食べる。少し野菜が苦手なんかな?でも野菜食べてカッコいい!って言われるのをモチベーションにしてるように見える。
保育園を選ぶ時は、オレもカカさんも自園調理というのは最低条件やった。食育に力を入れていたり、畑とかで収穫した野菜がそのまま食べられる喜びを感じられる保育園があればいいねって、探しててん。何個か候補があったけど、運良く今通ってる保育園は条件にバッチリやった。
自分たちで作るクッキングがあったり、栄養のことも教えてくれたり。僕たち夫婦が聞いても「なるほどー!」って感心することばかり。
今日の肉じゃがも、食べながらココちゃん「おいも、きいろ」とか「おにくあかいろー」とか、ちゃんと理解しながら食べてるみたいやった。
食事の後は、ココちゃんが足の甲の上に乗ってきたので、そのままお風呂場に移動。これもひっくるめて我が家ではトトチックって言ってる。他の人にはわからないよね。家族だけの合言葉みたい。ココちゃんが放つ魔法の合言葉のおかげで、いつもカカさんとケラケラ笑ってるよ。ほら、この前のクリフトン(第8話参照)なんて、保育士の先生たちも面白かったみたいやし。さすが、オレの娘。言葉のセンスが良いんやわ。
一緒に過ごす時間が長かったからか、ココちゃんも大満足で寝てさ、金曜の夜やし、ワインでも夫婦で飲もっかなーって思ってたんやけど、カカさんがコーヒーを淹れてくれたので、内心(あ、ワインは明日にしよ)って思って、コーヒーの香りを楽しんでた。
ちょっと静かなピアノJAZZをかけて、家の中をカフェっぽい雰囲気にして夜の外出を楽しんでる感じにしてみた。カカさんを笑わせようと思って、この前のクリフトンの話したらね、最初は楽しかったんやけど、なんだか雰囲気があるぬ方向に…。
ついつい、「いやー実はちょっと疑ってる、っていうか気になっててんけど誤解が解けてよかった!ちゃんと話しするって大切だよなー。ついついはしゃいじゃったわ笑」って言ったんよ。自分的には信じてるよっていうのを伝えたかっただけやねんけど、カカさんの様子が少しずつおかしくなって。
「ふぅ〜ん、そ〜だったんだ〜。疑ってたんだぁ〜」
「いや、大丈夫とは思っていたけどさ、ちょっとさ、」
「ほぉ〜、そ〜ですか、そ〜ですか。え?なになに?疑ってたん?私を?へー」
みたいな事になってきたわけ。やば。カカさんに酒が入ってなかった事を心から感謝した。
どんどん表情も固くなってきたし、なんか目尻のあたりがピクピクしてる気もする。
「やばい」
なんとかしてカカさんの機嫌を取らないと!楽しい週末が今から始まるのに!
ふと時計を見たら、22時。カカさんは1人でコーヒー飲みながらスマホ見出した。明らかに「トトさんとは喋りませんので。ご自由に。」
のオーラが出ている。
「はぁ。この前もさ、人のチョコ黙って食べるし…」
こっち見ずにめっちゃ真顔でスマホに向かってブツブツ言い出した。めっちゃ視界の端でこちらをチラチラ見てる気もする。後から考え直すと、ちょっと冗談ぽいニュアンスも感じたけども。。
焦ったオレはカカさんにコンビニに行ってくる事だけを告げて、家を飛び出した。
ここは、前回のチョコ事件の謝罪も含めて、秋の夜長に映えるお菓子の定番、そしてカカさんの大好物でもある偉大なるフォンダンショコラをマッハで作ってご機嫌を取るしかない!!
コンビニでチョコレートだけ買って家に帰ってきた時、カカさんはココちゃんの寝顔見ながら、うたた寝していた。
よし!30分で作るぞ!
まずは買ってきたホットケーキミックスとココアパウダー、バター、卵、ミルクを混ぜて生地を作る。バターは軽くレンジで溶かした方が混ぜやすい。砂糖はお好みで。ホットケーキミックスがほんのり甘いので、オレは入れない。
あとは型に少し生地を流し込んで、チョコを入れてまた生地を流す。
あとは、レンチン。でも少し香ばしさがほしいから、オーブンにも入れてみた。
カカさんはまだ寝てたから、その間に洗い物をササっと。最近ハマってるYouTubeのカワウソ動画を見ながら、カカさん早く起きないかなーなんて思ってたら、カカさんがごそごそと動き出した。
──なんか怒ってなさそう
と感じたので、ちょっと盛大にオーブンを開けてみたわけ。
ひと眠りしてカカさんもすっかり機嫌を直してくれたのかな?それとも初めから、からかわれてただけかもね。でも、いいや。カカさんが楽しそうにしてくれたら、それだけで。
フォンダンショコラを二人で食べながら、ココちゃんの話とか、色んな話で大いに笑った金曜の夜。これね、一回機会があれば見せてみたいけど、想像の倍、いや3倍くらい二人とも笑ってるからね。息できんくなるくらい笑った。
良い香りのコーヒーを引き立て役に、爆笑の空間を見事作り出してくれたフォンダンショコラはやはり偉大だ。
カカさんがこの偉大なるフォンダンショコラを食べるまでのお話しはこちら!
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