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『日本画ができるまで 鏑木清方の制作風景』 鏑木清方記念美術館
『日本画ができるまでー鏑木清方の制作風景ー』を見に鎌倉にある鏑木清方記念美術館に行って参りました。今回2度目の訪問。
三連休だったこともあり駅前からの小町通りは人でごった返しておりましたが、鏑木清方記念美術館はどこ吹く風。ほぼ独り占め美術館でした。
清方の制作風景ということで、下絵と本画が並んで展示。下絵と言っても本画と同じサイズですので大作の下絵は、本画にはない迫力があります。
会場に入ってすぐの場所には、清方が16歳の時の作品《小楠公弁の内侍を救う》(しょうなんこうべんのないしをすくう)、19歳の時の《寒月》も展示されてましたが、既に上手い。《寒月》は意外にも写実的な作品。
今回の、チラシの表紙にもなっているのが《桜もみぢ》。山路へ遠出した商家の姉妹が描かれています。
左隻には煙管(きせる)を手にする姉が描かれてますが、後ろを振りかえる姿は《築地明石町》にも似ているような…。
少し前のXより。
今日の鎌倉はあいにくの雨模様ですが、現在展示中の《桜もみぢ》では、爽やかな秋晴れの空の下、お出掛け中の姉妹が一休みしています。野辺にそっと咲くリンドウや野菊、風に舞う色づいた桜の葉……清方ならではの季節の情趣を堪能できる名作です。お見逃しなく! #日本画 #鎌倉 #美術館 pic.twitter.com/TuS7s2g6VE
— 鎌倉市鏑木清方記念美術館 (@kaburaki_museum) September 20, 2018
人物の表情もとても綺麗なのですが、それにも増して着物の描き方が美しいなあと。独特のエメラルドグリーンは近くで見ると目が覚めます。
最後には徳川慶喜を描いた《慶喜恭順》が展示。パッと見た印象は、意外と清方の作品ぽくないなーと。眼光が鋭くて渡辺崋山や岡本秋暉の《二宮尊徳像》のような雰囲気が。とはいえ正に江戸末期の最後を描いてるので、そういう意味では相応しいのかも。
館内には図書コーナーがありまして、今回も鏑木清方の孫である、根本章男氏の著作『清方と私』を拝読。非売品なのでここでしか読めません。
つらつらと読んでいたら、東山魁夷とのエピソードが書かれてました。東山魁夷も鏑木清方と交流があり、鎌倉雪ノ下の鏑木邸にたまに訪れていたようです。
清方の生前最後となった展覧会が昭和46年に松屋銀座で開催された『鏑木清方展』。この時、清方は既に体調がすぐれず展覧会の内容について精査できない状態。そんな折に展覧会の監修役を買ってでてくれたのが東山魁夷であったと。
清方の長女・清子が、魁夷の住む市川を行き来して打ち合わせを重ね展覧会を無事開催。但し記事やチラシなど、どにも魁夷の名前を出すことなく正に裏方で助けてくれたとありました。
前日に市川の東山魁夷記念館に行ったばかりでしたので、二人にそんな繋がりがあった事に驚くのと同時に、素晴らしい関係だなーと。
ついつい読書に耽ってしまい夕方に。
次回こそは朝早めに出て、もう少し鎌倉を堪能しつつ、山口蓬春記念館にも行ってみようと思います。連携イベントも実施のようですし。