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終わり良ければ総て良し?【インド映画】Sarabham

"Sarabham"(2014、タミル語映画)Simply South、英語字幕にて。

※以下、内容・結末の重要な部分に触れています

若手建築家のヴィクラム(ナヴィーン・チャンドラ)はやや金銭に執着が強いところが玉に瑕ではあるものの、順当にキャリアを重ねて楽しく生きている。ところが、数年かけて準備した大きなプロジェクトのプレゼンを顧客チャンドラセカール(アードゥカラム・ナレン)に難癖をつけるような形で否定されたことで急ブレーキがかかる。自棄酒を呷っていたヴィクラムは、偶然、チャンドラセカールの娘シュルティ(サロニー・ルトラ)と出会う。高圧的な父親の束縛を逃れたいシュルティは、ヴィクラムに自分を誘拐したことにして親から多額の身代金をふんだくってはどうかとそそのかす。自分はその半分をもらって親から逃げるから、あなたも好きにすればいい。彼女の計画に乗ったヴィクラムは、うまく立ち回って思い通りの金を手に入れる。
シュルティと友好的に別れた翌朝、ヴィクラムはテレビでシュルティによく似た若い女の死体が海岸で見つかったというニュースを目にして驚愕する…。


比較的低予算で作られたのかなという映画で、残念ながら緊張感に欠ける部分も多い気がする。とくに始まってしばらくの間は、音楽の入り方といい、画面の切り替わりといい、かなりの数映画を観ている人にとっては「ちょっとこなれてないなあ(野暮ったいなあ)」という気がするのではないか。監督はこれが第一作目だったそうなので、だとしたらなんとなく納得である。
とはいえYouTubeではヒンディー語吹替え版が公開されており、コメント欄での評価は上々。IMDbでの評価もインド映画の中では決して悪くない方だと思う。途中でそれまでの前提を覆すようなどんでん返しがあり、ストーリーは確かに非常に面白い。面白いけども!
…この話どっかで知ってるなと思ってあとでWikipediaで調べたら、邦画「GAME」(2003年、監督:井坂聡、主演:藤木直人、仲間由紀恵、原作:東野圭吾)の翻案だと書いてあった。確かに観たわこの映画。
東野圭吾の原作はWOWOWでドラマ化もされていた。今年。

なんか全然雰囲気違う。

この"Sarabham"はかなり軽妙に作られている。そもそも主人公二人の間に恋愛とかそういう湿度の高い感情が芽生える展開ではないので、まず叙情的な雰囲気はほとんどない。個人的にはすぐに男女の恋愛を絡めるタイプのミステリードラマは勘弁してほしいので、そっちに走らないこの作品は好感が持てた。

主人公二人の関係性はだいたいこんな感じ

どちらかといえば、周囲の人間の思惑に振り回される、ちょっとお人よしなところのある主人公が精一杯逆襲する様子を見守る、そんな気持ちで私は鑑賞した。ヴィクラム君、金儲けできるんだったらばれない程度に法を犯してもいいとか言ってる道徳心やや薄目な男なのだが、夜行き場のないシュルティにカプチーノおごってあげるし(この何気ないくだりが、彼の人柄をシュルティにも観客にも理解させる重要なシーンだったと思う)、話も聞いてあげるし、家に泊まらせてあげた後はしっかり朝ごはんも用意して起こさずに仕事に行くし、根がイイ奴なのである。ご近所さんとも仲良しだし。
ヴィクラムを演じているナヴィーン・チャンドラが今より10年くらい若いから、少し頬のあたりとか丸っこくてとにかく愛嬌たっぷりなので、「こいつアホだなあ」「がんばれよ」と思いながら最後まで見ている感じだった。
なお、彼の声は別の俳優による吹替。ご本人はタミル語ネイティブだと思うのだけど、なぜか吹き替えられていることが時々ある。この映画もそのパターンなのだが、ご本人の声で聞きたかったなあ。

最近では眉間にしわが寄ってる役が多い

ヴィクラムと組むシュルティを演じているサロニー・ルトラ(ルスラと読むのかもしれない)は顔の造作大き目で表情豊か、とってもきれい。この作品ではヴィクラムをヤバい道に引きずり込んでいく鍵となる人物役(なんならサイコパスといってもいい)なのだけど、この当時モデルをやっていて、大きな役としてはこの映画が初めてだった模様。そうは見えない貫禄だった。

ナヴィーン・チャンドラとは6年後に"Bhanumathi & Ramakrishna"で再共演している
こちらも早く観たい

なおタイトルはヒンドゥー教の神シャラバ(半分がライオン、半分が鳥の姿をした8本足の神)のことなのだそう。タイトルロゴがたぶんそれを表していて、映画の中でも印象的なモチーフが登場する。タイトルにしたのにもたぶん何らかの比喩があるのだと思うのだけど、残念ながら知識不足にてわからなかった。(Wikipediaで調べたのだけど今一つピンとこなかった)修業が足りない…。

IMDb

大変意外なのだけどサントラが良かった。映画観てるときには全く意識していなかったけど、流し聞きがちょうどいい心地よさでずっとリピートしている。


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