一ミリも妥協しない(のか)【インド映画】Thaggedhe Le
"Thaggedhe Le"(2022年、テルグ映画)。公式が全編をYouTubeで公開している(ありがたいことに英語字幕付き)。
タイトルの綴りがよくわからない。"Thaggedhele"と記載されているものもあれば"Thaggedele"となっているものもある。ここはIMDbに倣うことにする。ちなみにタイトルは映画「プシュパ」でのプシュパのあの決め台詞(一ミリも妥協しない)から来ているのだそうだがストーリーと全く関連はない(と思う)。タイトルソングもプシュパを意識したダンスだった。もしかするとテルグ語で観ていたらなぜそのタイトルにしたのかストーリーとの関連性がわかったかもしれないけども、英語字幕ではわからなかった。
警察と麻薬組織の攻防・自分たちを処刑しようとする凄腕の警部(P・ラヴィ・シャンカール)に復讐を誓うギャングたち・自宅で女の死体を「発見した」と通報してきた男(ナヴィーン・チャンドラ)、という一見無関係な登場人物たちの事情が同時進行で描かれる群像劇。それぞれなんの関係もないと思われた登場人物が郊外の食堂に引き寄せられるように集まり殺し合うクライマックスに至っては、もう血塗れヴァイオレンスホラーである。
Wikipediaを見ると、この映画はカンナダのギャング映画"Dandupalya"3部作のスピンオフだとのこと。実在のギャングをモデルにした結構なヒットシリーズだったそうで登場人物もほぼ同じ(ナヴィーン・チャンドラの登場するパートを除いて)とのことなので、過去作見てなくても支障はなかったけど、知っている人がみたら登場人物の過去の背景もわかってまた違った楽しみ方ができる映画なのかもしれない。
その中でナヴィーン・チャンドラが登場するパートはどっちかというと叙情的なラブスリラーの趣きがある。結婚前に一回限りの関係を持った女が再び現れ、新妻に取り入って新居に居座り、自分との関係をバラすと脅しながら復縁を迫ってくる…という展開で、(冒頭でその女が死体になっていることは観る者にはわかっているので)追い詰められた彼がいかに行動して女が死体になるに至ったのか?というのがサスペンスの要素になっている。
ナヴィさんがお色気パートを担っている 多謝
ただなんとなく全体的にこの映画、テンポが悪い。こういう「一見無関係だと見えるエピソードが実は横糸でつながっていて…」という展開は、それが判明する時の、あの次々に謎が解けていく「ああそういうことか!」というゾクゾク感がないとダメだと思うのだけども、この映画はそれがない(横糸は確かに存在はするのだが)。ただ単に同じ場所に至っただけのようにも見えて今一つそのあたりの盛り上がりがなく、スリラーとしてはかなり物足りなかったように思う。あとこのナヴィさんのパートとそれ以外のヴァイオレンスパート(たぶん元の3部作はこんな感じなんだろうと思う)との落差がちょっと激しすぎてな…欲張りすぎじゃないかと…しかもヴァイオレンスパートの方が面白かったしな…
とはいえナヴィさん好きとしては、あの彼独特の曖昧な持ち味―善にも悪にもなれるし、賢くも愚かにもなれるし、愛情あふれた人物にもなれるし冷たい人物にもなりうる―がここでも楽しめた作品ではある。あと女に振り回されていて実に良い。インド映画にしては割としっかり目(あくまでインド映画基準で)ではないかと思われるラブシーンがあるので、苦手な人にとってはちょっとどぎつく感じられるかもしれないが、そうじゃない人にとってはひたすら眼福だと思う。なんならナヴィさん、この映画のヒロインだったんじゃねえかなな…?
全編はこちら。