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真夜中の追いかけっこ【インド映画】Super Over

“Super Over”(2021年、テルグ語映画)
ストリーミングサービスahaのオリジナル作品で、配信のみの公開。インド映画のそこそこの長さに慣れていると1時間23分というこの作品の短さにびっくりするのだけど、そういえば配信向けに作られた映画はわりと短いな、などと思ったりもする。"Bhanumathi & Ramakrishna"も1時間30分程度だった。映画館で3時間観るのはイベントとしてアリだけど、自宅で腰を据えて観られるかといえばそうでもない、というのがインドの視聴者の事情でもあるのかもしれない(だとしたら非常によくわかるのだが)。あとは単純に、作り手側の予算の問題もありそうだが。

なお、タイトルはクリケットのタイブレークのことを指すそうだ。この映画のテーマはクリケット賭博だから、ルールがわかっていたらストーリーとも関連づけることができて、なかなか粋なタイトルと感じられるのかもしれない。

「どうしても金が必要だったところに違法なクリケット賭博で大金を儲け、ウキウキで集金に行く幼馴染男女3人」「うっかり大損を出してしまって金を取り返したい賭博元締めの弟分」「金に目のない悪徳ポリス」がハイデラバードの路上で大金をめぐって追いかけっこを繰り広げる一晩の物語。
物語の焦点は思い切りよく「主人公たちが無事に金を手にできるか」だけに絞られており、叙情的な部分はほとんどない。そのため個々の登場人物たちへの感情移入は少々難しいのだが、おそらく作り手はそこは重視していないはず。そういうところを潔く切り捨てているために、ルンルン気分で集金に出かけたはずが次々と畳みかけるように不運に見舞われる主人公たちのジタバタが前面に描かれ、気が付けば手に汗握る仕様になっており、最後まで飽きずに見ることができる。

主人公の男2人(ナヴィーン・チャンドラ、ラケンドゥ・マウリ)女1人(チャンディニ・チョーダリー)の幼馴染の間に恋愛感情が一切存在しないのも非常に無駄がなくて良い。男2人が雑ながらも彼女をそれなり尊重して扱う様子も面白かった。

どこかポンコツ気味な仲良し3人組の関係がよい

ナヴィーン・チャンドラは幼馴染3人組の一人カーシ。違法なクリケット賭博で一攫千金を狙うタイプの無職であり、考えてみたらすべてのトラブルの始まりみたいな男なのだけど、自己肯定感高いし、友達が大好きだし、(家族思いでもあるし)なんだか憎めない。考えたらナヴィさんはこれまでもこういうちょっと調子のいい男の子キャラを演じてきているので("Juliet Lover of Idiot"とか"Lacchimdeviki O Lekkundi"とかその系列じゃないかな)、カーシみたいな役はお手の物だったかもしれない。

あと顔が良いのよ

チャンディニ・チョーダリーが演じるマドゥも、男子二人と互角につるんで遊ぶ女の子の「らしさ」があってとても良かった。私、彼女はかなり好きな女性キャラクターかもしれない。

なお、3人が人に言えない金を持っていることに気がつく警察官をテルグ映画でおなじみのアジャイさんが演じているのだが、ほぼ表情を変えず、威圧感たっぷり。彼が登場するとピリッと画面が引き締まる感じがした。

監督のプラヴィーン・ヴァ―マはIMDbのフィルモグラフィーによればこれが初監督兼脚本作品だったようなのだが(ただIMDbはインド映画に関してはやや情報が不足しているようにも思う)、本作が公開された2021年1月になる前、作品の完成以前の2020年の10月に交通事故で亡くなったのだそう。
もし初監督・初脚本がこれだったのなら生意気な物言いながら相当才能のある方だったのではと思うので、非常に残念な気持ちになった。公開時のプレスミートイベントでナヴィさんやチャンディ二が涙ぐんでいる様子はYouTubeでもいくつか動画があがっている。


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