究極のコーヒーを求めて
Ⅰ 焙煎したばかりの豆を購入する
今日は、コーヒーにまつわるかなりニッチな話をしたいと思う。半分あきれながら聞いていただけると幸いである。
10年以上前になるだろうか。それまでは焙煎して挽いたコーヒーを、主に生協で購入していた。しかし、豆のまま購入して、自分で挽いた方が、香りが飛ばないのでおいしく飲めると知った。しかも、焙煎してから日が経っていない方が、おいしいらしい。
その頃は自転車で通勤していたが、通勤途中にコーヒーを焙煎して販売するお店があった。お店に入ると、大きな焙煎機があって、焙煎しているお兄さんが、今日焙煎したばかりの豆がどれかを教えてくれた。そのお店では、豆ごとに原産地、味の特徴、焙煎度などの説明がついていたので、行くたびにいろいろな豆を少しずつ買って試してみた。私が一番気に入ったのは、エチオピアのアビシニア高原の豆で、焙煎は浅めで、「フラワリーな芳醇な香り」だと紹介されていた。実際、淹れると花のような香りが漂うから、初めて飲んだときには感動した。
自宅の最寄り駅から二駅先には、その場で注文したコーヒー豆を焙煎して売ってくれるお店があることを知り、そのお店に出かけては100グラムか200グラムぐらいだけ買っていたこともある。
Ⅱ コーヒーを飲み比べる
あちこちの豆を飲み比べた結論は、やはり私はエチオピアの原生種の豆が好きだということ、焙煎度は浅めで、精製方法としてはナチュラルが好みだということだ。ワインも気候や土壌といったテロワールが大事だと思うけれど、コーヒーだって負けてはいないのである。
ここで、精製について、ちょっと解説する。コーヒーの果実は、集積所に集められて、その中から生豆(なままめ)を取り出すが、この工程を「精製」と呼ぶ。
コーヒー豆を精製する方法には、大きくわけて、ナチュラルとウォッシュドがある。
ナチュラルは、最も古くから普及している伝統的な精製方法で、収穫した果実を広げて、天日干しにする。
ウォッシュドは、、種子についたミューシレージを取り除くために、大きな水槽に豆をつけて、精製に大量の水を使う方法である(cuisine.jpホームぺージより)。
同じエチオピア産の豆でも、ナチュラルの方はフルーティーで、野性味がある。ウォッシュドの方は、ナチュラルよりもあっさりした上品な味わいである。
エチオピア以外だと、パナマのゲイシャにはびっくりした。クリーンで紅茶みたいな味わいで、コーヒーというものに対する認識を刷新してくれる。値は張るけれど、それだけの価値はあると思う。
Ⅲ 自分でコーヒーを焙煎する
焙煎したばかりの豆を求めてさまよい歩いていたけれど、自家焙煎のコーヒー豆はそれなりの値段がするし、おいしく飲むためにはまめに買いに行く必要もある。コーヒー豆を自分で焙煎すれば、手間はかかるけれど、安い費用で新鮮なコーヒーを味わえる、という結論に至り、焙煎するための道具を購入することにした。いろいろ迷ったあげく購入したのは、「煎り上手」という、ガスコンロの火にかざしてコーヒー豆をあぶる原始的な道具である。今でもアマゾンで売っているけれど、私が買った頃は5000円ちょいだったように思う。「煎り上手」とお試しの生豆、焙煎したコーヒー豆を冷やすためのザルがセットになっているものを購入した。
お試しの豆を使って焙煎してみたものの、最初はうまく行かず、コーヒーとは思えないようなまずい代物ができあがった。今思えば、焙煎時間が短すぎたのだと思う。失敗に懲りて、しばらく煎り上手はしまい込まれたままだったけれど、ふと思いついて再チャレンジしたら、今度はうまく行った。コーヒー豆にある程度火が通ると、豆がパチパチとハゼる音がする。この音がするまで焙煎するようにすれば大丈夫らしい、と気づく。うまく焙煎できるようになると、楽しくなって、エチオピアを始めとした各国の生豆を通販で購入し、焙煎しては飲み比べてみた。やっぱり、エチオピアのナチュラル精製の豆が好きで、たまのぜいたくにゲイシャかなあ、という感じであった。
Ⅳ カフェインレスコーヒーを焙煎する
焙煎は楽しいのだが、ここで問題が生じた。もともと胃が弱かったのだが、コーヒーを一杯飲んだだけで、調子が悪いときには胃けいれんが起きたりするようになった。胃薬を常時服用していたが、薬を出してもらっていた内科医からは、カフェインレスコーヒーに変えることを勧められた。私はアルコールは飲まないので、通常のコーヒーが飲めなくなると、楽しみが一つ減ってしまう。けれど、背に腹は代えられぬ、と、4年前、焙煎するのをカフェインレスのコーヒー豆に変えることにした。
カフェインレスのコーヒー豆に変えたおかげで、胃の痛みはぴたりと治まった。難点はカフェインレスコーヒーは、圧倒的に種類が少ないことだ。一番好みに合うエチオピアの豆を買って焙煎するようにしているけれど、カフェインレスにするために加工されているから、やはり味は落ちる。しかも、焙煎を浅めにするとぼやけた味になるので、仕方なく深煎りにしていた。
それが、いつもコーヒー豆を買うのとは別のお店で、豆のグレードが一段階上のものを買って焙煎してみると、あら不思議。焙煎が浅めでも、ぼんやりした味わいではなく、モカならではのフルーティーさが口中に広がり、かつて感じたエチオピアの豆に対する感動がよみがえって来た。カフェインレスコーヒーでも好きな味を楽しめることにわくわくしている、近頃の私である。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。みなさんのニッチな楽しみは、何ですか?