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【詩#16】《ある朝の湖畔のことを》

——夏合宿'23によせる

1.足もと

足もとにころがる
行く夏の風を
かぞえながら家に帰った

だれにもおとずれる
行く夏の風を
ひそかに期待していた

   だが
   そのことにきがついたのは
   あの朝だった

メトロノームが淡々と
わたしは心を三連符で刻むと
まぶしすぎた日々は
足もとにころがってきた

2.夏のひとひら

遠いものだと思ってた
果てなくて手をのばしつづけた
けれどそれは
すぐそこにあって
でもそれは
気づくことのできない
さわることのできない

   青く眩しくそして果てなく
   それでいてなお
   手をのばしつづけよう
   手をのばしつづけて
   その果てに

   暗く淀めくそして果てなく
   それでいてまた
   手をのばしつづけよう
   手をのばしつづけた
   その果てに

線香花火が
いま
夏のひとひらが
いま

3.ある朝の湖畔のことを

いつまでも
いつまでもつづいていくような
星空の音を聴きながら
ひっそりと
たまにふんわりと
語った夜があった

日がのぼる
そのしずけさに
めざめた

いつまでも
いつまでもつづいていくような
ある朝の湖畔のことを
ただ
語っているだけだった

湖畔には
鴨が
湖畔には
秋茜が
蔦の絡まる道を
影のふたつ

まぶしく
あかるく
あおく
しろく
ひはのぼる

そしてぼくらは
すこしだけなつかしい
ある朝の湖畔のことを...

4.あお

あおかった
夜が孤独をつれてきて
あのあおは
今はもうない

今のぼくには
あおすぎて眩しすぎる
そんな日々に
ありがとうを

くりかえし 夏は訪れて
くりかえし 夏は去ってゆく
この夏があおすぎて 眩しすぎて
そこから
あのあおが
また輝いていく

今のぼくには
あおすぎて眩しすぎる
そんな日々に
ありがとうを

くりかえし 夏は訪れて
くりかえし 夏は去ってゆく
その夏が眩しすぎるところから
あおが青となって
夜が明ける

さようならを
ありがとうを
あの朝のことを
ある朝の湖畔のことを思い出す


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