枯れ葉 / アキ・カウリスマキ
割引あり
枯れ葉、それは一本の木から落ちてわたしたちの足元に身を横たえる。カサカサと互いに身をこすらせながらたむろする。彼らが風に吹かれてフッと舞い上がったとき、女は立ち上がる。
最初の枯れ葉は女から男に手渡される。不器用な男はポケットから取り落し、枯れ葉は雨に濡れたアスファルトの上をどこかに吹かれてゆく。名残惜し気にあらがって立ち止まるも、画面の外へ立ち去る。
しかしスクリーンに枯れ葉は戻ってくる。病院の前、ベンチ、2人の女。枯れ葉が風に吹かれてフッと舞い上がったとき、女は立ち上がる。
病院の入り口には男がいる。男は女を見る。女は灰色の壁の前に立っている。罪と罰の狭間に迷い込んだ男を愛した女は、表情を変えなかった。鋳型の外へ足を踏み出した男を愛した女は、ニッと笑った。
2人は連れだって一面の枯れ葉の上をスクリーンの向こうへ去ってゆく。チャップリンと共に、足早に。
忘れられたような存在、枯れ葉。寂しいとき、わたしたちの視界の隅に気づくと身を滑り込ませている。そのときわたしたちは思い出す。なにか、大切なことを思い出す。
男と女の間には、小さなテーブルと、花と、料理と...それだけだろうか。アペリティフをグラスに注ぐとき、泡のはぜる音がする。そのときわたしたちは感じる。そして思い出す。枯れ葉みたいに忘れてたものを思い出す。
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