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『九龍ジェネリックロマンス』90話感想
今、ここに在るボク。キミは、どこに在るの?
【あらすじ】
金魚のサクセスは
鯨井Aと出会った時のことを回想していた。
ある露店の金魚の一匹でしかなかった彼は
工藤に買われて鯨井Aと出会う。
鯨井Aと暮らし始めたサクセスは
鯨井Aについてもっと知りたいと
思うようになる。
共に過ごすうち
サクセスだけは鯨井Aのある一面を知る。
それは
工藤といる時の鯨井Aが
いつも<記号>になるということだった…
【感想】
①サクセス目線のG九龍
鯨井Aのもとに来る前
サクセスはある金魚売りの店にいました。
当時のサクセスには名前などなく
ただの一匹の<金魚>でした。
サクセス目線のG九龍が面白い。
![](https://assets.st-note.com/img/1728956969-2CUn94ywMQfWPipOdVHxYb8B.jpg?width=1200)
サクセス目線のG九龍は
人も屋台も自分も含めて
すべて<記号>で構成されていました。
ただそこに存在しているだけの存在
でも誰もそのことに疑問を持ちません。
G九龍の住民達はみんな
自分の存在理由について
疑問を持たないよう
プログラムされているのでしょうか…
②サクセスは<彼女>と出会った
![](https://assets.st-note.com/img/1728957330-ORZwI0v4KSpuYdL97aQTnFi8.jpg?width=1200)
一匹の<金魚>だった彼の前に
ある日工藤が現れ、彼を購入します。
工藤は彼を鯨井Aにプレゼントします。
それが彼と鯨井Aの出会いでした。
彼は鯨井Aと共に暮らし始めます。
いつもおなじ時間に寝起きして
おなじ時間に家を出て
おなじ時間に帰宅する。
彼は鯨井Aの暮らしを
「記号的な日々の繰り返し」と思います。
③<彼女>を知りたいサクセス
共に過ごすようになり
鯨井Aは時々彼に工藤の話をします。
彼は鯨井Aのある一面に気づきます。
それは工藤の話をするたびに、鯨井Aが
<記号>というのっぺらぼうに
なってしまうことでした。
ここ今回のエピソードで
地味にゾッとしましたね…
彼は少しずつ
鯨井Aについて知りたいと
考えるようになります。
![](https://assets.st-note.com/img/1728957982-Nxaih6dQmTBkOctrpPKX2913.jpg)
鯨井Aの生活を見つめる彼は
彼女が楊明さんから
「レコぽん」とあだ名されているのを知り
鯨井Aを
「レコぽん」と呼ぶようになります。
④<サクセス>誕生
ある日鯨井Aのもとを工藤が訪れます。
彼は工藤に対して
「好きじゃない」と嫌悪感を見せます。
工藤のことになると
鯨井Aがレコぽんとしての存在を失い
のっぺらぼうになるのを知っているから。
一方の工藤も無表情に彼を見つめ
鯨井Aに彼の名前を尋ねます。
名前、と聞かれて困惑する彼。
だって彼は
一匹の名前の無い<金魚>なのです。
そこで鯨井Aは彼の名前を
「サクセス」だと工藤に告げます。
この時彼は
一匹の名前の無い金魚から
成功を意味する「サクセス」になりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1728958506-KhvfP3wHiRxd7CVbpyoWuGNU.jpg)
「カッコいいじゃないかサクセス!」と
一匹興奮するサクセスがめちゃくちゃ可愛い。
⑤サクセスはここに在る
終盤のサクセスのモノローグが
すごく好きです。
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一匹の<金魚>という存在でしかなかった
サクセスでしたが
鯨井Aとの出会いをきっかけに
「サクセス」という名前を持つ存在として
生まれ変わります。
名前は<自分>を象徴する上で
一番大事なものですね。
【余談】<記号>の意味
今回はまさかの金魚サクセス回。
サクセスの存在を
すっかり見落としてましたが
彼もまた鯨井Aを
ずっと見守り続けてきたキャラクターですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1728956647-jIJB0Ca3iFvefc96LnDlKm7T.jpg?width=1200)
そもそも本作は
金魚を強調しているので
何かしら意味がありそうです。
記号の意味について。
サクセスには周りの人や自身すら
<記号>でしかありませんでしたが
その中で工藤・鯨井A・楊明さんだけは
<記号>ではなく
実体を持って存在していました。
<記号>は
実体を持たないもの
ただ存在しているだけのもの
役割だけの存在
という意味でしょうか?
名前を持つものは
実体として存在している?
今回ちょっと引っ掛かる点が1つ。
サクセスが70話で
工藤に懐いていなかったのは
工藤の話をするたびに
鯨井Aが実体を失い
ただの<記号>になるからだったんですね。
サクセスは
工藤のことになると
鯨井Aが<記号>化するので
彼のことがあまり好きではありません。
(その気持ち、分かるよサクセス!)
![](https://assets.st-note.com/img/1728957619-pDPIwJjR4WnqmQefkoTXi5ru.jpg?width=1200)
工藤のことになると
鯨井Aが<記号>にしか見えなくなるサクセス。
工藤の話をする鯨井Aが<記号>になるのは
彼への想いに「実体が無い」から?
鯨井Aの工藤を愛する気持ちが
A自身の本当の気持ちではないから?
彼への想いも
所詮ジェネリックなものだから?
そういう意味なのかな…
82話で楊明さんは、グエンから
「今の生き方は本当に
『絶対の私』になるためのものなのか?」
と問われたことで
今の自分は
鯨井Aに依存していたのではと気づき
自分の人生を生きるために
G九龍から出る道を選びました。
鯨井Aの場合改めて
工藤への想いと向き合うことになるのでは?
と思います。
もしそういう展開になるなら
サクセスが関わってきそうですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1728956741-2KoaTXNPvbIAqCRyzMDYmgS5.jpg?width=1200)