『敗北感と快感』~文学フリマに出店した感想~
文学フリマ東京36に出店をして何より感じた事は『敗北感』です。
今回、友人たちと共同でブースを借りて出店しました。
正直に言います。
ぼくの本だけあまり売れませんでした。
悔しいです。
でもそれ以上に「友人に負けたんだ」という『敗北感』に
打ち拉がれました。
ぼくの本は手に手に取っても買わないのに、
友人の本は手に取ると購入される。
『お金』という絶対的な価値で判断されているので言い訳の余地もない。
ぼくの負けです。
「他のブースを参考にする」という建前を友人に言い残し、
逃げるようにブースを離れました。
悪の心と分かってはいても、
友人の本が売れるのをこれ以上見たくありませんでした。
しかし会場内にはぼくの逃げ場所など、
どこにもありません。
あのブースも、このブースも、そこのブースも、
『面白い』が溢れている。
ぼくが勝っているものは年齢以外にありませんでした。
ぼくがこの会場内の出展者の中で一番劣っている。
そう気が付いた時には、会場を飛び出していました。
人が少ない搬入用スロープにたどり着き、
搬入口から旅立って行くトラックをぼっと眺めていました。
ぼくに才能はない。
小学生からずっと書いているとか後天的な才能もない。
努力家の人のように、睡眠時間を削って書くこともできない。
辛い。もう本を書くのは辞めたい。
胸中に向かって毒の付いた紫色のバラが咲いたかのように、
心臓にどろどろした刃が突き刺さりました。
しかしその瞬間、希望を心臓に感じたのです。
「気持ちいい」
快感。
心臓がぎゅっとなるのがめちゃくちゃ気持ちいい。
餅が喉に詰まった時に気持ち良さに似てるというか、
息が苦しくなるまで水の中に潜っている瞬間というか。
心臓がもやもやしてる時にギュッとされたのがめちゃくちゃ気持ちよくて…………。
神様はパンドラの箱には希望を詰め込んでいるんですね。
別にメンタルがすり減ること自体は好きではないんですが、その後に待っている心臓ギュッがめちゃくちゃ好きなんですよね。
すべてが心臓ギュッと共に消え去ったんで、笑顔で自分のブースに戻りました。
おわりに
これからも心臓ギュッの為に文字を書いていくと思います。