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2024年12月後半の読了本+感想

あけましておめでとうございます!
2025年もよろしくお願いします!

2024年は120冊、読みました!
月10冊。良いペースで読書できたので大満足です。
感想を読んでくださったり、感想見て買いましたと言ってくださったり、嬉しいことたくさんでした。
いつも読んでくださっている皆さまありがとうございます。

2025年も継続できたらと思っています!

年末はいわき、茨城をうろうろと旅し、正月明けて即初詣に行きました。
おみくじ「大吉」です。良いことあれ。

今年はたくさんポジティブなお知らせできるように頑張ります!

年末に発売したカレーの味と小説の評判がとても良く、嬉しい限りです。買ってくださった皆さまありがとうございます!


——2024年12月後半に読んだ本——

①『ダキョウソウ』洛田二十日

ショートショート大賞を受賞して作家になった洛田二十日さんの2冊目。
デビュー作『ずっと喪』も最高だったけれど、2冊目はさらにパワーアップしていた。圧巻の一冊です。ハズレゼロ。

いろんな状況に関して
突飛な設定やボケに対して、ツッコミを入れるか、受け入れるか、受け流すか、完全に乗っかるかはセンスの見せ所だと思うけれど、その判断が抜群にうまい。今村夏子さんや村田沙耶香さんの小説を読んだ時と同じように、読者を平伏す力がすごい。

ソファの隙間に落ちて現実世界に帰って来れなくなったお父さんと、その息子を描いた「ソファの隙間」
公園の遊具を飼育するための牧場と、すべりだいの飼育係を描いた「ヨミコはすべり台」
教室に川が転校してくる「川が転校してきた」
客が熱狂すればするほど、ワイヤーで吊るされた氷塊がその熱気で溶ける溺死系バンドについて書いた「溺死ロック」

が特にお気に入り。

②『小説』野崎まど

うーーーわ。すっごいの読んだ。どう説明しよ 。となっている。
たぶん半分くらいしか理解できていない。
心の中をグイィーーと抉られたような感覚。

僕は飛行機が飛ぶのを理屈では理解できているけれど、精神的・感覚的には理解できていない。あんな鉄の塊が飛ぶわけないだろ、と今でも乗りながら思っている。

それと真逆のことが起きている。感覚的には体のどこかで理解できているけれど、理屈はわからない。

まず、すっごいタイトルやなと思って手に取った。
まさに小説のことを書いている小説だった。
なぜ小説を読むのか。
読んだ先に何があるのか。
読むだけでいいのか。
書かなくてもいいのか。
読むことが何も社会と繋がっていないくても良いのか。
読む意味は?
そもそも意味って言葉の意味は?

そんなこと考えたことある人には本当におすすめしたい。

前半は面白いエンタメ小説だけれど、後半になるに従って精神世界や自分の内側と向き合うような純文学とも言える要素が増えていく。

後半は本当に一読では半分も理解できていないと思う。
ただ結末は理解できた。
最後には内海、外崎、その名前に込められた想いにも気がつくことができた。

確かに難しいこともあるけれど最後の最後まで読んでほしい。
報われるから。

あらすじ。
主人公は内海。子供の頃から漢字が得意で、五歳で初めて小説を読む。走れメロス。
医師の父は「五歳が太宰を読んだ」と喜び、それを目にした内海は「賢いこどもという役割」を自分に期待していることに気がついた。
父親の期待を裏切らないように読書を続ける内海は、やがて物語というものの面白さにのめり込んでいく。

墨田区の小学校に通っていた内海は読書漬けの毎日を過ごしている。そこで唯一興味を持って話しかけてきた外崎(とのざき)に小説を進めたところ、彼も小説にハマる。図書室に入り浸っていた二人だが、ある日、学校に隣接してモジャ屋敷と呼ばれる建物があることを知る。そこには小説家が暮らしているらしいのだが、生徒はそこに入ることを禁じられていた。

立ち入りを禁止されているのは、執筆の邪魔になるから。そんなことを聞かされて物語の魅力に目覚めた小学生が我慢できるわけがなく、内海と外崎はすぐにモジャ屋敷に侵入し、住人である髭先生と対面する。意外なことに先生はふたりの行為を咎めず、屋敷に置いてある本を読むことを許してくれた。

時は流れ高校生となり、受験に必要な小論文を書くことにした二人。読むことと書くことの違いを感じながら必死に執筆し、外崎がコンテストで優勝するのだった。初めて差が生まれた二人の人生にはやがて距離ができてしまう。

③『イッツ・ダ・ボム』井上先斗

第31回松本清張賞受賞作。
ヒップホップの4大要素(MC、DJ、グラフィティ、 ブレイクダンス)のうち、グラフィティにスポットを当てたクライムノベル。めちゃくちゃ面白い。

発刊を記念して文芸春秋社の地下駐車場には「イッツ・ダ・ボム」のグラフィティが描かれたらしい。著者井上さんのXのアイコンで見られる。

構成は二部に分かれていて
第一部 オン・ザ・ストリートでは、うだつの上がらぬウェブライターが主人公。
「日本のバンクシー」と注目を集めるグラフィティライター界の新鋭「ブラックロータス」の活動に注目し、なんとかその正体や思想に迫り、本を出すための取材を重ねる。
ブラックロータスの手法は以前のグラフィティライターと違い、公共物を破壊しないこと。しかし唯一、法律を犯すことになった選挙戦でのメッセージ。違和感を覚えながら取材を続ける主人公が辿り着いた真相とは——。

第二部 イッツ・ダ・ボムの主人公はグラフィティライター・TEEL(テエル)。20年近くストリートに立って、「俺はここにいるぞ」とボム(グラフィティを書くこと)し続けてきた。ホームセンターで勤めながら、常にスプレーを携行し、書きたいときに書きたいことを書く。
ある晩、HEDと名乗る青年と出会う。彼はイカしたステッカーを街中にボムっていた。馬が合った二人はともに夜の街に出るようになる。しかしHEDは驚愕の〝宣戦布告〟をTEELに突き付けるのだった。

感想。
めちゃくちゃ面白い。アングラで繰り広げられる軽犯罪カルチャーの裏側。どんな思いがグラフィティライターを突き動かすのか詳細に綴られていてワクワクした。
書きたい衝動に駆られる魅力的なスポットはライター同士でかぶるらしく、同じ場所にさらにイカしたグラフィティなら上書きしてもOK。そんな世界は一般的に理解されるものではないが、ライター同士なら通ずるものがあるんだな。

後半のボムバトルが特に最高だった。ベテランと若手の感覚の違い。何が格好良くて何をダサいと思うか、その感覚の差を発言や行動に落とし込んだ時、亀裂は生まれる。

④『藍を継ぐ海』伊予原新

「細々と受け継がれてきたものや、継承が途切れそうになっているものを際立たせた、地方小説の短編集にしようと執筆中に決めました」

伊予原さんがそう語るように、5篇の短編集はいずれも人間の営みの記憶が薄れつつある地方が舞台になっている。

・見島(山口県)の土と萩焼
・東吉野村(奈良県)の絶滅したニホンオオカミと狼犬
・長与町(長崎県)の空家問題と原爆被ばく品
・遠軽町(北海道)の閉鎖される郵便局と隕石
・美波町(徳島県)のウミガメの産卵

知らないこともとても多くて、かなり学べたうえで楽しめた。『宙わたる教室』と同様、科学的で難しいことを読み解かせてくれる文章力は圧巻だった。

また少し前に読んだ彬子女王殿下のエッセイ『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』にもテーマ的に通ずるところがあり、失われそうな伝統や文化の縁にいる人、当事者の心の底からの声をたくさん拾っていて、かなりのめり込んで読んだ。

お気に入りは『狼犬ダイアリー』『藍を継ぐ海』

特に表題作にもなっている「藍を継ぐ海」は、地元である徳島県を扱ってくれていることも嬉しかった。作中は架空の町・阿須町(日和佐の隣の設定)が舞台だけど、実際、日和佐の大浜海岸はウミガメ上陸地として県内でも有名でぼくも何度も足を運んだことがある。ウミガメ博物館カレッタも徳島南部を代表する観光地の一つだ。2009年にはNHK連続テレビ小説で『ウェルかめ』が放送された舞台となった場所。

ウミガメの上陸数が減っていることは以前訪れた時に実際に聞いていて、けっこうショックを受けたのを覚えている。

【あらすじ】
主人公は小学生の沙月。祖父の義雄と二人で、徳島南部のの小さな町に暮らしている。
沙月はある日、丁寧に保護されているウミガメが産卵した後の土を掘り返し、その卵を五つ持ち帰る。作業を行っている時にある外国人に声をかけられ、バレた!と思うけれど、なんとかやりきり、卵泥棒になった。納谷で孵化させるつもりである。

しかし足跡を消すのを忘れていたので、翌日ウミガメ監視員のおばちゃん・佐和にばれたのだった。

【感想】
ほんと壮大。ここまで読み応えがある短編小説にはなかなか出会えない。
連綿と受け継がれてきたウミガメの保護活動と、のちに素性がわかるカナダ人・ティムが交差する展開は凄すぎた。
黒潮に乗って何年もかけて遠く北米の地まで泳いでいくウミガメは、産卵の時期になると黒潮を逆流して徳島まで帰ってくる。ウミガメの持つロマン溢れる冒険が、遠くカナダと徳島に暮らす人々をどのように繋いだのか。ぜひ読んでほしい。

——今後の予定——

①『ZINE FEST TOKYO』出店します!!

日時:2025年1月11日 12時-17時
入場料:500円(当日入り口・現金のみ)
場所:東京都立産業貿易センター 台東館(浅草駅徒歩5分)

ぜひぜひぜひ、会いにきてください!!!

② 第一芸人文芸部『俺の推し本。』公開収録

2025年1月20日18:30〜
新年一発目の公開収録があります!

3本出演は銀シャリ・橋本さん。
ゲストはNMB48の安部若菜さんが決定しています。
残り2名は現在未定。

公開収録はほんとお客さんから満足度高い反応をいただいているので、おすすめです!お待ちしています!

レギュラー活動

① 毎週水曜 22時〜 stand.fm生配信

今週の本紹介、文学ニュース、活動報告などを行なっています。
お便りコーナーもあるので、質問お待ちしております。
第一芸人文芸部の活動のベースです!

② 毎週日曜 16時30分〜BSよしもと『俺の推し本』

放送予定
1月12日 吉本ばなな、又吉直樹、BKB(バイク川崎バイク)
1月19日 吉本ばなな、又吉直樹、BKB(バイク川崎バイク)
1月26日 赤嶺総理、小原晩
2月2日 赤嶺総理、伊予原新
2月9日 赤嶺総理、井上先斗


出版中の本について

※)Amazon読書メーターブクログなどで感想書いていただけたらめちゃくちゃ喜びます!!

こちらの記事にまとめています!!

寄稿(WEB)

どれでも良いので読んでみてください!!

・現在連載中の「ショートショートトーキョー」

・「きょうも芸の夢をみる」からショートショート『エルパソ』を無料公開!

・「シゴトゴト」というサイトで過去に連載していたときの自信作。


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ファビアン_ ✍🏻第一芸人文芸部
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