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フランス語:翻訳と文法のはなし

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執筆者:小坂夏男  フランス語翻訳をやっていて気になることなど、アットランダムに書き留めます。
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「Meursault」を「ムルソー」と訳すのも翻訳であるとすれば・・・?

「Meursault」を「ムルソー」と訳すのも翻訳であるとすれば・・・?

翻訳とは「ある言語で書かれた単語やテキストの “意味” を別の言語で表現すること」・・・とりあえずはそう理解しておく。

ではもし、固有名詞「Meursault」を、「ムルソー」と訳す場合、一体どんな “意味” が交換されているのか? これが今回の話。

まず感じるのは、固有名詞の翻訳の場合、翻訳している側は「意味を交換している」という気にならないケースが多いということである。

翻訳作業といって

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ママン、それとも母さん?

ママン、それとも母さん?

 アルベール・カミュの小説『異邦人;LÉtranger』の書き出しは有名で、日本語訳もいくつかある。私の場合、なじみが深いのは、窪田啓作訳「きょう、ママンが死んだ。(原文)Aujourd’hui, maman est morte.」である。今から半世紀も前、高校生の頃読んで以来、音としてはこれがこびりついている。

最近になってこの小説をフランス語で読む必要があって、窪田啓作以外の翻訳をふたつ読ん

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