『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』⑭高強度低回数vs低強度高回数 どっちの筋トレの方がエネルギーを使うのか?
筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。
このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。
過去のシリーズ
14回目となる今回読み解く論文はこちらです。
McCarthy, Seth F.; Bornath, Derek P.D.; Murtaza, Mustafa; Ormond, Sion C.; Hazell, Tom J.. Effect of Resistance Training Load on Metabolism During Exercise. Journal of Strength and Conditioning Research ():10.1519/JSC.0000000000004929, September 17, 2024. | DOI: 10.1519/JSC.0000000000004929
体重もしくは体脂肪を減らすには、消費するエネルギーを高めて、エネルギーバランスを負にすることが大切です(エネルギー摂取量<エネルギー消費量)。
筋トレ界隈では、ダイエットや引き締めを目的とした場合、低強度高回数のトレーニング方法が推奨される場合がありますが、これは本当に妥当なのでしょうか?
この論文では、バックスクワット、ベンチプレス、デッドリフトを最大挙上質量(1RM)の30%もしくは90%で各種目3セット実施させた際のセッション中の酸素摂取量を計測しています(セット間休息90秒、正しいフォームでできなくなるまで、W-upは別に実施)。
ここで、酸素摂取量について簡単に補足します。
酸素摂取量はエネルギー消費量に近い指標です。
実際には糖質と脂質のエネルギーの利用割合によって若干変わるものの、酸素を1L消費すると約5kcalのエネルギーを消費します。
得られた結果を見ると、セッション中に消費した酸素摂取量の総量は30%1RMで実施した方が有意に多く、低強度高回数の方がエネルギーを消費するというものでした(185kcal対250kcal)。
ただし、当たり前ですが、低強度高回数の方が多くの反復ができたため、両者のトレーニング時間に差が生じました(27分対37分)。
そして、興味深いことに、単位時間当たりで見ると、セッション間で消費するエネルギーには差がなくなりました。
したがって、高強度低回数に比べて、低強度高回数がエネルギーを多く消費するというのは補足が必要であり、低強度高回数で実施すると、より多くの反復回数を行うことに繋がるからと言えます。
逆に言うと、決まった時間で実施した場合、低強度高回数でも高強度低回数でもエネルギー消費量という観点から見ると大差ないと言えます。
その観点で見ると、今回の結果は「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」を支持するものと言えます。
(実際には、トレーニング後に消費するエネルギー消費量の影響も見る必要がありますが、それらはトレーニング中に消費するエネルギーに比べるとマイナーな影響です。)
したがって、例えば1日30分のようにトレーニング時間を揃えている場合には、エネルギー消費量を高めるために低強度高回数にこだわる必要はなく、好きな方法を選べば良いでしょう。