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『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』⑬筋トレのセット間の休息時間と筋肥大との関係
筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。
このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。
過去のシリーズ
13回目となる今回読み解く論文はこちらです。
Singer A, Wolf M, Generoso L, Arias E, Delcastillo K, Echevarria E, Martinez A, Androulakis Korakakis P, Refalo MC, Swinton PA and Schoenfeld BJ (2024) Give it a rest: a systematic review with Bayesian meta-analysis on the effect of inter-set rest interval duration on muscle hypertrophy. Front. Sports Act. Living 6:1429789. doi: 10.3389/fspor.2024.1429789
この論文は、1つの実験データの結果を報告した一次研究ではなく、特定のテーマに関する一次研究を一定の基準で選択収集し、それを分析した二次研究(系統的レビュー・メタ分析)です。
早速、一次研究の選択基準を見ていきましょう。
■含まれるための条件
研究デザイン:ランダム化デザインであり、異なる休息時間の群間で比較が行われている。
測定方法:DXA、生体電気インピーダンス分析、MRI、CT、超音波、筋生検、または周囲径の測定。
トレーニング条件:他のトレーニング変数は統制され、量はセッションあたりのセット数または量負荷(セット×反復回数×重量)で示されている。
頻度と期間: 最低でも週2回、4週間以上。
出版基準:査読ありの英語学術雑誌またはプレプリントサーバーに掲載されている。
■除外されるための条件
参加者の健康状態:筋骨格疾患、けが、心血管障害など、筋トレによる筋肥大反応を妨げる可能性のある合併症を持つ参加者を含んでいる。
サプリメントの不均等提供:一方のグループが特定のサプリメントを受け、もう一方が異なるサプリメントまたはプラセボを受けている。
こういった選択基準をもとに一次研究を精査した結果、最終的に9つの論文が今回の研究で分析対象となりました。
なお、分析は、2分割(短時間:60秒以下、長時間:60秒超)および4分割(短時間:60秒以下、中間:60秒超~120秒未満、長時間:120秒以上~180秒未満、超長時間:180秒以上)の2つのパターンで行われました。
まず、各休息時間に筋肥大効果そのものがあったのかを確認すると、研究間で結果の異質性(heterogeneity)があったものの、どの休息時間でも筋肥大が起きることが明らかになりました。
この結果は「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」を支持するものです。
次に、各セット間の休息時間の優劣を見ると、腕部と大腿部に関しては、2分割した際に長時間休息(60秒超)の方が筋肥大効果が高い傾向が見られました。
しかし、95%信頼区間が広く、ゼロを含んでいるため、統計学的には明確な結論を出すのは難しい状況です。
ちなみに、この結果は、セットを疲労困憊まで実施している(Training to failure)か否かで変わりませんでした。
また、4分割のようにより細かい区分で見た場合でも、90秒を超えるような非常に長い休息時間を設けても、筋肥大効果が高まる傾向は観察されませんでした。
総じて、今回の結果から、筋トレの休息時間について繊細になる必要はないと言えそうです。
特に60秒以上の休息時間があれば、筋肥大に対して十分な効果が期待でき、それ以上の休息時間を取ることで得られる追加の利益は限定的です。
そのため、個人の好みやトレーニングの全体的なボリュームに基づいて休息時間を調整することが可能です。
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