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腰痛にはランニングのインターバルトレーニングが良い?

腰痛は多くの人が抱えていて、仕事の生産性や生活の質に悪影響を与えることがよく知られています。
その中でも、慢性的な腰痛(慢性腰痛)は、必ずしも明確な原因が見当たらないこともあります。

最近、スポーツ科学の権威ある学術雑誌『Br J Sports Med』に「非特異的な慢性腰痛を有する成人において、ランニングは許容可能であり有効である」という、ランニング好きには気になる論文が発表されました。

Neason, C., Samanna, C. L., Tagliaferri, S. D., Belavý, D. L., Bowe, S. J., Clarkson, M. J., Craige, E. A., Gollan, R., Main, L. C., Miller, C. T., Mitchell, U. H., Mundell, N. L., Scott, D., Tait, J. L., Vincent, G. E., & Owen, P. J. (2024). Running is acceptable and efficacious in adults with non-specific chronic low back pain: the ASTEROID randomised controlled trial. British journal of sports medicine, bjsports-2024-108245. Advance online publication.


軽く内容を見ていくと、慢性腰痛を抱える40名が12週間の介入群または待機リスト対照群に割り当てられています。
このうち、介入群には、週3回、1回30分のランニング・ウォーキングのインターバルトレーニングを実践してもらいます。
インターバルトレーニングのメニューは、対象者の体力に応じて13段階のレベルがありましたが、1回のセッションで走った距離は平均2kmと、控えめな量でした。
また、この介入の特徴の一つとして、リモートでサポートが行われたものの、各自が個別に実施する形式であったことが挙げられます。
介入効果は、自己申告による痛みの強度(Pain intensity)や障害(Oswestry Disability Index)によって評価されました。
さらに、受容性の評価として脱落率や遵守率、有害事象も把握しています。

結果として、12週間の介入によって痛みの強度や障害のスコアが明確に改善されました。
介入群の中で脱落した人は0人で、トレーニングの遵守率は70%(平均して週3回のうち2.1回の実施)でした。
有害事象は9件ありましたが、重篤性は低く(主に下肢の怪我や痛み)、ほとんどのケースで1週間以内にトレーニングに復帰していました。

総じて今回のランニング・ウォーキングインターバルトレーニングの効果はポジティブなものでした。
論文の著者らは最終的な結論として、「ランウォークプログラムは、対照群と比較して、非特異的慢性腰痛を抱える18〜45歳の個人の痛みの強さと障害を改善するために、参加者にとって許容可能な介入と見なされました。このプログラムは、個別化された保守的なアプローチとして、慢性腰痛の成人に適した身体活動の手段として推奨されるべきです。」とまとめています。

慢性腰痛に対するランニングの効果がなぜ良いのかは明確ではありませんが、そもそも論、慢性腰痛のメカニズム自体がよく分かっていません。
慢性腰痛の人が有酸素運動をする場合、衝撃が少ないものを選ぶことが多いというか、ランニングは悪そうな印象を持つかもですが、今回の研究結果を考慮すると、そういった見解は偏見である可能性があります。
実際には、個々の体力に合わせたアプローチであれば、インターバル形式のランニングも十分に実施可能であり、むしろ慢性腰痛を改善する可能性さえありそうです。



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髙山 史徳/Fuminori Takayama
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