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知る幸せと知る不幸:正しい知識を持っていても、正しく使えるとは限らない
何事も知ることがプラスに働くとは限りません。知る幸せと知る不幸があると思っています。
過去には、ウェアラブルデバイスで計測できるデータを題材に、そういった旨を述べたコラムも書きました。
最近、スポーツ栄養学の分野から、Low Energy Availability(エネルギー不足)と栄養知識との関連に着目し、知識を持つことの弊害を示唆した論文が出ているので、見ていきたいと思います。
Burger, S., Bray, A., & Kim, B. (2024). The relationship between nutrition knowledge and low energy availability risk in collegiate athletes. Journal of science and medicine in sport, 27(7), 451–453. https://doi.org/10.1016/j.jsams.2024.03.010
この研究では、全米体育協会(NCAA)一部に所属する男女の学生アスリートを対象に、スポーツ栄養に関する知識を質問紙(35-question modified Abridged Nutrition for Sport Knowledge Questionnaire)によって調査しました。
また、女性アスリートに対しては、Low Energy Availability in Females Questionnaire (LEAF-Q) という、エネルギー不足のリスクを評価するツールとして妥当性のある質問紙によって調査しました。
一方、男性アスリートに対しては、確立されたツールが存在しないことを含め、先行研究をベースに、男性アスリートトライアド(MAT)に関する質問紙を活用しました。
なお、Low Energy Availabilityは、特に女性アスリートにおいては、運動性無月経(月経障害)、骨粗鬆症(骨密度の低下)とともに、女性アスリートの三主徴を構成し、ハイパフォーマンス発揮および健康維持・増進の両側面から見てマイナスなものです。
アンケート調査の結果、エネルギー不足のリスクが高いと評価された女性アスリートは、リスクが低いと評価された人たちよりも、スポーツ栄養の知識が高いことが分かりました。
この結果を逆から見ると、スポーツ栄養の知識を持っていても、エネルギー不足のリスクが低いわけではないということです。
一方、男性アスリートでは、そういった関係は見られませんでした。
論文の著者らは、あくまでも可能性の話として、意図的に食事制限をしている女性アスリートは、体重や体型を変えるために栄養を学ぶ時間が増えるために、スポーツ栄養に関する知識も高まると考察しています。
書いてしまうと当たり前のことですが、たとえ正しいものであっても、知識自体を持つことは必ずしもプラスに働くことを保証せず、適切な方向性と良い塩梅で知識を活かすことが大切だと改めて感じました。
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