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アスリートの水分摂取量と身体組成との関係:沢山水分を摂る人は筋肉質でみずみずしい?

多くのスポーツにおいて、十分な筋肉量(筋肉率)や少ない体脂肪量(体脂肪率)は、ハイパフォーマンスに寄与します。
最近、『Frontiers in Sports and Active Living』に掲載された論文では、中国の若年男性アスリート111名を対象に、日常的な水分摂取状況と身体組成の関係を調査した結果が報告されています。

この研究は横断的なもので、因果関係を示すには不適切ですが、アスリートの水分摂取と身体組成に関する洞察を提供してくれています。
ということで早速内容を見ていきます。

対象者の飲食物摂取状況、24時間尿、血液の浸透圧(体水分状態)、および身体組成を詳細に測定、記録しました。

この研究のポイントの1つは、総水分摂取量(Total Water Intake: TWI)のみならず、飲み物からの水分摂取量(Total Drinking Fluids: TDF)と食事からの水分摂取量を算出したことです。
このうちTDFは、質問票を用い、対象者は標準カップで測定した水分量を記録しました。
その際、研究チームは記録を毎日確認し、チャットアプリを使ったリマインダーで記録漏れの防止を促しました。
一方、食事からの水分摂取量については、対象者自身が食事前後の食品重量を計量したと共に、サンプルを実験室に送りました。
この際、骨付き肉などの摂取方法を指導することで記録の精度を高めました。
そして、それらのデータを中国食品成分表などに基づいて分析しました。

身体組成は生体インピーダンス法で測定しています。

その結果、水分摂取量が多いグループは、少ないグループに比べると、筋肉量(約1.3kg)、除脂肪量(約2.4kg)が高いことが明らかになりました。
また、水分摂取量が多いグループは、体水分量が多い傾向もありました。
一方、体水分状態(24時間尿浸透圧に基づく脱水状態)は身体組成に関係していないことが示されました。

すなわち、この研究は、アスリートの身体組成に関係するのは「水分摂取量の習慣」で、「体水分状態」ではないことを示唆しています。

繰り返しになりますが、この研究は横断研究のため、因果関係の解釈には慎重であるべきです。
それを前提として、アスリートに水分補給の重要性を教育するための資料にはなると考えます。


最後に、各摂取量の平均値は以下の通りでした。
TWI(総水分摂取量):2701ml
TDF(飲み物からの水分摂取量):1789ml(66%)
食事からの水分摂取量:1181ml(44%)

論文のテーマから外れますが、この結果は食事による水分摂取が40%以上を占めていることを意味しています。
特に夏場の脱水予防には、食事を欠かさないことも重要になると言えそうです。

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髙山 史徳/Fuminori Takayama
執筆家としての活動費に使わせていただきます。